氷の灯台
「腹が立っている、だっけ?」
「そうです」
涼しい顔の美優と、腹が立っている割には表情に変化のない黒井さんの視線がぶつかり合う。夏菜と小春ちゃん、ハラハラドキドキ。俺はワクワクドキドキ。団地の外の人間が美優に噛み付くなんてほとんど記憶にないからね、どうなるのか気になって仕方がない。もっとも、度が過ぎるようなら割って入らせてもらうけど。
「あの、すいません。メンタルクソザコみたいで激ダサなんですけど言わせてください。ここまでもここからも好き放題喋りますけど、敵意とかマジでないし、とにかく自分勝手な事だけ言わせてもらうんで、そこだけご了承ください……ただ、思った事を言っておきたくてですね……その……」
急にシュンとしちゃった。申し訳なさそうな背を丸める黒井さんには悪いけど、好き放題言わせてもらうけど、先に断り入れておいたんだから何を言われても怒らないでね。っていう予防線だよねそれ。ちょっと卑怯なんじゃない?
「そういうのいいから。それで?」
わかっているだろうに指摘しないんだね。正しい対応だとは思えないんだけど、俺が言う事でもないか。
「えと……さっきも言いましたけど、以前の私ってずっと一人だったんですよ」
「うんうん」
「だから全部一人でした。楽しい事も嬉しい事も、辛い事も悔しい事も何もかも全部一人で味わって噛み締めて、抱えてました。自分のダメな所にも一人で気付くしかなかった」
なるほど。黒井さんを苛立たせた要因が何かもうわかった。これまた自分勝手な事で。
「でも浅葱先輩にはたくさんの仲間がいる。夏菜先輩。桃瀬先輩。東雲先輩。松葉先輩。山吹先輩。小春も。謙之介先輩も。これって当たり前じゃないんです。浅葱先輩は恵まれているんです。私には理解出来ない事で、憎たらしいくらい羨ましい事なんです」
「ふーん」
「これだけたくさんの仲間が浅葱先輩の事を知っている。それなのに、浅葱先輩が浅葱先輩自身の事に気付けないわけがないんです。いいえ。気付けなきゃいけないんです。こんなにも浅葱先輩の事を大切に思っている人たちに囲まれているのに自分自身を蔑ろにするのは許されないんです」
「仲間たちへの裏切り、冒涜、とか言っちゃう?」
「違います。当然それもありますけど、羨ましくてムカつく。これに尽きます」
「清々しいなあ」
要するに、嫉妬だ。
「浅葱先輩は自分を見ようとせず、わからないフリをする。そんなのおかしい。自分を大切にし、認め、好きになる。それは一番大事なことで、当たり前な事なはずなんです」
耳が痛いと感じるのは、俺が俺自身に対して後ろめたさがあるからだろう。そろそろ口を挟むかなあと様子を見ていた夏菜も小春ちゃんも俯いてしまっている。思う所があるんだろうな。
「周りが見てくれてるからってそれに甘えちゃってるんですかね。だって浅葱先輩、自分が恵まれてるって理解してますもんね」
「それは」
「自分への思考を放棄するだなんて自分自身を投げ捨てるような真似をしておきながらみなさんの輪の中で笑っていられるのがその証拠です。意味不明ですよ、自分の形を仲間たちに決めさせるなんて。普通じゃないです」
「ボロクソ言うなあ」
「そりゃ言いますよ。だって気に入らないですもん。めっちゃ腹立つんだもん。そんな人が学校で一番可愛い女の子の称号を三年間もらってるとかなんなんですかほんとキレそうキレてる。あーあー! 先輩が羨ましいなー! 私も学校一可愛いとか言われてみたいなー!」
キーキー叫びながら地団駄を踏んでいる、来年になったら学校一可愛い女の子の称号ををほぼ間違いなく手にするだろう女の子。覇権争いの最大のライバルである親友の小春ちゃんはもはや目が点になりつつある。
「ほとんどとばっちりじゃん……ってか、面白いねー黒井さん。めちゃいいキャラしてると思う」
「私は面白くないです気分悪いです」
「あたしは面白いの」
「じゃあ笑ってくださいよ」
「え?」
苛立ちを隠さない黒井さんの見つめる先、学校一可愛い女の子の称号を欲しいままにしている女の子は、これっぽっちも笑っていなかった。
「なんですかその笑顔擬き。今の浅葱先輩、可愛くないです。なんでこんな人が学校一可愛いって言われてるんだろうってくらい」
「ちょっと優ちゃんっ!」
子猫、吠える。日々美優に弄ばれているが、美優の事を慕っている小春ちゃんとしては聞き捨てならないんだろう。
「言い過ぎてるのはわかってる。後でまとめて謝る。でもこの人今、自分が笑ってるつもりでいたんだよ? 自分が笑ってない事にも気が付いてなかったんだよ? 上手に女の子出来てない人にランキング負けたと思うと悔しい……めちゃくちゃ悔しいのっ! 小春もそう思うでしょ!?」
「わ、私は……そんな……」
「あーごめん。無理矢理私に乗っからせようとしちゃった。今のなし。マジでごめん。でもほら。夏菜先輩と桃瀬先輩が浮かない顔してるのが答えでしょ」
俺、そんな顔してるのかな。自分じゃわからないな。じゃあ夏菜はと様子を見ると、誰を見るでもなく、ただ俯いていた。
「クソダサい予防線張ったとはいえ、これだけ言われても怒らないのもどうかしてます。ここは絶対に、怒らなきゃいけない所です。なのに何も言わずにいられるの、理解不能です」
怒涛のラッシュを受けても美優の様子は変わらない。本当に、これっぽっちも変わっていなかった。
「教えてください。浅葱先輩は、何から逃げているんですか? 何が受け入れられないんですか?」
全員の視線が美優に集まる。しかし美優は、何も言わない。何も言わず、自分を睨み付ける後輩の目を見ているだけ。
「教えてくれそうにありませんね。なら質問を変えます。浅葱先輩、欲しい物はありますか? もっと言えば、他の誰かを差し置いてでも欲しい物。ありますか?」
あるんでしょ? 言いなよ。
年季の入った椅子に腰掛ける美優を見下ろす黒井さんの両目は、間違いなくそう言っている。まるで、美優の欲しがっている物を知っているかのようだ。
「……私にはありますよ。欲しいもの」
「謙之介?」
「はい」
迷いない即答。隣で聞いている小春ちゃんの心境や如何に。
「他にもたくさん。数え出したらキリがないです。努力をしたら必ず報われる。だから頑張るだなんて青臭い事を言うつもりはありませんが、欲しい物全てを手に入れる為の努力を惜しんでいないつもりです。ただ、努力が足りなかったのならば力付くでもぎ取ればいい。どれだけ周囲に迷惑を掛ける事になろうと。いつだってそういう気持ちでいます」
「傲慢だね」
「普通です。自己の薄い浅葱先輩は知らないかもしれませんけど、受動的に生きていても私に都合の良いように世界は回ってくれないと私は知っています。ぼーっとしていたらどんどん不都合な方に流されてしまうんです。そんなのもうたくさんです。私は私の人生をひたすら良い物にしたいんです。私の人生は私が主役。私が世界の中心なので」
少しも瞳を揺らさず言い切る姿のなんと堂々とした事か。確かこの子、千華と仲良かったよね。あの天才アホガールから受けた影響は少なくなさそうだ。
「小春にもたくさん迷惑を掛ける事になるでしょうね」
「それがわかってても自分を曲げるつもりはないんだ?」
「もちろんです。一度きりの人生、欲しい物全て欲しがって、全て掴んでこそです。周りに気を使い過ぎて欲しい物を誰かに譲るとか人生の無駄です。とか言いながらすでに一つ、大きなものを零してしまってますけどね」
正体を尋ねるまでもなかった。僅かに目を伏せた黒井さんの姿が答えだ。
ほんっとに、俺たちの人生の分岐点に必ず関わってくるね。山吹奏太くんは。
「もう味わいたくないです、あんな悔しさ。だから毎日動いています。ちょっと勇み足過ぎるかなってくらいに。あ。そういえばまだ小春に言ってなかったけど、小春と謙之介先輩と初詣に行った日に、謙之介先輩に告白したの」
「ほあ!? い、いきなり何!? え、ちょっ、はいぃ!?」
驚愕に目をひん剥く子猫に続けと言わんばかりに俺たちの顔面の具合もおかしくなる。胆力ハンパない女の子だとは知っているつもりだったけど改めて思い知らせた。奏太との事で少なくないダメージを受けたろうに、さくっと立ち直っちゃうのとんでもないな。なんてバイタリティだよ……。
「返事は保留されました。せめて進路が決まるまで待って欲しいって」
「マ 、マジで言ってる?」
「マジマジ。現在絶賛好感度稼ぎ中だぜー。きらっ」
「横ピース可愛いかよ……じゃなくて! いやほんと…………優ちゃんだなあ……」
「何それ」
小春ちゃんの苦笑もごもっとも。笑うしかないでしょこんなの。嫌味なく言える。黒井さん、マジで凄いや。この力強い突破力は俺にはない物であり、小さい頃から欲していた物の一つだ。
「山吹先輩にフラれて数ヶ月……すいません盛りました。数週間で私は、謙之介先輩を好きになりました。正直、山吹先輩の事を吹っ切れていませんでした。尻軽と思われても仕方がありませんね。でも、嘘じゃなかったです。本物でした。だから開き直りました。尻軽、それがなんだ! ビビッと来たんだ! 追うしかねー! って。小春によく思われないかもしれない。謙之介先輩にだって、みなさんにも。それでも、自分の感覚を大切にしたかったんです。それに……」
瞬間、黒井さんの表情が曇った。
「いつまでも立ち止まっていたら……本当に何処にも行けなくなっちゃいそうだったから……嫌じゃないですか。一度の躓きに囚われて、残りの人生全部をつまらなくしちゃうのは」
ああ。そうか。大きな勘違いをしていた。全然理解が足りていなかった。
奏太との事で黒井さんが受けた傷は、これっぽっちも癒えていなかった。黒井さんは、立ち直れてなどいなかったんだ。
それでも黒井さんは歩いた。痛いけど辛いけどそれ以上に、立ち止まり、塞ぎ込んでいても何もいい事ないと知っているから。悲劇のヒロインぶる自分を許せないから。
悩むのもいい。迷うのもいい。弱音を吐くのもいい。それでも足を止めない。辛くても痛くても泣きたくても、限りある時間で、望む物全てを手にする為に。自分の描く自分の理想像に近付く為に。
素直に言える。憧れるよ。たった一人で全てを受け止め、たった一人で全てを噛み締めてきた黒井さんに。俺なんて、直ぐ近くに五人もいるのになんにもだ。全然なんにもなんだ。
必要以上に攻撃されている美優を見ながら何も言わない夏菜。当事者なのに禄に言葉を返せない美優。二人の言葉数が少なくなるのもわかる。黒井さんが持っている物は、俺たちがそれぞれ欲している物だもんね。自分が持っていない強い物を持ってる黒井さんが眩し過ぎて、それどころじゃないもんね。
「それに、何か欲しい物があるなら早く動かないとダメなんです。ボケーっとしてる間に欲しいものを誰かに取られるとか一番面白くないですから。だから私は止まりません。誰かに迷惑を掛ける事になっても、傷付ける事になっても、私が私を一番にする事だけは、絶対にやめません。命短し、欲せよ私! これが私のスローガンです」
ぐっと右拳を握り込みながら語る黒井さんはまるで、スポ根マンガの主人公みたい。別に間違っちゃいないのか。
人は誰だって主役。自分の人生の主役は、自分であるべきなんだから。
俺はどうだろう? ちゃんとやれているのかな。主役。
「ふーん」
じゃあ、美優はどうなんだろうね?
「こほんっ! なんだか盛大に脱線した気がしますけど……私、浅葱先輩の事好きです。付き合いは浅いですけど、如何に素敵な人かって事はこの短い間に充分伝わってきました。一人の後輩としても女の子としても尊敬しています」
「うんうん」
「でも、今の浅葱先輩は好きじゃないです。尊敬出来ません。本来は男性に向けて使う言葉なのかもしれませんけど……見たくありません。女の腐ったような浅葱先輩なんて」
「……そっか」
「はい。そうです」
美優から否定も反論もない。かといって、黒井さんの言葉を素直に受け止めているといった様子でもない。今の美優が何を考えているのか、ちょっと読めないや。
「今の浅葱先輩からは、ちょっと多忙だった程度の理由で自分へのご褒美ーとか言いながら無駄に高いスイーツとか買う系女子の匂いがします。何が自分へのご褒美ですかアホですか。そんな気持ち悪い言葉いちいち使うな。欲しい物は欲しい、だから手に入れるでいいだろくだらない。ブサイクな名目作らないでいつだって自分を甘やかせよ。自分以外の誰が自分を甘やかすってんだアホか」
「あ、あの優ちゃん?」
「好みの芸能人と付き合ってるクソブス女タレントが自分へのご褒美に高いスイーツ買っちゃってーとかテレビで言ってたの思い出してキレてるだけだから気にしないで」
「いや気にするでしょ! 流れ的に浅葱先輩に言ってるのかと思うんじゃん!」
「浅葱先輩にこんな口の利き方したら殺されるもん。そこは弁えてるって」
「全然弁えてない物言いばかりだったよね!? いくら浅葱先輩だからって殺すまではしないし! 社会的に抹殺くらいだよ!」
「おいこらそこの二人ー?」
「えらい賑やかだねえ」
「おばあちゃん!」
打って変わって賑やかになった店内に、夏菜のおばあちゃんが入ってきた。もう夜の仕込みの時間か。
「お疲れさまです女将さんっ! ってヤバ! 全然進んでないじゃん小春ー! 夏菜先輩も!」
「そりゃ進まないでしょ……」
「だね……」
「くぅ……こんな予定じゃなかった……もっともっと女子力経験値高めるムービングをしておきたかった……!」
「暗にあたしの所為だって言ってる?」
「まさか! 私が好き放題したのが全部悪いんで。被害妄想逞しいですねー浅葱先輩は」
「被害妄想とな。ふーん」
いや急に雰囲気悪くするじゃん。なんでボロクソ言って言われてしてたさっきより悪くなっちゃうの。
「可愛らしい料理教室やってるとこ悪いけど」
「うん、わかってる。今日はおしまいだね。続きはまた後日やろうね」
「はいっ」
「すいませんほんと! 空気読めなくて!」
「え、えーっと……あはは……はぁ……」
「じゃ、あたしたちは帰ろっか」
「だね」
おばあちゃんの前で口ケンカ擬きをするわけにもいかない。ここいらが潮時だ。
「バイト頑張ってね。ついでに謙之介の攻略も」
「どっちもバリバリに頑張ります! 応援よろしくです!」
ぱちっとウインク+右手で敬礼のあざと可愛いコンボにも眉一つ動かさない。イライラしてる風じゃないけど、かと言って心穏やかって事でもなさそう。俺の方で勝手にケア的なヤツをしておくからね、黒井さん。
「夏菜も頑張って。ついでに、将来とんでもない義妹が出来る事が決定的になったダメねこも頑張ってね」
「あーはい……ほんと頑張ります……」
「頑張れ。あ、一応言っとくけど」
「はい?」
「あたし、黒井さんの事好きじゃないわ」
「ありゃま。それは悲しいお知らせです。それにしても! 嫌いって言わない浅葱先輩、超可愛いですね!」
「ムカつく。じゃね」
「はーい! またたくさんお話しましょうねー!」
ぶんぶん手を振る黒井さんと、颯爽と立ち去る美優。夏菜と小春ちゃんが冷や汗ダラダラしてるの君ら気付いてる? ないよね。知ってた。
「はあ……」
美優と黒井さんの相性は、決して良くはない。しかし。
相性がいいとは言えないけれど。この二人は長い付きになりそうだなって、なんとなくそう思った。
* * *
「ほら」
「ありがと」
「お金は?」
「ゴチ」
「清々しいなあ」
許可を待たずに美優の隣、ぽっかり空いてるスペースに腰を下ろすと、ひんやりとした感触が臀部を起点に全身に伝播した。このベンチくん冷え過ぎ。お尻が風邪引いちゃう。多摩川沿いに根を下ろしてしまったが故の冷え性体質なのかなあ。生涯治る事はないだろうが、強く生きて欲しい。
「ん…………はぁ……コンポタうまー」
「寒くない?」
「寒い。上着貸して」
「やだ」
「ロマンスのカケラもないなあ」
「そういう人間上級者向けな物を俺に求めないで」
「だよねー」
ならもっと寒くない所に行けばいいのに。美優のお気に入りスポットであるここ、多摩川河川敷のベンチから俺らの家までなんて直ぐ近くなんだから。
「ね、修はどう思った?」
「黒井さんの言ってた事なら、大体は言い掛かりだったなあと」
「だよねー」
黒井さんの発した苛立ち混じりの言葉全ての根幹に、黒井さん自身の経験がある。それが真理! みたいに言われるのは違うよなあと。興味を唆られるし、タメになる話で合ったのは間違いないけどね。
とはいえ、尽くが的外れでもなく、無視無関心を貫けない程度には精度も確度も高いのがなかなかにタチが悪かった。
「はーもう……なんなのあの子。パンチあり過ぎでしょ」
「ね」
黒井さんへの不平不満を口にしない美優。きっと、言葉の一部がぶっ刺さったからだろう。だからこそ大した反論もせずに言われるがままになっていたんだと思う。それを言い出したら、あんな話、美優以外にも刺さるに決まってる。
自分に正直に。欲望にひたすら真っ直ぐ。たとえ周囲の人間に迷惑を掛ける事になっても。それを貫き通す覚悟を決めている。
良いか悪いかは人それぞれなのかもしれないが、真っ直ぐな姿というのは、目に焼き付くものだから。
「いいじゃんね。ふわふわしっ放しな自分よりも、自分以外の誰かを信じてみたって」
「うん」
自分の頼りなさを知っているからこそ、頼り甲斐のある人を信じる。悪い事じゃないでしょ。
「一人じゃないからこそ気付けた事もたくさんあると思うんだけどなあ」
「うん」
自分の弱い所とか強い所とか、悪い所とか良い所とか。自分からは死角になっている、自分を構成するポイントを見つけてもらえる事がどれだけありがたいか。
「それがあたしの人生支えてくれてるんだけどなあ」
「それを言えばよかったのに」
「言ったってどうしようもないってわかるでしょ?」
「まあ、そうか」
黒井さんが自信の考えが絶対だなんて言う頑固ちゃんではないって事くらいわかるけど、美優と黒井さんでは見てきた物も、感じてきた事も違い過ぎるから。
「全部一人で乗り越えてきたってのは伊達じゃない。気骨のある女の子だねー」
「高一にしては覚悟決まり過ぎててこの先が心配なくらいにはね」
「ああは言ってたけど今はねこちゃんと謙之介がいるし、これからあの子も変わっていくんじゃないかなあ。異性へのアタックの仕方とか色々と」
「アタックの仕方?」
「あの子知らないんだよ、駆け引き。欲しい欲しい行くぞ行くぞ突撃だーしか知らないから、アタックが苛烈過ぎる。攻撃極振りの紙装甲の脳筋スタイル。奏太との進展めっちゃ早かったのがその証拠。謙之介との進展も間違いなく早い。でも少し落ち着ついた方がいい。急ぐのは結構だけど、あの子の速さについて来れない人は全て振り落としちゃうって事に気がついてない。謙之介は嫌味なくいいヤツだから黒井さんに振り回されてあげるだろうけど、もしも謙之介と上手くいかなかったとしたら、黒井さんが受けるダメージ半端ないんじゃないかなあって」
「要するに、黒井さんが心配なわけだ」
「そんなんじゃないし」
「おお、古風なツンデレ」
「ツンデレ違うわ」
「じゃあデレデレ?」
「そんなの夏菜だけにだっての」
「奏太には?」
「えいっ」
「痛っ。え、蹴り痛い。トーキック痛い」
「言うまでもないけど、あたし以外にそういうムーブしちゃダメだからね。あたしにするのもどうかと思うけど」
「わかってるって」
「わかってるならやめなっての……む。ん、このっ、出て来いーっ」
コンポタ缶の中で踏ん張る小粒ちゃんたちと格闘する横顔はいつもと変わらない。いつも通りの美優だ。さっきはプラスにもマイナスにも振れた様子を見せない美優を訝しんでいたけど、今は違う。美優お気に入りのスポットに、いつもの美優がいてくれてよかったって思う。
「んーっ。きた。全滅ー。デストローイ。からのーほいっ……よしっ」
「おお」
下投げで放り投げられた缶は綺麗な放物線を描き、古めかしいゴミ箱に飛び込んだ。見事なコントロールである。
「……ねえ」
「うん?」
「あたしはさ……」
缶を放り投げた際の慣性に引っ張られるようにフラフラと進んで、直下に多摩川を見下ろせるフェンスに寄り掛かり、美優は言った。
「何から逃げてるんだと思う? 何がわからないんだと思う」
やっぱり、ぶっ刺さってたね。
「さあ」
「考えてよ」
「俺が考えるべき事じゃないでしょ。自分で考えないとまた黒井さんに絡まれるよ」
「ぶー」
「可愛こぶってもダメ」
「相手が夏菜だったら一緒に悩んであげるくせに」
「おバカ。そもそも夏菜は自分の事で誰かを頼る子じゃないでしょ」
「だったね……夏菜も強いもんなあ」
「ね」
夏菜も、とは。黒井さんの事、高く評価してるよね。
「夏菜が体現してくれてたもんなあ……大人しく畏っているだけじゃ、何処にも進めないって……」
「俺らの一歩も二歩も先を行ってるよね、夏菜は」
「うん」
「悔しい?」
「ううん。あたしと夏菜は違うもん。比べる必要なんてないよ」
「だね」
その通り。夏菜は夏菜。美優は美優。黒井さんは黒井さん。ありきたりな言葉だけど、みんな違ってみんないい。みんなそれぞれ全く違う特徴を持った、可愛い女の子たちだ。わざわざ同じ事をする必要はないんだ。などと、ずっと二人の男の背中を追っていた小僧が言ってみる。
「夏菜には置いてかれるし。千華もあたしを置いてどっか行っちゃうし。可愛い妹分は今にもあたしを追い抜きそうだし。最近知り合った後輩にはボロクソ言われるし。初恋のトドメの刺し方もわからないままだし。あたしったらダメダメだよなあ……」
いやめっちゃネガティブ発信してくじゃん何それ。初恋っていう、奏太へとはっきり好意を向けていた事を示すワードが美優の口から出てきたインパクトさえ霞ませるその弱々しさは何事なのほんとに。
「あたしらしくないとか思ってる?」
「半分正解」
「もう半分は?」
「美優のそういう部分は、今日まで俺たちに見せないようにしてきた、俺たちが知らない美優の顔なのかもって」
「あー」
そういうもんかなーと呟く声は、川の流れに沿うように通り過ぎて行く風に乗って消えていった。
「美優、俺らの前では弱音吐かないじゃん。俺の記憶の中じゃ最近だけだよ、ふにゃふにゃしてる美優を見るの。流石は俺たちのお姉ちゃんだ」
「その言い方やめてって前に言わなかった?」
「でも美優はそうだったじゃん。自分からそうしてたじゃん」
「その言い方もムカつく」
「苛立つのは自覚があるからだよ」
「テンプレチックな言葉で煽りにくるのもムカつく。キレそう」
「キレていいんだよ」
「は?」
「美優はもっと怒っていい。俺たちにも、自分にも」
俺たちにも自分自身にも、波風立ちまくって嵐になるまでありそうな本音をぶつければいい。一歩引いて、俺らの輪を崩さないように振る舞ってばかりなどいないで。
変わってくれなんて美優に言えない。俺にはその権利がない。でも、変わらないままだって、本音をぶつける事は出来る。俺たちだってもう直ぐ大人になるんだ。それくらい出来なきゃしょうがない。
それに俺たちは、自然と大きくなっていく。それなのに美優だけはそのままでなんて、土台無理な話なんだよ。
無理に変わろうとしなくても、時間と時代と周囲が織り成す本流に飲まれれば、人の形は自然と変化する。これはどうしようもない事だ。
それでも美優は、その必然から逃れようとしている。昔からの自分のスタンス、距離感を守ろうと踠き、苦しみ続けている。
根本はまるで違うけど、やっている事は元気とそっくりなんだよね、美優。似ちゃうもんなのかなあ。
「と言われても」
「出来ない? 怒り方がわからない?」
「そんなんじゃないけど」
「けど?」
「……なんでもない」
「何それ」
「なんでもないはなんでもないの」
黒井さんの言う通りだ。美優は、わかっていなくなんかいない。浅葱美優を一番理解しているのは、浅葱美優だ。
浅葱美優に一番怒るべきなのは浅葱美優で。浅葱美優を一番救ってあげられるのも浅葱美優だって事も、美優は知っている。
「まあいいけど。もうちょっと余計な事言わせてもらうね。美優はもっと、自分の事を考えていいと思うよ」
「いや考えてるから。あたし、自分好きだし。だから」
「俺らはもう、美優に守ってもらわなくても一人で立って歩けるよ」
これを言ってしまっていいものか、黒井さんの話を聞きながら悩んでいたが、その必要性を感じたので解禁だ。
「まだまだ一人前じゃない俺たちだ。せいぜいが六分の一人前くらいだと思う。でもね、美優に頼りっ放しにしなくたって、それなりにやってけるくらいにはデカくなってるつもりだよ。とっくのとうにね」
「修……」
いい加減俺も、良いように言うのをやめようと思う。
美優は俺たちが好きで、優しくしてくれる。いつでも俺たちファーストで、俺たちに寄り添ってくれている。どんな時でも俺たちの味方であり、助けてくれる存在だ。これらを違う言葉に置き換えると、こんな感じになる。
自分抜きじゃ、誰かが痛い目を見る。自分がしっかりしていなきゃダメなんだ。こいつらは、自分が見てなきゃダメなんだ。
少し毒気を強めたのは認める所であるが、要するに美優は、俺たちを侮っているんだ。俺たちが大きくなった事も強くなった事も認めながら、それでもこいつらには、自分がいなきゃって。俺たちを大切にしてくれている事も嘘じゃないけど、俺たちを侮っているのもまた本当なんだ。
誰より俺たちを信じてくれている美優が、誰より俺たちを信じてくれていないんだ。
「拒絶とか否定のつもりはない。ただ言っておきたかった。それだけ」
「……そっか」
「知らなかった?」
「ううん。知ってた。当然じゃん。あんたたちの事だもん。あたしが知らないわけないじゃん」
「だよね」
ほら。これも、美優はわかってる。わかってるけど、受け入れてなかったんだ。そんなに怯えなくたって、誰も美優のポジションを奪ったり、美優の有りようやこれまでを否定するわけないのに。
「あたしたち、大人に近付いてるんだね」
「うん」
「……大人になっても変わらない事って」
「たくさんあるよ。変わらない物だってたくさんあるし、変わる事だってたくさんある。当たり前だろ?」
「だね……うん。わかってるつもり……」
わかってても、理想と現実の間で生じる摩擦は痛いんだよな。痛過ぎて熱くなり過ぎて、涙が出ちゃうくらいに。
そんな痛い思い、誰だって味わいたくないよね。逃げたくなるの、当たり前だよね。
黒井さん風に言うなら、美優のわからないの正体というか、ベースになる部分は、これなんだと思う。
「もっと肩の力抜いてよ。そんなにも肩肘張ってたんじゃ疲れちゃうでしょ。普段俺の部屋でしてるくらいだらーんとしててよ。胸の谷間とかパンツとか見えてても気にしないくらいだらーんって」
「それは女子的にアウトでしょ……」
「今更何を。俺的には眼福だからそれくらいでいいの」
「変態」
「無意識に見せてる美優の方が変態だから」
「何それ。バカじゃん」
「自分が?」
「あたしも修も」
「だね」
返す言葉もない。ストレートに言っちゃったら傷付けたり苦しめたりしてしまうんじゃないかと考え、遠回しな言葉しか選ばない。そんな俺たちがバカじゃないわけがない。そんなの、優しさなんかじゃないもんね。
臆病なんだよね、俺たち。
「はあ……なーんか……ほんとバカだね」
フェンスに背中を預け、薄暮の空へとため息をプレゼント。バカだと言い終えた自称おバカさんは、笑っていた。
「大して複雑でもなんでもないのに、こんなにあれこれ考えちゃう」
「大切な物が多いと大変だね。全部にいい子ちゃんするのも難しいし」
「そこまで考えてないけど……大切ってヤツは、大変とイコールなのかもね」
散々俺たちに手を焼いてきた美優。今、美優が心配でたまらない俺。そこに何の違いもない。
「かもだねー」
空き缶をゴミ箱にシュート。カランカランと音を立てながら同族たちの元へ飛び込む黄色い缶を見送って美優の隣、美優を真似るように、フェンスに背中を預けた。今日は空気が澄んでて空が綺麗だなあ。
「なんか……よくないねー」
「色々?」
「そ」
「わかるなあ」
「最近のあたし……ダメダメだ……」
横目でちらりとお隣さんを見ると、美優が小さく見えた。これは比喩でもなんでもない。多分、俺の背が伸びた所為だ。
俺の方がこんなにデカいのに、美優に何もしてあげられていないんだなあ。
「……修は知らないかもしれないけど」
「ん?」
「あたし、弱いんだ。弱虫なの」
「そうなの?」
嘘を付いた。だって、俺は知ってる。美優が弱っちい事も。そんな姿を見せないように努力しながら、俺たちを支えていてくれた事も。
「そうだよ」
「知らなかった」
「でもね、強いから。あたし、強いの」
「弱いけど強いのか」
「ん。そういえば春先にたーじいが言ってた。強いって事は、弱くないって事じゃないって。千華を指しての言葉だったけど。あたしも似たようなもの。強い、けど弱い。どっちも持ってるんだね、きっと」
強いって事は、弱くないって事じゃない。胸に刻んでおくよ、たーじい。
「なーんかここ最近は修だけじゃなくてみんなに心配されまくってるみたいだけど、それこそあたしを侮り過ぎだからね? あたしは大丈夫だから。多分」
「多分なの?」
「多分だよ?」
強くて弱いって言葉の曖昧さを体現したような言葉だね、多分ってヤツ。
「だから……っと」
グッと反動を付け、前方にとんとんとんと三歩飛び出しくるりと半回転。穏やかに微笑みながら、こう言った。
「ちゃんと大丈夫なあたしを見せるから。一人でも踏ん張れるんだってとこ、みんなに見せる。だからさ、しっかり見ててよ。あたしの事」
その笑顔は、迫る夕闇でも覆い隠せないくらい、キラッキラに輝いていた。
「……やっぱさ、作ってよ」
「ん?」
「俺の分のチョコ」
「修の分だけ?」
「うん」
「えー」
「お返しするからさ」
「それは当然として…………修の事、奏太ほど好きじゃないよ?」
「知ってるよ。でも欲しいんだ」
「ほーかほーか。じゃあ……」
美優お気に入りのブーツがこつこつと鳴って、俺たちの間にあった、何もない空間が、美優で埋まった。
「その気にさせてね?」
笑顔に上目遣いの合わせ技の贈り物。最近はナリを潜めていた、あざと可愛いコンボ。可愛いって、素直にそう思った。
「夏菜ほど好きじゃない美優の事をその気にさせられるよう、頑張ってみるよ」
「そうしなさいそうしなさい。流石に寒くなってきたねー。そろそろ帰ろ?」
「だね」
寒いなんて言ってる割には、美優は動かない。まるで俺が隣に並ぶのを待っているみたいだ。確かめるように美優の隣に並び、そこからは意識して歩幅を狭めて前進すると、俺のスニーカーと美優のブーツがアスファルトを蹴る音が重なった。いつもは俺のペースに合わせるなんてしてくれないのに。歩幅の大きな俺の方が美優を追い掛けてるのに。なんか、調子狂っちゃうや。
「ふーんふふーんふんふんふーん」
最近あちこちで流れているアニソンを口ずさむ美優の事を、少し誤解していたのかもしれない。
端的に言うと、美優は一人で立ち直れないなって、そう思っていたんだ。
俺たちを支えてくれた強さと優しさを、自分に向ければいいんじゃないかと思ったが、言うほど簡単な事じゃないし、仮にそれが出来たとして、自分を鼓舞出来るかといったらそうとも限らない。自分への好きと他者への好きでは全然意味が違うように、どんな感情だって、向いてる方向が違えば姿形も変わってくるものだから。
だからきっと、凄く時間が掛かる。美優はしばらくネガティブな沼から抜け出せそうにない。そう決め付けていた。
しかし。そんなの杞憂だ……と言えるまで力強くはなかったけど、確かに垣間見えた部分がある。美優が持ってて、俺たちにまだ見せてはいなかった、力強い部分が。
美優は、まだ折れていなかった。
下も向くし涙も流すし弱音も吐く。傷付いているし助けてサインも上手く出せちゃいないけど。それでも美優は、もう立ち上がれた。あとは、行きたい方向に歩き出すだけ。
少し人より時間が掛かるだけだった。美優はもう、大丈夫って言える所まで来ている。
弱いけど強い。あまりにも曖昧な言葉が、こんなにもしっくり来る。
たーじいの言葉を借りるなら、弱いけど、強くなくない。って感じか。
いやはや、まったくもっておかしな話だ。だって、どう考えても俺じゃんか。浅葱美優を、一番侮っていたのは。
「ほっ」
「う、お!?」
河川敷に来るのに必ず通らなければならない歩道橋に足を踏み入れる直前。ずしっと来る重みが、背中を強襲した。直ぐに状況を理解した頭からの信号を待つ事なく、両腕はその重みを支えていた。
「っと。いきなりどしたの」
「後輩にたくさんいじめられて傷付いたあたしを労って。端的に言えば、楽させて」
「何を甘ったれてるんだか……」
「嫌なの?」
「嫌だけど……今日は許してあげよう」
「よーしよし。足腰のトレーニングだと思って頑張れーぃ」
「はいはい……」
この歩道橋、長いし階段多いんだよなあ……エレベーター使ったら使ったでヘタレとか意気地なしとか足腰おじいちゃんレベルとか言われそうだし……男の子の意地、発動。行きますか。
「ねえ」
「乗り心地の苦情は受け付けてないよ」
「じゃなくて。あたしたちって、少しは大人になれたのかなーって」
「なれてたらそんな言葉出て来ないって」
「確かに。まだまだ遠いんだねー。大人」
「大人って凄いや。いつでも高い所にいる」
「ねー」
「でも美優の胸とお尻はすっかり大人って具合に」
「ふんっ」
「あだっ」
「セクハラ」
「運賃だと思って欲しい」
「尻を揉んてるのが運賃。お釣り貰わなきゃ合わないレベルなんだからね」
「揉んでない。支えてるだけ」
「指わきわきさせてんの何処のどいつだー」
「尻ポジ直しただけで他意はないから」
「尻ポジとか二度と聞く事ないワード生まれちゃったよ……あそうだ。帰ったらあたしの肩揉みしてね」
「なんで」
「肩の力抜いた方がいいんでしょあたしは。面倒見てよ」
「いいけど、うっかりおっぱい揉んじゃったらごめんね」
「すでに尻揉んでる男が何を言うか」
「だからそれは尻ポジがっ……?」
階段を上りきり、長い歩道橋のど真ん中に差し掛かった辺りで、俺の胸元に回された美優の両腕が、きゅっと締め付けてきた。
「何?」
「サービス」
「はあ」
「……ありがと」
「ん?」
「少し気が楽になったというか……そんな感じだからさ。人の話聞いてばかりだったのに。おかしいよね」
肩の荷を下ろせた、とかかな。美優から溢れ落ちた言葉と言葉の隙間を埋める言葉は。
「それ、黒井さんには言うの?」
「言うべきポイントがどこにもないのでぶぶー。次にあの子に言うべきは、あたしにミスコンで勝てないクソザコが何を粋がってんじゃー、とかかなー」
「やめなさい」
「まあそれは置いといて。あたし…………頑張るからね」
美優の腕がもぞもぞと動くと、二人の密着率が増した。
「今直ぐにはしゃんと出来ないかもだけど、少しずついい感じになってくから。あたしたちの家を離れる時、修にもみんなにも、過剰な心配をさせないくらいにはなってみせるから。ついでにあの子娘にも小生意気な口利かせないようにもなるから」
「……そっか」
「だから……ありがとね。今日だけじゃない、いつだってそう。こんなあたしと一緒にいてくれたのが修でほんとによかったって、そう思ってるの」
らしくない。まず最初にそう思って、次に浮かんだワードが、卒業だった。
「本当にありがとう。修」
絶対にそんなはずないのに、初めてだなあと思ってしまった。浅葱美優という一人の女の子の、心からの言葉を聞いたのは。
「…………どういたしまして」
「……行こ?」
「行こって、歩くの俺だけじゃん」
「言い間違えた。行け」
「はいはい」
「はいは一回」
「ほーい」
「おバカ」
きっと、卒業で合ってるんだと思う。それくらいの転機なんだ、美優にとっては。
週末にセンター試験を控えた、空気の澄んだ、良く晴れた一月の半ば。卒業シーズンより一足早い、今日この日。
美優は、俺たちのお姉ちゃんからの卒業を果たせたんだ。
人様の背中で鼻歌を口ずさむ可愛い女の子の温もりを感じながら、そんな事を考えていた。
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