それは新しい旅立ちで

それは僕の新しい旅立ちで。でも、僕はさよならとはいわない。

言えやしないんだ。

言ったら駄目なんだ。

何でって、なんでだろうか。

僕は一歩ずつ、君から離れていくんだ。涙は流さないよ。

どんどんどんどんと離れていく君の姿に、寂しさを感じるけれども。


手を振っていく君の姿は階段の上を一歩ずつ進む僕の姿をじっと見てくれている。

僕の先には道が広がっている。

何もない丘の上に無機質な建物があって、みんなその中に夢や希望を詰め込もうと必死に何かに取り組んでいる。


僕もそんな中に飛び込んでいくんだ。

階段の上には今までいた君の姿はもういないんだ。

ずっとずっとあっていた君の姿はないんだ。


とてもつらいことなんだろうって僕は思うんだ。

僕はずっと一歩階段を踏みしめると君を見てしまうんだ。


それは新しい質立ちで、うれしいはずなのに。

さよならはいわないと僕は君に行ったはずなのに、どうして階段の下の君の姿を見てしまうんだろうか。


ああだから、駄目なんだ。

僕は君がいないと駄目なんだと、悟る。今悟った。

悟ってしまったんだ。

こんなところで悟ってしまうなんて僕はどうして、馬鹿なんだ。

僕は今階段を駆け下りたい。


けれども、それは遠い階段の下の君の笑顔が


やってはいけないんだよ、と告げている。



僕はさよならはいえない。

君には言えない。

だって、君とはわかれなきゃいけないんだ。


鳴くななんて情けないことを僕は言えないんだ。

そんな泣き言を言えるようなところではなくなったんだ。


僕の気持ちは君のところから離れていくことはないだろう。

僕の気持ちは君に束縛されてしまうんだろう。

だから僕は君と別れなくちゃいけない。

君は何も答えないけど、笑顔が語ってくれるんだ。

もう階段を昇れと。

かみしめて、ゆっくりとゆっくりと行きなさいと。


空を見上げると青い空が眩しくて、さよならなんて言っていけないよと言っているような気がする。

僕の思い込みなのかもしれない。

けれども、君は僕に言った。


前に進もうって。

だからこの旅立ちにはさよならはいらないんだ。


僕はうんと答えて進もうと思ったんだ。

思って、さよならは言わずに階段を踏みしめて、後ろを見ても前絵と進む。


それは新しい旅立ちだから。

君はそこについていけないから。


それは新しい旅立ちだから。

君を連れていくことはできないから。


僕は階段を踏みしめて、踏みしめて、後ろをもう見ないんだ。

見ないで前を見て、空を見て、青空を見上げよう。


それは新しい旅立ち。

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