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「だけど、この問題には一つ落とし穴があるんです。ここを間違える人が多いでしょう」


「なるほど、そこがこの問題の重要なカギになるのか……」


 メモを取りながら身を乗り出す男子生徒。ほかの二人も覗き込んだ。


「でも、こんな問題をすらすら解けるなんてやはり黒川さんはすごいよ」


「ああ、確かにこれは驚かされる。入学式でも新入生代表を務めるくらいだ。欠点なんてないんじゃないのか?」


「あれって、入試試験でトップを取った人がやることよね」


「ああ、その通りだ」


 問題を訊きに来た男子生徒と女子生徒に、愛生は照れくさそうに少し顔を赤らめながら問題を解き続ける。


「……そんなことないですよ。あれは偶々私がトップを取れただけで、次どうなるのかも分かりませんから」


 その言葉を聞いて男子生徒は、ふっ、と声に出る。


「だったら、こう言いたいのか? どれだけ私が優秀だろうと勝つと決まった勝負はないと……」


「ええ、そうです」


 さらりと言う愛生に、男子生徒は唖然としていた。


 つまり、どんなに対策をしていようと勝ち戦や負け戦は彼女の頭にはないらしい。


 俺から言わせれば、ムカつくな……。


 男子生徒と同様、俺は少しイラっときた。


 その言葉を言い換えれば、私に勝てる人はここにはいないとでも言っているようだったからだ。


 そもそも、顔も可愛ければスタイルも良くて、おまけに頭がいいと憎くても憎めない。


 だからこそ、誰もが彼女を頼って相談し、そして現実を知ってしまうだろう。

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