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 さて、この小さな壁の向こうに行くにはどうすればいいのやら……。


 やはり、入部するのは止めようか……。


 と、高校に入学してから数日間ばかり考えていたことだ。この北高は、必ずどこかの部活に入部しなければならない。


 入部届までの期限が少しずつ近づいてくる。


 学ランの一番下のボタンを開けたり閉めたりしながら落ち着きを取り戻す。


 さて、呼吸は整った。後は入るだけだ!


 深呼吸をした後、扉を開けようとした時、同じ学ランを着た男子生徒が横から姿を現し、扉を開けた。


愛生あい。ちょっと失礼ずるぞ!」


 そう言いながら、ずかずかと部屋の奥へ入っていく。


 誰だよ、こいつ……。


 ともあれ扉を開ける手も省けて、俺は文芸部の部室に入った。


 部屋に入ると、そこには大量の本に囲まれた異空間になっていた。扉で見えなかった部分の見えるようになった。


 女子生徒と向かい合って話していた男女二人。


 どう見ても高校にある部室には思えない。


 本以外にもゲーム、DVD、漫画、スポーツ用品などが置いてある。


 部室の奥には、左側の壁に掛け軸が掛けられてあった。


『龍神』


 と、書かれてある。



 もう、ここ何なのかも考える暇も与えない。そう感じて、部屋の奥でコタツに入っている一人の少女に目がいく。


「何か用ですか?」


 その紺色のブレザーを着た美少女は、俺と同時に入ってきた男子生徒を見て、疑問を吹きかけてきた。 


 茶髪が入った長めの髪にその上品な座り方————


 美しい……。

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