第2話 都市間暮らし。
私は高校卒業後家を出た。都会と田舎の中間くらい。自転車でかっ飛ばせば田んぼと大きな川があるけれど一駅乗ると県庁所在地、まあまあ都会。芋くさい私が背伸びしすぎないちょうどいいところだった。そこでも私は夏の暑い日も冬の寒い日も図書館に行った。冷房も暖房もしっかりしていて、適度にうるさくなくて、椅子も机もちょうど良くて、中庭があって、自転車置き場があって、勉強スペースもあって、社会人専用のコーナーもあれば、子ども専用もあって、コンサートホールに小さな売店もあった。時々小さいスペースでイベントもあって、絵画や作品が飾られていたりする。その図書館は私が今まで見た中で一番大きくて、今までいた中で一番快適だった。きっと世界にはもっと素敵で快適でおしゃれな図書館がいっぱいあるんだろう。だけど高校から出てきた私にとっては学校のホコリっぽい図書館でも地元のこじんまりとした図書館でもなくて。なんだかとてもキラキラしていた。
当時の交通手段は自転車だったから雨や雷の時はカッパだった。行きが晴天でも帰ろうとした頃に土砂降りなんてことはよくあった。その逆も。雨の中図書館に行って、本を読むうちに雨の音が聞こえなくなっていく。そうして世界に入り込んでいく。本を読み終わる頃には雨は止んでいて、自転車に引っかけたカッパさえ乾いていた。道路の水たまりすら渇こうとしている。
あの頃の私は何があってもなくても図書館に行っていた
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