図書館暮らし。

新吉

第1話 図書館グラス。

 グラスの向こうには青い空



 図書館に来るのは久しぶりで、いつからかとても遠いところになっていた。あんなに入り浸っていた私はいったいどこに行ったのか。忙しいを理由にいろんなことをしていない。忙しい割には仕事しかしていない。もちろん友だちとどこかへ出かけたりもする。それなりには遊んでいる。そういうことじゃなくてもっと。もっと、なんだろう。



「先輩?話聞いてます?」


「きーてるよ」


「それ聞いてない人の返事ですね」


「君、うるさくなったんじゃないか?」


「先輩が静かになったんですよ」



 図書館は静かにするものだろう。前から読みたかったものを借りようとして、図書カードの更新が必要だと言われた。後輩の彼はちょっと何か読んできますとそばを離れた。



「あ」



 真剣に読みふけっている様子で、声をかけづらい。そんなに時間が経ったわけでもないんだけど。タイトルを見ようと覗きこもうとしたところで気づかれた。



「終わった?行きますか」



 私が昔よく読んでいたものだった。懐かしい。開館中ののれんを後ろからくぐり、図書館から抜け出る。



 こいつが図書館に行きましょうと誘った時、なぜか腹が立った。お前の中にいる私は昔の私なんだなと思った。たしかにあの頃は本の虫で、自分の世界に学校の図書館に浸っていた。そんな自分に惚れていたんだろう。



 カフェのアイスコーヒー

 彼はカフェラテのホット

 先輩、寒くないんすか

 だって今日は天気もいいから



「少しあついくらいだよ」

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