図書館暮らし。2
太陽系図書館の新規購入図書のコーナーは人気であり、貸し出しが頻繁に行われた。神々の手は無限遠点より地球まで光速を超えた速さで到達し、巨大な本を抜き出していく。
そのたびに大地は割れ、地震が起き、海は荒れて火山は噴火する。巨大な本と本の間に暮らす人類の集落は、そのたびに滅亡の危機に陥った。そして貸し出された本が元の場所に戻されるとき、また天変地異が人類を襲うのだった。
そんなある日、戻ってきた本に異変が起きていた。真ん中辺りのページの端が、内側に折れ曲がっているのだ。
折れは小さなものであり、高高所クレーンを使えば外に引っ張り出せるかも知れない。しかし、人々は思った。この折れ曲がりにも深遠なる意味があるのではないか。神の聖なる意図を曲解するのは冒涜にも等しい。
侃々諤々の議論の末、直接民主的に採決が取られ、折れ曲がりを引っ張りだすことに決定した。何故なら我ら人類は神に生かされている存在であり、常に神の手助けをすることを心がけねばならないからだ、という引っ張り出す派の主張が勝利したのだ。
早速高高所クレーンが手配され、問題の折れ込みに接近した。だが。
突然本が勢いよく持ち上げられ、その際に発生した衝撃波が高高所クレーンを破壊しただけではなく、ふもとの村々を巨大な泥流で押し流してしまった。
このとき、本のふもとで暮らしていた住民たちの生き残りの耳には、天から響く神様の聖なる声が届くことになる。
「本に異常があるときは、まずカウンターに声をかけてください」
このとき地域の人口は、三割減少した。
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