第15話 空
目を瞑ると、四つか五つの頃よく行った公園のブランコに乗って、一人で遊んでいる自分の姿が浮かんで来た。
ブランコの揺れがどんどん大きくなる。
「それ以上漕いだら落ちるわよー」
母親が傍らで騒いでいる。
目の前の銀杏の木が飛んで行く。ブランコも飛んで行く。白い雲の隙間から見える、真青な空に吸い込まれるようにして飛んで行ったブランコは、中谷を乗せて、大会に浮かぶ孤島のような雲に辿り着いた。
見るとその上には、巨大な龍が居て、目を大きく開けて、中谷を睨みつけた。
(何しに来た、負け犬め。ここはお前のようなこの世の落後者の来る処ではない。
ここに来れるのは、勝者だけだ)
中谷はブランコから降りると龍に近づいて行った。
良く見ると、龍の尻尾の方に幾人か人が群がって、大きなブランコを手に持ち、一人一人がせっせとそのヌメヌメとした体を手入れしている様子であった。
(あれが成功者達かあ)
龍は満足そうに彼らを一瞥してから、中谷の方に向き直ると、口から真赤な炎を轟音と共に中谷に吹きかけた。
中谷の着物はアッという間に燃え上がり、火ダルマとなった。
(あーー 助けてくれーー)
中谷は真っ逆さまに雲から転げ落ちた。
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