k-169

 俺たちは川沿の雪道を北東へ向けてゆっくりと進む。


 休憩や野営を何度かしてみたけど、やっぱり幌の中にストーブがあるのとないのとでは快適さが段違いだった。


 これなら暖炉のある宿で眠るのとそんなには違わないかもと思っていた矢先のことである。



 御車台に座る俺の隣にはユリナさん。アッシュを抱っこして一緒にレッドグリズリーの掛け布団にくるまっている。


 不意にアッシュが俺に小さく「ワン」と吠えてユリナさんに注意を向けるような仕草をした。



「どうした、アッシュ?」



 すると、ユリナさんが頭を俺の肩に乗せた。甘えん坊さんだな、と思っているとどうやらユリナさんの様子がおかしい。



「ユリナさん?」



 呼吸が荒く、少し顔が赤い。俺は両手が埋まっているのでおでこをくっつけてみた。



「大変、熱があるじゃないか」



 俺はすぐ脇の小道を言ったところに木陰の空き地が見えたので、そこに馬車を停めることにした。


 馬車を適当に停めて、ユリナさんを布団に寝かせて看病することにした。


 一応周りに何か危険がないか確認しておこう。




 そして、アッシュと一緒に空き地を確認していると。


 アッシュがうなり出す。何かいる。


 俺はヘルファイアソードの柄に手をかけ、周囲を警戒する。


 キシャー!


 木の上に蜘蛛の巣があったのか、2メートルはある大きな紫色の蜘蛛が牙をむき出しにして、俺に飛び掛ってきた。


 ドシュ! ボッ!


 俺は身を引いて大蜘蛛の一撃をかわし、剣を抜くと同時に突きを繰り出した。大蜘蛛の胴体を串刺しにした。


 それと同時に、大蜘蛛が炎上。炎上し毒を飛ばせない蜘蛛は、全身を震わせ何かをするモーションをした。


 毒を使った何かか、別の何かか。


 とにかく離れよう。盾の陰に隠れて警戒する。


 すると大蜘蛛はパンという乾いた音を立たせ、全身から棘を射出した。おそらく毒がある気配だ。



 俺はすかさず盾でガード。


 このままだと第2波、3波がありそうなので、シールドバッシュを繰り出し動きを封じることにする。



 ドカッ!



 ひっくり返る蜘蛛。



 中距離からヘルファイアソードで火球を飛ばしつつ、さらに炎上する蜘蛛にとどめを刺したのだった。



『個体名:奥田圭吾はレベル20になりました。体力45→46、魔力40→42、気力40→41、力47→48、知能88→89、器用さ51→52、素早さ47→48。ソードピアーシングLv1、シールドバッシュLv4を取得しました』



 いつもの機械的な音声と画面がポップアップ。俺はこときれた蜘蛛を鑑定してみた。



【パープルタランチュラ:猛毒をもつ高レベルモンスター。その糸に捕まれば逃げることはほぼ不可能。全身についている毒棘を体内にある射出機構を使い飛ばして攻撃する】



「やばかった。さっきのあれは毒棘だったのか……」



 ウニの攻撃とどちらが強いのか気になるところだが、わざわざ実験するつもりはない。


 そんなに強力なら糸や毒は何かで使えるかも。ユリナさんのことが落ち着いたら後で回収しよう。そしてスキルも鑑定で確認。



【ソードピアーシング:剣に闘気を乗せた刺突の一撃】



 なるほど。これも今までにないタイプの技だ。バッシュ一辺倒じゃなく、剣技にも色々な攻撃パターンをつけられそうだ。


 しばらく空き地を巡回したところ他に敵はいなさそうだった。ブルーウルフを呼ぶと草わらから出てきたので、警備は彼らに委ねることにしたのだった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 みなさんこんにちは! 今回のパープルタランチュラ戦も多少アレンジを加えてあります。シールドバッシュはそもそも書籍版にはなかった技ですが、結構使い勝手が良いなと思ってます。

 何か簡単で役立ちそうな魔法でも機会があれば追加してみたいなと思います。


(作者のモチベになりますので本作が気に入ったら、☆、♡、お気に入り登録、応援コメントよろしくお願いします🐉 書籍、コミック、ニコニコ漫画での連載も宜しくです🐕)

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