第6話 だから私は……下

一瞬母の面影が重なった。お母さんもこうやって作ってくれたよなぁ……。当たり前に成っていて感謝の気持ちを忘れてた。今は、届かないけど……ありがとうお母さん。と、呟いた。

ごはんですよ!と、おばさんは、皆んなを呼んだ。


「今日はね、美和さんが全部作ったのよ。」

「そうかぁ。いただきます。」

「美味しいよ 美和さん」

「うん。上出来だ。」

「本当、美味しい。」

「ありがとうございます。」

「魔法の使い方が細かくできる様に成ったわね。」

「はい。おばさんの指導のおかげです。」

「美和さんの努力の結果よ。」

私はとても温かい気持ちになった。

部屋に戻って勉強していると、洋介さんがきた。

「勉強とかでわからない事ある?」

「そうですね……歴史や地理が難しいですね。」

「そうかぁ。美和さんの世界とは違うからなぁ……。」

「そうですね。基礎から覚えなければなりませんから……。でも、こっちに来て、洋介さんから教わりましたから、なんとかなりそうです。」

その時、外から警報がけたたましく鳴った。

えっ何⁉︎何事!私は焦った。

「美和さんシェルターに避難するよ!」洋介さんが私の手を掴んでそう言った。

私は洋介さんとともにおばさん達と合流した。

おじさんが台所にあるスイッチを押すと扉が開き階段が見えた。

こんなところに階段が?壁だと思ってた……。

洋介が先導して、私達を連れてその中に入った。

中はとても広く、たくさんの備蓄用品が見られ、小さな台所にトイレやお風呂が付いていた。

凄い。日本じゃ考えられない。

おじさんがスイッチを押すとモニターに外の風景が映った。

そこには、象の様に大きく、ライオンの様な姿に長いキバを持ち目は赤というか紫に近い色をしていた。

外には一般人の姿は見当たらない様だが、魔法局の人達だと思われる集団が魔物と戦っている。いくつもの大きな光の玉が魔物を直撃した。

魔法陣が見えた瞬間に光の槍が魔物を貫いた。次々と魔物が倒されていく。

これが、この世界の現実。皆んな、戦っているんだ……私も強く成って皆んなを守りたいと、心から思った。洋介さんは守りたいから大学で学んでいるんだよね。

「美和さん大丈夫かい。」

「怖いですけど、魔法局の人達が頑張っていますから大丈夫です。」

「今回の魔物はどれくらい強いんですか?」

「魔法壁を壊して侵入したから、この間遭遇した狼の様なのの三倍くらいかな。」

それは凄い。これではシェルターに避難しなければ被害者が出るだろう。

上原さんもこれがわかっているから、今は我慢する時だって言ってたんだ。

私は、この世界で生きていくんだ。だから好きな人達に 守られるだけじゃなく、守りたいと心から思った。

数時間経って魔物が全て消滅した。魔法壁の修復が終わり、シェルターから出ても良いとサイレンが鳴った。シェルターを上り居住区に生活の場を移した。

外は明るく成っていた。シェルターの中で眠ったのに、安心したせいかまだ眠い。

そんな私を見て、洋介さんはもう少し眠った方がいいよと、微笑んだ。

うゎぁ……すごく優しい笑顔……私は洋介さんに見とれてしまった。

もう……その笑顔反則。私はドキドキを隠すように、少し寝ますね。と、言いその場から逃げた。私は、ベットに横になった。けれど、さっきの洋介さんの顔がチラついて眠れない。はぁ……確実に好きに成った。成ってしまった。私ヤバイかも……。

とりあえず、目をつぶって考えない様にしなきゃ……。そのうちに眠ってしまった。

はっ!今何時だろう……時計は六時を指していた。起きなきゃ……急いで着替えて台所に行った。

「おはようございます。」

「はい、おはよう。昨夜はびっくりしたでしょう?少しは眠れた?」

「はい。眠りました。」

「なら良かったわ。心配してたのよ」

まるで、昨夜の事がなかった様な朝だった。いちいち気にしていては、この世界ではやっていけないんだろう。

私はご飯を食べて手伝いを終わらせて、いつもの様に学校に行った。

「美和おはよう。」

「おはよう。美和。大丈夫?眠れた?」

「おはよう。うん。何とか眠れたよ。この世界は凄いね。昨夜あんな事があったのに普通に学校や仕事なんだね?」

「私達は小さな頃からだからね」

「そう、これが普通なのよ。」

「そうなんだ……これが普通かぁ。」

「美和もそのうち慣れるって⁉︎」

「そうだよ。大丈夫だよ。」

そういうもんなんだなぁ……と、思う事にした。

その日の授業の始まりに、昨夜の魔物がSランクだったと教えられた。

授業はいつもと変わらずに過ぎていった。放課後、帰ろうとしたら洋介さんから電話がかかってきた。

今日は一緒に帰ろうとの事だった。あゆなと加奈は、良かったねぇ。と、ニヤニヤしている。

「いい感じじゃん」

「そうだよね。大事にされてるよね」

「なっ、何よ二人して?」

ほら、いいから早く行きな。と、二人は手を振り別れを告げた。


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