第5話 だから私は……上
「だから美和さんの魔力はとても強くて貴重なのよ。飲み込みも早いしね。本当なら数年かけてできる事を美和さんは数ヶ月でできる様に成った。素晴らしい事なのよ」
そうだったんだ……。じゃあ、私にできる事って魔法を使う事?私に魔物を退治できるだろうか?
今日の魔物は弱い方だって言っていたけど……あれより強い魔物が出る事があるんだろう。あの魔物は怖かったけれど、私も戦える様に成りたい。チカラに成りたい。
元の世界にはどうやら帰れそうにない。もう、認めなくては成らない。
諦めてこの世界で生きていこう。もっと魔法の練習をしなくては……。
次の日学校に行ったら、あゆなと加奈に魔物の話しを持ちかけられた。
「昨日の魔物警報びっくりだったよ。」
「そうだよね。街の外れだって言ってたよ。」
「私はバスから降りたら、魔物と遭遇してびっくりしたし、怖かった……。
ちょうど家の人が来てくれて、魔物を倒してくれたから助かったけど……。」
「美和が世話になってる人?うんそうだよ。優しくて親切な人なんだよ。」
へぇ……優しくてねぇ……。二人は訳知り顔で笑った。
んっ、なんか変なこと言ったかしら?と、首をかしげた。まぁいいかぁ。
「ねえねえ。今日ファミレス行かない?」
「いいね。行こう行こう。」
「うん。いいよ。」私は、いい機会だから話そうと思った。
「なに食べる?」
「えーっとぉ……アイスパンケーキがいいなぁ。」
「それ、美味しそう。」
「私もそれにするー。」注文が終わり、話そうと口を開いた。
「あゆな、加奈に話したい事があるの……聞いてくれる?」
なになにどうしたの?と二人は聞いてきた。
「黙っててごめんなさい。私、異世界から来て、今は助けてくれた人の家にお世話に成っているの……」
「驚いたぁ。異世界人だったの⁉︎」
「本当に⁉︎冗談じゃぁ……ないみたいね。」
「ごめんなさい。直ぐに言えなくて……。」
「仕方ないよ。簡単に話せる事じゃないし。」
「うん。そうだね。私異世界人だって気にしないよ。」
「私だってそうよ。美和は友達だもん。」
「ありがとう……」あゆなと加奈の優しさが嬉しくて涙がこぼれた。
「美和ったら泣かないの。」
「そうよ私達は友達なんだから。」
「ありがとう。」また、涙がこぼれた。
「ねぇ、美和はどうやって来たの?」
「あっ、私も気になるぅ。」
「向こうの世界のファミレスのトイレの鏡で服を直してたら、鏡が波打って、えっ、と、思ったら吸い込まれて、気が付いたら知らない建物の中にいて……おそる恐る外に出て見たら、知らない街並みで……。ちょうど見かけた人に助けを求めて、今は、その人の家にお世話に成って、学校まで通わせてもらっているの。」
「そうだったんだね……」
「良い人達に助けてもらえて良かったね。」
「うん。本当に。」私は、彼女たちに問われるままに、ここでの生活を話した。
「ただいま帰りました。」
「美和さんお帰りなさい。お友達と楽しんできた?」
「はい。今日友達に、異世界人だって伝えたんです。でも、二人は気にしないって言ってくれたから嬉しかったです。」
「それは良かったわね。」
「ええ、とても。着替えて手伝いますね。」
「いいのよ。まだ早いからゆっくりしていて。」
「はい。」部屋で着替えながら二人の言葉に感謝した。二人の言葉は温かく私の心を癒してくれた。ありがとう。あゆな、加奈……。
よし!頭を切り替えて少しでも勉強しなきゃ。
この世界の教科に魔法科があって、手から光を出す練習がちょっと難しい。
練習しておかなきゃ……集中して……(ポワ……)よし、できた。もう一回やってみよう。集中して、(ポワ……)できた。
魔法って結構疲れるんだよねと、声が聞こえた。
「あっ、洋介さん。お帰りなさい。いつ来たんですか?」
「さっきだよ。ノックしたけど、気づかないくらい集中していたね。だいぶ上手くなったよ」
「そうですかぁ……。」洋介さんに褒められてかなり嬉しい。ちゃんと見てくれてたんだ。ああ、どうしようドキドキする……も、もしかして私、洋介さんの事が好きなの……(かぁ……)恥ずかしい。意識しない様にしなきゃ……。
「どうしたの?顔が赤いけど、熱でもあるんじゃない?」
「いえ、大丈夫です。ちょっと暑いだけです。」
「無理しないでね。」と、言って心配そうにしながら部屋を出て言った。
ふぅ……助かった。気をつけないとね。平常心平常心。自分に言い聞かせた。
あっ、手伝いしなきゃ。
「遅く成ってすみません」
「今、始めるところだから大丈夫よ。」
「今日は、何を作るんですか?」
「ハンバーグカレーよ」
うゎぁ……。私の大好物。失敗しないように作らなきゃ。
よぉし!まずは、ハンバーグの具材を魔法で細かくみじん切りにして炒める。
うーんイメージしながら魔法を使うのって難しい。
これも魔法を使う為の訓練だから慎重に……よし!できた。
あら熱を取って、その間にカレーの野菜をスパスパ切って炒める。
煮る間にハンバーグの具材を混ぜて形を作る。
手だと感触でわかるんだけどなぁ……うーん小判形に……慎重に……一つできた。
「美和さん上手よ」
「ありがとうございます」
あと三つは最初のより早くできた。あとは焼くだけ、カレーはルーを
入れて煮るだけ。ふぅ……魔法で作るのって疲れるわ……
おばさんは平気な顔して作っているんだから凄いなぁ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます