第2話 魔法の世界だったのー

次の朝、洋介さん達と朝食を食べながらこの世界の事を聞いた。

どうやらこの世界は、魔法が使えるらしい。

昨夜の夕食も今朝と同じく、魔法で作ったそうだ。

異世界に来た事で頭がいっぱいで気付かなかった。

お昼ご飯に手伝いますと言うと、お願いするわね。と、返事が返ってきた。

皿を出す手伝いをしていた私は 、何気なく昼食を作るのを見て驚いた。

手を振ると扉からフライパンが出て来た。

次に空中で包丁が野菜をスパスパ。スパパンと切った。

野菜がフライパンに入ったら、ガス台から火が出て野菜を箸で炒め始めた。

こっ、これは凄い。私にもできたらなぁ……と見ていたら、美和さんもやってみる?と、言われた。

えっ。私、魔法が使えませんよと言うと、たぶん大丈夫だと思うわよと、言われた。

「私がコツを教えてあげるから、やってみたら?」

私は、おばさんの言う通りに念じながら目玉焼きを作ってみた。

最初は少し失敗したけれど、二回目は綺麗にできた。すごい凄い。

初めての魔法でこれだけできれば、他の事も早くできるとおもうわよ。

「あの……。ありがとうございます。」

美和さんには魔法の素質があるのねぇと、おばさんは嬉しそうに笑った。

私、この世界では魔法が使えるんだ……。

怖い様な嬉しい様な複雑な気分だった。

数時間経って、学校から洋介さんが帰って来た。

「お帰りなさい」

「ああ、ただいま」と、返事をして、私の方を振り返った。

「ごめん。今日は元の世界に帰る方法が、見つからなかった。」

私はそうなのか……と、残念に思った。

洋介さんは謝りながら、先生にも調べてもらう事に成っているからと言っていた。

わずかだが望みはあると思った。

今晩は眠れるだろうか……。


次の日、おばさんに買い物に誘われた。

私は、この世界に興味津々で 外に出てみたいと思っていたので、ちょっとウキウキしていた。

車で出かけるわよと、言われた。この世界の車ってどんな感じなのだろう。

車は楕円形で、とても広くて可愛らしい。

おばさんは指先をドアに軽く触れるとドアが開いた。

次にポンと指先を触れるとエンジンが掛かった。

ハンドルは付いているが握らずに運転している。

「おっ、おばさん。だ、だだだ大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ。この世界ではこれが普通よ」と、おばさんは微笑んだ。

ちなみに、ハンドルは魔力の弱い人の為に付いているらしい。

私は、これが普通、これが普通と何度も心の中で呟いた。

まず先に行ったのは市役所。何故、市役所なのかって……、それは私が異世界人だから。話し合いで、住民登録した方が良いだろうと決まったからである。

市役所ではまず異世界人かどうかの質問だった。

質問と言ってもどうやって来たのか、どこの国からか、など聞かれた。

次に名前や生年月日を魔法を入力してもらった。

魔法って便利なんだなぁ……と、思った。

次に行ったのはデパート。

ここで、私の衣類や日常品を買った。

レジでは衣類が空中でたたまれ、日用品は袋に入れられた。

驚きの連続だった。

「荷物持ちます。」

「あら、ありがとう。でも大丈夫よ」

おばさんが歩くと荷物が浮いて付いてくる。

なる程……手に持たなくてもいいんだ。

そう思うと魔法の世界も悪くないと思った。

家に帰って来て間もなく洋介さんが帰って来た。

今日は、異世界人の情報があったと言っていた。

四十年程前に異世界から来た人が、隣町に今も住んでいるとの事だった。

会いたいなぁ……と、思っていると、会ってみるかい?と聞かれた。

「是非会いたいです。」

私の他にも異世界人がいるんだぁ……。どんな人だろう。

何故この世界にいるんだろう。


それから一週間後に洋介さんと一緒に異世界から来た人の家を訪ねた。

出て来たのは、五十歳くらいの女性だった。

中へどうぞと言われ、お邪魔します。と、頭を下げて中に入った。

どうぞ座って下さいと言われ、ソファーに座った。

すると、スーッとカップとコーヒーセットがテーブルに並んだ。

コーヒーを入れてどうぞと勧められた。

私は名乗ってない事に気付き挨拶をした。

初めまして、日本から来た、桐谷美和です。宜しくお願いします。

私に続いて洋介さんも挨拶をした。

「こちらこそ初めまして、私も日本から来たんですよ。

名前は上原幸子と言います。今は、タイラ幸子と名乗っていますけどね。

桐谷さんは最近来られたそうですね。びっくりしたでしょう。」

「はい。いきなりだったので慌てたというか、ただ呆然としてました。」

「だって、どこの家も三階建てでしたから……」

「そうよね。私も驚いたわ。当時、私は十二歳の子供だったの。途方にくれていた時に会ったのが、今の主人だったのよ。」

「そうだったんですか……」

「私も日本に帰りたくて、色々調べたわ……。けれど、帰る方法が見付からずに今日まで来たのよ。」

「でもね。私はこれで良かったと思っているわ。主人も子供たちもいるし寂しくないのよ。」と、上原さんは笑った。



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