UFOを題材に使ったからSFジャンルとなっているだけで、内容的には寓話、たとえ話です。
SFジャンルが苦手な人も、UFOに興味をお持ちでない人も、変わり者の博士の行動を観察するつもりで読んでみて下さい。
世界大戦が終わり、月面着陸やハリウッド映画などのおかげで人類が宇宙に目を向けだした頃、
「不用意に宇宙探査をすると、悪い宇宙人を地球に招き寄せはしまいか」という議論がありました。
他星侵略をもくろむ宇宙人に、わざわざ地球の存在を知らせるようなものではないのか……?
「宇宙人が悪者かもしれない」と疑うのは、人間同士でさえ互いを信用できないから。
そして人間は、誰かと付き合うときには、相手が善人であることを求めます。
でも、善人であってほしいと他人に期待するとき、自分自身はどうなのでしょうか?
他人に期待を押し付けるばかりで、自分のほうは身を改めるつもりがないのでは?
この作品は、
「初対面の相手に歩み寄る姿勢を見せることはできても、
人類がもつ疑い深さや怒りっぽさは生来のものだから、
ちょっとした仕草に滲み出てしまって、消しようがないよね」
と言っている気がしました。
地球の存在は、じつはもう、宇宙じゅうにバレています。
ラジオ放送や無線通信の電波が、宇宙探査機よりも早く太陽系外へ拡散しているからです。
たまたま地球の電波を傍受した宇宙人がいるとして、我々のことを悪い奴だと思っていなければいいですが……。
友好的な宇宙人よりも、ある意味、地球を侵略しにくる宇宙人のほうが優しいかもしれませんね。
侵略者は地球人に何も期待していないので。