8話ー2 ソウルシャウト
「
「アイ・マム!対空砲火、
「「「アイ・サー」」」
同時に
が――
「
「主砲でさえなければ当艦の被害など構うな!この村上水軍の血に誓って――何としてもお嬢様方にお力添えをして見せる!」
再度の反転から、
それもただの無意味な特攻とはならず――
「
「了解だよ、
「何だ!?何やらかすし!?」
「委細承知――深淵よ、我が
すでに
それを視認した獣宿す令嬢が
「
応じる
その中央を抜けた歌姫は歌声を天空へと叩き付けながら接敵する。
止めるべき神の少女を……愛しき兄妹である少年の体躯を救うために——
「ツクヨミの神様っ!ウチの歌を、聞きやっっ!!」
『ア……グウゥゥ——ヤメ、ロ!?』
少女の体躯へ取り付く歌姫。
歌声がその体躯を通して浸蝕の月神の魂を震撼させる様に……その頭部を掴むと額を合わせる。
もがく月神を抱き寄せ、深淵を打ち払う様に額を——その心を合わせる。
一層の足掻きを見せる深淵を穿つは五人の魔法少女。
空域に散った深淵の魔手が二人へ目掛けて飛べば、五人の少女の守りの一撃がそれを阻んだ。
「やらせないって言ってるでしょ!」
「深淵如きが……
「久々に魔を穿てるしっ!
「ふっ……この私が天使に遅れを取る訳にはいかんな!さあ——我が
金色の王女が——
最強の当主が——
聖霊天使が——
赤き魔王が深淵の行く手を阻む最強の盾となり、深淵を
「さあ、ツクヨミはん……
『ヤメ……ローーーーッッ!!?』
だが暴れ、足掻き狂う浸蝕の月神から爆発的な負のエネルギーが
「……
歌姫と月神を覆う負の膜が、二人の魂を
「……ちいとの辛抱やで、月の神様。そのまま……歯ぁ、食い縛れやっ!!」
握り込んだ歌姫の拳が——深淵の浸蝕の膜ごと、闇に迷う神の頬を撃ち抜いた……。
∽∽∽∽∽∽
深淵の全てが覆い尽くす寸前、ウチはツクヨミの神様を殴り飛ばした。
それもただの拳やない……八咫の対魔の秘術に
元来護りが主なお役目のウチらには、明確な攻撃と言える術式が存在せず——特に歌が秘術の真価となるウチの戦い方などは
そんな中で僅かに存在する完全に
それを突っ込んで放つと言うのは、歌で支援する自分の戦い方では無謀とも言えた。
けれどこ戦い方では悠長に構えていられなかった。
歌が届かなければ、問答無用で大切な者達を失ってしまうから。
『ありがとう。
そんなウチは確かに聞いたんだ。
ツクヨミの神様を深淵の力ごと殴り飛ばした時……もうその肉体からは離れるしか残されていない、ウチのたった一人の兄妹の言葉を——
『
聞こえた声に、ウチは言葉を張り上げた。
けどそれは、分かっている事実を捻じ曲げた叫び。
すでに失われた人の命を蘇らせると言う、因果の理に背く禁忌。
だから彼はこう告げた。
それは叶えてはならぬ願いだと——けれど……因果に従った場合、たった一つだけ理法があると。
『それはダメだよ、
『たった一つだけ方法がある。でもそれは、ボクもツクヨミノミコトも……その存在が残る保証はない秘術。』
『……
ウチもそれを知らぬ訳ではなかった。
神仏融合の社会に於いては、神事と共に仏門の理も受け入れ……それを理知として蓄えるは基本。
すでに備わる知識と、今存在するこの地の——四国の本質が脳裏を掠めた。
四国は即ち死国と呼ばれ、八十八の社を逆手に巡ればエネルギーの逆流を呼び——
けれどその秘術ではただ死者が蘇るだけ。
そのままでは摂理に反する下法と成り下がる。
『きっと今ならそれが叶うはずさ。だって君の友人には、命の竜を統べる存在がいるんだから。
秘術に関わる者が人ではなく、神仏に相当する者であれば結果が異なるとされていた。
さらには星に流れる命の大河〈龍脈〉を操作する存在が関与すれば、導かれる結果が理法と化すんだ。
事実上事切れているたった一人の兄妹から贈られた言葉で……ウチは決意する。
下法であるそれを理法へと変え、親しき神仏に匹敵する力備える友人協力の元——
深淵の呪縛からツクヨミの神様を救うための決意を。
「うわああああああっっ!!」
振り抜く拳にありったけの霊力を込めて、深淵の闇からその身を救い出す様に——ツクヨミの神様を撃ち抜いた瞬間……爆散する深淵の気配。
散り散りになったそれは、四国へ展開される八十八の社の結界で浄化されて行く。
そして——悲しみと深淵の狂気に染まりかけていた神様の表情が、穏やかな安らぎに包まれるのを確認しつつ……その身を抱き留めた。
同じく強奪されていた大和からも深淵の支配が消えたのを感じ、すぐさま制御を取り戻すべく後方の武蔵へと連絡を飛ばした。
「大和を覆ってた支配が消えたで!すぐにメイン動力を遠隔制御したってやっ!」
『心得ました、
流石は
大和と武蔵に備わるシステムをよく熟知している。
有事に備えた臨時管制制御をすかさず敢行する所は感嘆すら覚えた。
運用制御する者が消失し、最悪カガワの都へ大和が墜落すると言う事態は免れたウチら。
ふと見やる視線——別のモニターに映ったのは……ウチを支え続けてくれた桜姫のサクヤちゃん。
『
「後ろでサクヤちゃん達が、最高の伴奏を演じてくれたお陰やて。ほんまおおきにな、サクヤちゃん……。」
もう多くの言葉は必要なかった。
テセラちゃんにレゾンちゃん……
これこそが
従者となる存在との絆が奇跡の力を呼び起こす。
これよりその奇跡の最大級の力を発動するため……ウチは共に歩んだ友人達へと、話を切り出したんだ。
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