四国変転、輪廻転生の秘術
8話ー1 宿した業を超えて
八十八の社よりの、守りの力が包む四国はカガワの都。
守護宗家が生みし最大戦力の壱番艦と弐番艦が、今も十字砲火を撒き散らす。
その同空域で――
無数の閃光が絡まる様に弾け、舞い踊り……爆轟を轟かせていた。
「ワタシハ――ワタシハーーーッッ!!」
「くっ……相手が救うべき者だと、これ程までにやり辛いのか!?テセラがどれだけ私のために骨を折ったかを、今さらながらに痛感するよ!」
「そうだよ、レゾンちゃん!誰かを助けるための戦いは、とっても心が苦しいんだよ!それに――」
「そうだね!ちゃんと相手を目を、心を見てあげないといけない!私達はそうやって、大切な人達を救ってきたんだから!」
「なんだぁ!?バカ吸血鬼は今さらそんな事言ってやがるし!こりゃ後で、みっちりそれを教えてやらなけりゃなんねぇな!」
そして
眼前に救うべき存在を飲み込まんとする、深淵の闇が巨大な口を開けて待ち構える中で。
『——もうボクに 「スクイハナイノ?」ーー!ううん 大丈夫その目を開けてーーっ!』
今この地球にありし魔法少女達が集結し……たった一つの存在を救わんと奮闘する。
「
「イエス、マム!……対空砲火!
奮闘をささえる歌姫を守る様に立ち回る
そして——
「これほど事態が深刻化していたとは……!しかし今我らにできる事は何も無い。できると言えば——」
「ええ、その通りです。私達がお嬢様方を支える手段はいくらでもあります。今後の憂いを断つためにも、この深淵の浸蝕がこれ以降に与える影響と範囲——出来うる限りを調査しなければ。」
奇しくもこの戦場に居合わせる形となった支える大人達。
が、眼前の超常の事態には赤き弐番艦内で手を
さりとてできる事はあると行って退けたのは、かつてドンくさいと言われた
すでに双眸へ宿す覚悟は、無様な過去を置き去りにする程に洗練されていた。
「では職務遂行補助として、ハル嬢……君も
「は……はいっ!あまりの事態でいまだに思考が追いつきませんが、研鑽あるのみです!」
「及ばずながら私共も、尽力させて頂きます!シャルージェ——我が
「ええ……畏まりました、アセリアお嬢様。これより円卓の騎士会所有 クロノライブラリを武蔵へと接続……データ共有の後、深淵の浸蝕予想範囲を計測します。」
すでにSPとしての道を歩む
さらには事を見守るだけであった
眼前で姉と慕う聖霊天使と、その少女と絆を共にする友人達が命を賭しているのだ。
令嬢も指を咥えて見ているだけなどあり得なかった
四国はカガワの都で今……救いの大戦が巻き起こる。
それを遥か遠方に捉える影は——自らが動く事さえ叶わぬ場所にて独りごちていた。
「ククッ……そうだ——それをぶつけ合え。お前達の負の情念は、全て深淵本体を復活させる引き金となるんだ。」
「精々お仲間ごっこを堪能してから絶望して逝け……世界の滅亡はすでに目の前だからな。」
不穏なる命の深淵手足である男は嘲笑を浮かべる。
すでに負に飲み込まれんとする造船地帯へ、最後の仕上げとなる力を打ち込みながら——
∽∽∽∽∽∽
遠き日々。
二卵性双生児だったウチと彼は、殆ど変わらない容姿で生まれ……けれど大きく異なる身体状況のままに数年の時を過ごした。
その頃だったか——
彼が元々病に伏せる事が多いと聞いたウチは、
「ダメだよ、
「せやかて!……せやかて、こうでもせんと
「ふふっ……それもしかして、ボクが弟の
「せや!ウチがお姉ちゃんや!」
「でも時間で言えば、生まれはボクの方が先だよね?」
「お……おねーちゃん言うたら、おねーちゃんなんや!」
今思えばそれこそ手のかかる妹の様な言い訳に、
その当たり前のやり取りがしたくて彼のそばへと、足を運んでいた。
そんなウチらを抱えた
「やはり裏門の当主は
「待て!?
そんなやり取りを聞いて育ったウチは、きっと薄々と悟っていたのかも知れない。
すでに前例である、
それが一時は彼女の身を危険に晒すも、辛うじての儀の成功を見た草薙家表門。
新世代当主を頂く事に躍起になる
——当主継承の儀を強行すると言う、悲劇の顛末を——
∽∽∽∽∽∽
「……
しかし……その歌声に込められた憤怒の咆哮に混じる異変を、
それは異変が舞うと同じ頃……歌姫の双眸が悲しみの雫で濡れていたから。
リードギターに国津神の霊力を注ぎ込む彼女は、弾き出す旋律と共に歌姫へと同調し——その悲しみの雫の意味すら理解していた。
「……そうっしゅ。
同調する桜姫も同じく双眸を雫で濡らし……主であり、友人である歌姫を慈しむ。
眼前で起きたる事態は決してあってはならぬ所業——決して……覆してはならぬ宇宙の因果の理。
だがその所業を鏡の化身が仕出かしたなどとは彼女らも考えてはいなかった。
当然である。
すでに捉えた視界に踊るは深淵の狂気乱舞。
命の深淵が人を……そして神を、過ちに
そして桜姫は決意する。
それを叩き付ける様なギターのソロ弾きを演じながら——
「行って下さいっしゅ、
「あのツクヨミの女神様を引っ叩いて来て下さいっしゅ!これ以上の狼藉は——御津迦様の死を愚弄する事になるとっ!!」
「……!?うん……おおきにな、サクヤちゃん。ほな
桜姫の想いは伝わった。
従姫の切なる
そのまま赤き弐番艦の甲板から駆け……差し詰め天女が舞い飛ぶ様に天空を切り裂いた。
眼前の救うべき者の元へと至るために……
悲劇を終わらせるために……悲劇を超えて行くために——
「ツクヨミの神様!あんたは今、やってはならん事をやろうとしとる!それが深淵の齎した物やとしても……手に染めてしもたら、もう戻れん様になるっ!せやから——」
「ウチが……ウチと大切なお友達がそれを止めたるさかい——ちいと歯ぁ食いしばりやっ!!」
悲痛と憤怒入り混じる双眸で天を駆けた舞姫が……その拳を鏡の化身の頬へと振り抜くため――飛んだ。
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