7話―4 オロチに蝕まれし、ツクヨミノミコト
「
「
闇に舞う王女と赤き魔王が――
「草薙流閃武闘術、弐拾壱式……
「草薙桜花流……
「「「「当たれーーーーっっ!!」」」」
そして光宿す最強の当主と聖霊騎士が、今放ち得る最大の力にて
しかし元来究極の絶対防御能力を誇る
文字通り鏡が全てを反射させるかの如き能力を持っているはずだ。
だが――
「(武蔵の
「(さっきの観測データではっきりしおした。この
獣宿す令嬢の鋭き閃きが、量子演算にて揺るぎなき確証へと変貌する。
元来宗家に纏わる秘術は大自然より力を借り受ける側面を持ち……人間の霊的なる力を神霊の加護と同調させる事で真の効力を発揮する。
それがどちらの力を欠いても不完全となるのは、自然と神と人が一体となる日の本の理念そのものである。
故に神霊に属する鏡の化身が幾ら神の力を注いだとて、術式効力が完全に発揮される事はない。
宇宙の理に
宇宙と言う存在は往々にして、想像を絶する数式の羅列によって弾き出される物理演算で支配されているのだ。
そして——
「見えおした!空間座標算出——目標次元位相はカラビヤウ空間外殻、低次元位相断裂!お父様……ウチに力を貸しておくれやす——」
同時に放たれた四方向の攻撃は互いに対消滅を起こす属性を有し——
完全な術式であればその対消滅反応にも、さらに螺旋のエネルギー流動を受けてなお絶対的防御は揺るがない。
しかし不完全な術式によって生み出された守りの鏡は、干渉により一握りの空間断裂を生じさせた。
それでも生まれたそれはこぶし大の断裂……だが獣宿す令嬢は——空間認識と支配能力を有したかの魔王の血を引く少女に取っては十分な空隙であった。
「
「さあ、時空間の扉を開きなはれっっ!!」
付け入る隙へ獣宿す令嬢がいよいよ突撃を敢行する。
突き出す右手は魔王であった父を表す有機質の纏い。
そこより権限するは極小の黒き球体——
その黒き気配を宿した右手を前に突き出し……計測によって弾き出された小さき空間断裂へ向け令嬢は天空を駆けた。
左右の無機質と有機質が入り混じる翼で大気を孕みつつ、黒き気配を断裂へ突き入れた刹那——
こぶし大の空間断裂を、強引に押し開くように現れたのは極小の重力源。
限定された空間へ、マイクロブラックホールを生み出したのだ。
「皆、今おすえ!このままブラックホールで鏡の位相を捻じ曲げますよって——その中心へ開く亜空間ゲートで障壁内部へっ!!」
父と母。
反逆者として追放された化け物。
悲しき英雄達の残さんとした意思が、暴走する嘆きの神の懐へと鋭き牙を突き立てる。
蒼き星の命のため。
救いたいと願っていた存在へと辿り着くため。
訪れた事態へ歯噛みする鏡の化身の心すらも、動揺させる力と意思を
∽∽∽∽∽∽
今ウチに扱える力は限られています。
それほどまでに、お父様とお母様に宿った力は強力であり……故に世界が化け物として追放せざるを得なかったと——
今よりも幼かったウチは聞かされて育って来ました。
けれど眼前で大和を奪い……そしてヤマタノオロチを封印せし封絶鏡を目指す存在を討つためには、今扱える力で対抗しなければなりません。
その思いで放ったお母様の力とお父様の力。
元来それが宇宙の
『(何故この様な者達が地球にっ!?何故……なんで私の邪魔をするの!?私は主にこの体を返したいだけなのに!!?)』
「(何おす?この感覚——これは人間のものやありまへんな。これはよく知り得る感じで言うなら……天津の神様——カグツチ君に近しい物?)」
響くのは悲痛と後悔に包まれた嘆き。
深淵の封印を解き、滅亡を導かんとするには余りにも悲壮感に満ちた感情。
そしてウチは悟る事となるのです。
知り得る宗家当主継承の儀に於ける悲しき代償の下り。
それと照らし合わせて初めて生まれる解——言うまでもなくそれは、主を喰らい尽くしてしまった神様の悔やみ嘆く姿。
そう——今
その何れにも付き従う友達であり従者である方達。
加えて
魔法少女とそれに付き従う者が辿る可能性があった悲しみの道——その道を歩んでしまった神様の嘆きと言う事実へ……ウチは到達してしまったのです。
「……そう言う事、おすか。これは尚更に大和を奪還せんとあきまへんな。皆、首謀者の感情を確認しおした!出て来ますえ……大和を強奪した者が——」
「主を喰らい尽くしてしまった事を——何よりも……誰よりも悲しんどる神様が!」
到達したままの解を、ウチの頼もしき友人達へと……その
少なくともその状況と同じ苦しみの中で戦った経験を持つ
続くレゾンはんも従者であるベルはんとの、苦き経験を想像してか双眸を閉じ……そして開いたそのままで赤き閃光と化し——
頷きあったテセラお姉ちゃんとアーエルちゃんがそこへ追従します。
そして突撃から大和と入れ違う武蔵——
獣はん装備の宙空投影モニターでその事実に最も歯噛みを浮かべていた、憂いの歌姫……
すると眼前。
懐に入られた故の直接対決のつもりでしょう……大和艦橋部から光に包まれた影が次元転移して来ました。
視認した姿は言うに及ばず、男の子と聞いていた様相とは僅かに異なる出で立ち——聞き及ぶ彼の容姿は色素の抜けた淡い金色のはずが、漆黒の闇夜を思わす深い紺の流れる長髪。
さらには女の子の様な雰囲気を全面に押し出す姿は、明らかに別人とも取れました。
「あなた達は何故私の邪魔をするの……。」
ウチらと接した
しかしそれは恨みや憎しみなどは欠片も存在しない、焦燥と悲痛に
ただ主への思いを成さんとする、ウチの友人達に力添えする従者達が辿って来た感覚そのものでした。
『
その姿を確認した
眼前――視界に捉える姿では無い本来の存在へと言葉を放ちます。
詰まる所……カグツチ君にとっての直の姉となる存在は、代表的な存在として〈アマテラスオオミカミ〉か〈ツクヨミノミコト〉に絞られるのです。
けれど——
「私の邪魔をする者は何人たりとも許しはしません!我が主を……私が命を喰らい尽くした
「この身体を主へとお返しするために、封印の地を目指すのです!その先——
突き付けられるのは……生命の
同時に膨れ上がったのは——暗き深淵の気配。
背後にチラついたのは猛烈なる悪意と、破壊の意思と、絶望を呼ぶ怨嗟。
命の深淵ヤマタノオロチの気配でした。
「皆、気を付けておくれやす!!彼の背後にオロチの気配が——」
ウチの叫びが響くか否かの刹那。
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