7話—3 人類最大戦力
その日カガワの都上空は激しく燃え上がる。
八十八の社が生む結界と、獣を使役する少女が被害を最小に食い止めるが……その余波は遥か遠方へと飛散する物も出る。
あの
事前に宗家よりの指示が諸国で活動する同志の耳へと入っていた事もあり、人的被害は皆無であるも……
だがしかし——事前警告を受けた国々も知り得ている。
今この蒼き大地の危機を回避できるのは、幼き少女達しか存在しない事を……。
その最後の砦が堕ちれば——溢れる深淵が
奇しくもかつての
∽∽∽∽∽∽
「テセラ、支援を!」
「了解だよ、レゾンちゃん!対空砲火……
赤き突撃が鏡の絶対障壁へ幾度と突き刺さり、それと入れ替わるように金色の風を纏う高速巡航艦の対空砲火が
が、未だその対空砲火同士の打ち合いに止まる魔界勢。
すでに強奪の壱番艦も、船首を封絶鏡へ向けんとスラスター制御を開始していた。
「お姉ちゃん!大和が封絶鏡へ!?」
「行かせないよ!私が前に回り込みます!」
「テセラっ!?お前の現装備では的にしかならん!そこは私が——」
互いを案ずる
その刹那——
「おいテセラ!それとそこのバカ吸血鬼——アタシ様が行くから……どーーーけえーーーっっ!!」
その声を聞き急制動を掛ける二人を尻目に……銀嶺の翼が——得意の双銃では無い白銀の刃を振り抜き障壁へ激突した。
銀嶺の翼……ヴァチカンより〈
「アーエルちゃん!?まさか、力の制御が回復したの!?」
「これは……そのようだねテセラ!と言う事は——」
振り向く王女の視界には、彼女が想定した通りの姿が追従していた。
そう……銀嶺の翼に続く光の最大戦力は、かの
「その通り!草薙流閃武闘術皆伝、
蒼炎の翼で天を駆け——スラリと抜き放たれるは草薙家の誇りし伝家の宝刀。
銀嶺の翼を追う様に舞う蒼炎の閃光が、天を割く衝撃となり——
「ほう?お前にしては珍しい武器を所持しているじゃないか。まあ私はそれに触れたくもないがな。」
「クヒッ……抜かせバカ吸血鬼!調子こいた事抜かしてると、お前から銀の灰にしてやるし!?」
「……な、何を売り言葉へ買言葉を返納してはりますの!?今はそないな時やありまへんえ(汗)!?」
「「それは同感だなっ!!」」
力が戻り戦場へ舞い飛んだかと思いきや……天使と魔王の定番とも言える口論が勃発し——冷や汗のまま
直後……それすらも挨拶と言わんばかりの二人が——普段の犬猿の仲を忘却させる様な相槌を見せる。
同時に互いが、力比べでも申し合わせたかの阿吽の呼吸で対方向へ飛び——左右から畳み掛ける様に壱番艦を強襲した。
瞬間——
光の霊剣〈エクスカリバー〉と闇の衝突〈ドラギック・フォーディス〉が障壁を同時に
「この反応は……そう言う事おすか!カミラはん……そちらへ観測した封絶鏡のデータを送りますよって——弾き出されたタイミングでの突撃敢行、お願いしますえ!」
確かに見出した刹那の空隙。
それをすでに二人の少女後方に視認した、待ちわびたもう一隻の最強戦艦総監を担う少女へと送り届ける。
魔界勢に移譲されし宗家最大戦力弐番艦——武蔵が到着したのだ。
「委細承りましたわ、
「手段はお任せします。……日の本の誇り高き大海賊の力——得とご覧に入れて差し上げて下さいませ!」
「配慮痛み入ります!では
「「「アイ、サー!!」」」
そこに違いがあろうとも、姉妹である事に変わりないと……吸血鬼の妹は獣宿す少女を姉と評し——次いでその願いを聞き届けんと、
そこに含まれた日の本の大海賊との言葉に……統括部長
かつて戦国時代……瀬戸の海を跨ぎその名を知らしめた大海賊の子孫である彼は——巡る因果の末、瀬戸の海を背に超戦艦を駆る機会を得た。
魔界に居を移し、その身をかの戦国で天下布武を唱えたノブナガ・オダ・ダイロクテンに預けた彼は……己が身に眠る血筋を強く感じる様になっていた。
故に彼は宣言する。
瀬戸の海を望むこのカガワの都に今……戦乱の炎を再び持ち込まんとする者を討つため。
そして世のために
魔界での戦いで披露した、その血筋と……そこから編み出した航海戦術展開を指示した。
「全回転衝角起動……艦中央、戦術用バレル旋回重力アンカー待機!この瀬戸の海を背に見せつけるぞ……我が村上水軍式、
足止めを食らうも壱番艦後方主砲一門が弐番艦を狙い——射線軸へ捉えられんとする。
「大和の主砲、射線軸へ入ります!」
「ギリギリまで引きつけろ!重力アンカー左舷上部、及び右舷下部を待機!同時にスラスター回転方向へ——」
だが構う事なく突撃を敢行する
刹那――
「今だっ!重力アンカー……左舷を上方10時へ、右舷を下方4時方向へ射出!回転用スラスター全開——武蔵、バレルロール開始!」
放たれる艦砲射撃。
それを眼前に捉えた
襲い来る三条の砲火を軸に回転を始めた弐番艦は、艦橋を下に……そして船底を上に向けるようにバレルロール航行を敢行したのだ。
舞う主砲の閃条に艦橋下を
しかし止まぬ突撃は、回転する船体そのままで勢いを増した。
「重力アンカー……パージだっ!障壁へ
「機関最大!穿て……
主砲を舞う様に回避した
「皆、一斉に
「ウチがそれを強制的に拡大しますよって!皆はん、頼みますえ!!」
各
それを確認した獣宿す少女は、その身の獣へ――両親より受け継いだもう一つの力の開放準備に取り掛かった。
「さあ、獣はん!同時展開は少々きつう思いますけど――皆が揃う今こそ勝負の時おすえ!?一斉攻撃の瞬間に現れる僅かな隙間へお父様の――」
「
因果の果てへたった一人の姉を送り届けてくれた父、魔王ルーベンス・アーレッドがかつて備えし獣の力を――
今……その愛娘が解き放つ事となる。
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