厄災を御する者、魔業の魔法少女
5話—1 響く凶報、絶望の八咫家
それは内閣総理との対談も大詰めの頃。
最終的な結を前に、
だが……視線を上げた総理の、眉根に寄せられた
殊勝な総理から語られた解は——
「残念ながら魔界からの大使方……この度の会談で、我が国も手放しにそちらを受け入れるわけにも行きません。」
「特に今本国の置かれた現状では、少なくとも我らだけでは決めかねると言う所なのです。」
地球と魔界との友好条約締結——それをしかねると言う返答であった。
それでもあの魔嬢王代理を名乗る
「……そうですか。ですが私もその解答はおおよその範囲です。できれば世界の現状を、話せる程度で構いません——詳しくお聞かせ願えますか?」
断りの解への素早き返答。
それが初等部高学年の少女から語られる事態には、殊勝な総理をして感嘆を浮かべ……ならばその未来ある成長に応えねばと、しかと大使である王女を見据え言葉を紡ぎ始めた。
「……話せる範囲であれば。事はそもそも
「そこでまずは、アジア全域の対立と小競り合いを取り除くため動いていた所の
当時の災害以前で、この地球ではすでに世界の警察を名乗っていた
そこで已む無く、世界に名だたる機関である三神守護宗家を擁する日本が世界をまとめるに至るのだが——
そこへアジア圏に
「あの
重く響く殊勝な総理の言葉は、今の暗雲立ち込める世界事情を乗せていた。
その最悪の結果が
——
その事実は未来を生きる魔界よりの使者へ、憂うべき真実として刻まれる。
そして続ける殊勝な総理は、友好条約締結に至らぬ本懐へと踏み込んで行く。
「今世界はかの大災害からの復興の最中。そして我らが擁する自衛隊を含めたあらゆる防衛組織の殆どが、世界のあらゆる国と民の復興支援へ乗り出す状態——」
「その現状に加え、今アジア圏で発足した一つの統一構想が未だ決まりかねている中——我が国の勝手で、迂闊に火種を抱え込む訳にも行かぬ状況なのです。」
「統一構想?それはどんな内容でしょうか、総理。」
聞き慣れぬ言葉に金色の王女が身を乗り出す。
王女とて、何れは
そんな王女の姿を目にした政権を任される殊勝な総理は、「この様な若者が日本にも欲しいものだ……」と思考しつつ——身を乗り出す王女へ、手解きとも取れる口ぶりで全容を語る。
「それはだね、テセラ王女殿下。今復興に全力を出すアジア圏国家——中華連合に統一半島……さらには、東南融和連合諸国全てを内包する巨大連合国家——」
「決してそれらを従えるものでは無い……互いの国を尊重しあい、共に切磋琢磨して経済成長へと歩む夢の国家群構想——大アジア共和連合国と言う構想だ。」
殊勝な総理より掲げられた大義に、今度は大使側である王女が目を見開く番となる。
金色の王女も曲がりなりにもこの日本と言う国で、僅かな年月であるも暮らしを営んだ経緯があり――初等部では流石に学ぶ事なき政治経済も、宗家に準える者から形だけであれば聞き及ぶ。
当然そこには、古き内閣発足間もなき時代の軍国主義に傾きかけた時期や……平和の中であぐらを掻き、不正と汚職に汗を流した不名誉な時代も含まれる。
その時代を背負ってであろう殊勝な総理の発言は、王女の心を動かすには充分であった。
そこまで互いの意見を口にしあった対談の最中――
それは突如、報となり舞い込んだ。
「今は対談中だ。――なに?……っな!?」
耳にした勝利呼ぶ当主が戦慄のまま息を飲んだ。
普段余程の事がない限り揺らがぬ双眸が、かつてない程鋭く細められ――額に冷たい物すら滴らせる。
「総理!対談の途中で申し訳ありません……非常事態が――」
「ただ今
飛び込んだ報は凶報。
これより蒼き世界を揺るがせる事態の序章が……静かに幕を開けたのだった。
∽∽∽∽∽∽
魔界からの大使として総理大臣との会談に臨むテセラはんにレゾンちゃん。
ウチら地球陣営はその間、要人控え室へ案内され緊張の中会談終了を待ちます。
自分が総理大臣と話す訳ではないのに、震える手が自分の目に映っていました。
「なんやウチが会談に来たわけやあらへんのに、こう……手の震えが止まりまへんわ。」
「う……ぅ私もです~~。」
「いや、ていうか……
「し、しかしですね!?相手は総理大臣ですよ!?政界のトップで私達でも——」
「……
宗家組に英国組の皆が緊張を宿すも己を律する中で、まさかのドンくさいが戻って来た
それを年場も行かぬ少女に窘められる始末。
これが一般市民であればその緊張は多分に想像も付くところですが、言うに及ばず
全くもって
「そう言えば、
「あっ、いえ……私も結構緊張はしてるんですよ?なんせSP見習いですし。それでも——」
「あの
「へ……へぇ~~(汗)これは
「そっ……!?そんな~~(涙)」
そんなやり取りに、嫌な汗を浮かべて半目を送るアーエルちゃんにアセリアはん。
かく言うこちらもさしたる緊張を感じぬ所は、流石とも言えました。
方や野良魔族を前に死闘を潜り抜けた天使さん——方やあの
ウチの周りはいつしかこんな、とてつもない権威を持ち——それでいて世界を背負うお友達に囲まれていたと、改めて思い知らされました。
だからでしょう——
もう自分の中に生まれていた大きな決意が、少し前から
キッカケさえ掴めれば、いつでも前へと大きな一歩を踏み出せるだけの準備が整っていたのだと思います。
——キッカケさえ——
そう決意を思考に宿したウチと、要人控え室に待機する友人達へ——
キッカケとしては余りにも残酷な報が、開け放たれた控え室扉の向こうから突き付けられたのです。
「皆、落ち着いてよく聞いてください!たった今、新呉市から救難要請が届き……魔導超戦艦が——大和が強奪されたとの報が入りました!」
現れたのはテセラちゃん。
けれど双眸に宿しているのは悲痛と焦燥。
その王女様から放たれた言葉に、一瞬だれも言葉を発せぬ中さらなる憂いが追加され……その人物に最も所縁ある友人が――
「さらにその大和を強奪した者の正体は……その正体は——
「……えっ……!?」
そう——遂に深淵の因果が
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