4話—2 西都心 オオサカ
地上数万メートルに達する人智を凌駕した巨大なる魔——
本来その制御を成す
地上の全ての
あれからすでに十二年の月日が流れ——けれど……かつてより幾度も壊滅に見舞われようとも立ち上がると謳われた国家は、その十二年で驚きべき復活を遂げます。
その支えになった地——
それが日本首都の一部機能を移動させたもう一つの首都……
「せやったんやね……ハルさん。どうやった?分断列島をつなぐ
「それはもう、凄いの一言で……!これまで
「……そうなんだよ~~。このSPさんお登りさんでもあるまいに、あっちこっちよそ見するから乗ってるこっちは怖いのなんのって——」
「そっ……それは言わないで下さいって~~(汗)!?」
ウチへのサプライズやったはずの東日本任務一行様……けれどサプライズの前から、違うサプライズが応酬していた様なハルさん。
すでに日常でもあったサプライズバトルの餌食になる彼女……新参な初々しさは目新しさすら覚えました。
そこへ華麗なるツッコミをぶっ込んで来た
「なんやハルさん、雰囲気だけ見てると
「どういう意味ですか~~!?なんでそこで私が出てくるんですかっ~~(泣)!?」
なんて言う、ハルさんに失礼な言葉を掛けてきたので――
名前を出されて情けなく声を上げる、ドンくさい人は置いといて……ここはフォローも待ったなしです。
「いや、
「そうそう。私の力が暴走しかけた時だって、その身を張ってあの異形の深淵に立ち塞がったんだよ?ハルさんに籠められた芯の強さは正にホンモノ……なんだから!」
「いえ!?そんな、あの時は夢中で……照れちゃいますよ~~。」
「そこは知りませんおしたな?まあスポーツカーを乗りこなす時点ですでに、鼻水垂らしてたSPさんとは大違いおすけどな~~。」
「おお、お嬢様~~!?」
クスクスと笑いが響き、
ウチの視線に気付いたテセラはんもキラキラと輝く笑顔を送ってくれて、それが嬉しくてこちらまで笑顔になって来ます。
現在ウチらは
が——ここは休憩室の名が吹き飛ぶほどに豪華絢爛で、テーブル一つにしても機械的な装飾が電子の帯を走らせ……準備される菓子や飲み物も普通に豪華です。
そんな思考の中疑問が浮かび——
「……って、よう考えたらこれ——今気が付いたけど、和菓子……おすな?ん?待って?この艦今まで魔界におって、急遽馳せ参じたはずやおへんか?それもこんなにようさん……これどないしはったん?」
「ああ~~気付いた?さすが
——と、テセラちゃん。
「これは、ミネルバお姉様が地球のレシピと食材を参考に……
「……み……ミネルバ様って、とんでも無いパーフェクト魔王様やったんおすな(汗)。」
「ああ(汗)そこは私も同意せざるを得ないな。私もミネルバ様の和食をいただく機会があったのだが……アレはこの地球で言う所の三つ星級と誇れるものだ。」
「つか、吸血鬼……お前なんで和食とか食ってんの(汗)本当にお前、吸血鬼かよ……。」
カミラちゃんが加えた、仰天事実に答えるこれまた奇想天外な吸血鬼レゾンちゃんの解答——仲が悪いはずなのに、絶妙な突っ込みを入れてくるアーエルちゃん。
それは今までテセラちゃんとの関わりを持った中でも、一番騒がしいと言える光景でウチの思考へ刻み込まれます。
そしてこんな些細な記憶は全て、これからのウチにとっての宝物になると……そんな思いに駆られながら——
潮風香る瀬戸の海を行く
∽∽∽∽∽∽
日本における西の大都心。
そして現在二つ目の首都を名乗るそこは、現在オオサカの大地を望む海域へ西の拠点……その三番目が建造の只中にあった。
メガフロート
『武蔵はこれより、【新堺市】の臨時多目的港へ入港します。同時に……突貫工事ではありますが——諸外国対応として建設された外交用、特設会議場へ案内致しますので——』
『魔界より特使として
「はい、分かりました。ありがとうございます、
『自分の呼び名は
【新堺市】から数キロ地点を進む超戦艦。
深い血の色を模したカラーリングで、瀬戸の海に異様さを晒すそれは魔界勢でも吸血鬼勢力が艦運用を担っている点……さらには魔界での事件で活躍した赤煉の魔王に至る、
魔界での改装時に急遽纏わされた専用配色である。
赤き超戦艦内特設大ホールで、
天楼にありし魔界を代表する、王族の面構えへと変化していた。
それもそのはず——
彼女らがこれより面会するは国家を代表する首相……臨時に
「よもやテセラちゃんが、あの
「
「そうおすえ~~☆正人類も魔族も同じ人間と……そう言い表すのが、この世界での当たり前おす~~。そこに差なんてありまへんよってな~~。」
確かに魔界勢は
そしてその言葉へ含まれた、光と闇と言う壁すら飛び越える配慮は同時に……魔界が故郷となる少女へすらも安らぎを生んでいく。
「地球で私が生きていた記憶は、すでにありませんが——もう一人の私……その記憶へ朧げながらに眠る悲痛が嘘の様に思えますわ。」
「ふっ……そうだなカミラ。私はこの世界で出会った、この種族の壁すら飛び越える慈愛に救われた……。その世界へ君を招待出来た事——僥倖以外の何物でも無いよ。」
「……悲しき過去を越え——輪廻の末出逢うと言う因果の法則。日本を代表する宗教的な思想で知り得ておりましたが……それが現実に、この目に出来るとは——」
「レゾン様にカミラ様……本当に良かったですね。」
彼女も彼女なりではあるが、過酷な人生の中出会った少女——主に変わり魔を断罪する銀嶺の天使……
魔界より訪れた睦まじき姉妹へ、賛美を贈らずにはいられなかった。
すでに地球も魔界もない親しさが包む特設大ホール——望む会談への緊張も解れた事を確認した
「ではそろそろ【新堺市】港へ着きますよって……魔界勢は準備よろしゅお願いしますな。ウチらも同席が必要言う事おすから、準備に移りますよって~~。」
締められた言葉の後――
誰からでも無く、大ホールに備えられた宙空大型モニターを見やり……地球と魔界の歴史でも史上初となる、正人類と魔族との友好条約締結へ向けた一歩を踏み出す。
背後に忍び寄る……厄災の訪れと言う憂いに、その背を焼かれながら——
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