3話—4 光と闇の再会
その僅か前までは、
しかしそこへ訪れた救いの光明は、他でもない私の大親友——
「テセラはん……何で——」
「うん……少し諸々の事情で遅れたけど——本当に間に合ってよかっ——うひゃっ!?」
眼前の少女……離れ離れとなった一年と立たぬ日々が、それこそ何年も仲を分かたれた様な錯覚に陥ったウチは——
テセラはんが言葉を言い終わる前に、抱きついていました……。
「わ、
「待っとりました……たった数ヶ月やのに、もう何年も会っとらん様に思えて——でも……良かった。ホンマにテセラはんおすな?」
「……そうだよ、
普通の初等部児童なら「久しぶり。」の一言で事足るところなのでしょう——けれどウチは……心の中に悲痛のまま刻まれた、両親との永遠の別れが不安を否応なしに増大させるのです。
すでにそれを知るテセラはんも、決して軽い気持ちではなく……それでいて、彼女が持つ海の様に深い慈愛で優しく包み込んでくれるのです。
ウチがテセラはんと最初に出会ったのは、彼女が初等部に編入されてきたある日――ウチはまだその時……両親との永遠の別れによって生まれた悲しみで、塞ぎこむ様に外界人との接触を拒んでいました。
——『
今も忘れない……テセラはんの最初の言葉——防衛大戦の少し前までには仲良くなっていたウチも、その言葉へすぐには返答出来なかったのを覚えています。
『テセラお姉様……ただ今レゾンお姉様より通信が入りましたわ。あちらも無事——間に合ったとの事です。』
「了解……後は武蔵を所定の港へ。お願いねカミラ。」
『
久しぶりの大事なお友達との邂逅へ届く、ウチも知らぬ方の声——疑問に揺れたウチは、テセラはんへ問い質そうとします。
その言葉へ含まれたあちらと言う点へ僅かな焦りを感じつつ——
「テセラはん今の声は!?それにあちらって……もしかしてアーエルちゃん達の——」
「ああ、そっか……まだカミラの紹介がまだだね、そこはみんな揃ってからおいおいに。あと、あちら——アーエルちゃんの方も大丈夫だよ。あっちにはとっても強い吸血鬼さんが向かってるから……きっと物足りないとか文句言ってるだろうけど——」
吸血鬼——その言葉は間違いなく、レゾンちゃんと察するけれど……ウチの知る限りでは、今見た異形の大群には流石に苦戦を強いられる程度の戦力と見積もっていたウチ。
「お嬢様っ!
訂正——さっきの素敵さが吹き飛んでしまった、心配のあまり怒りさえ通り越した
「ちょおっ!?
「えーと……その方は
ああ……素敵な方の沙坐愛はんなら、テセラちゃんへも凄く誇らしく返答出来たのですが——この鼻水混じりのお顔では自慢も何もあったものではありません。
「あ~~こちらも初めてやね(汗)ウチのSP
折角の再会が微妙な空気に包まれる中——そこから離れた場所で、ウチらを襲った危機への危惧を現す
少し後——今起こっている事態の詳細が語られる事となり……一層の危機感を募らせるウチらなのでした。
∽∽∽∽∽∽
守護宗家と英国使者達を巻き込んだ危機は、天空より降り立った魔界よりの使者達の怒涛の活躍で回避された。
だが……全てがそれで丸く収まる事などない——むしろ、危惧すべき事態はこれからであると物語っていた。
「ええ……では我々もそちらへ向かいます。民間人の避難は地方へ配された宗家手配の者へ任せておりますので—— 一時間の後カガワの都沿岸……指定された港へ向かいます。では——」
一難を乗り切るも険しい表情の
それもそのはず……先の異形襲撃時——突如襲った異変こそがその険しさを一層深い物へとさせていた。
それは地球勢——詰まる所、光に属する魔法少女達の霊力結合に異常を来した事態である。
「それで——お嬢様方は確かに、
優しきSPの駆る
信じられぬとの思いを塗し——
「せや……。あの封じの術式は間違いなく——
「左様にございますっしゅ。そもそもあの秘術は当主継承の儀を終えた、
「——元々その身が病弱であった故……未だ宗家御用達である医療施設の世話を受けているはず、と。」
バックミラー越しに見やるSPへ、
その会話をインカムで静かに聞き入る
しかしその沈黙を破ったのは、他でもない王女——魔界より宗家の友人達を救いに馳せ参じた
「今は情報が少な過ぎます。かと言って放置すれば後手に回りますが——まずは初対面と……再会を喜びましょう、皆さん!」
魔界勢はこの光満ちる大地において、生命活動の源泉である
そのため、日常においては極力その身に宿る
すでに一度……深淵を屠るために放った
皆に向けた王女の言葉——
それを耳にした旧知の仲である友人達は驚嘆する。
たった数ヶ月前はただの少女であった王女と思えぬ……それこそ一国を纏める王の如き威厳を振り撒いていたから。
同時に少女達は、その姿によく知る近しき者を重ねて言葉にした。
「テセラ……ちゃん——なんかまるで、ミネルバさんみたいになった?」
「違うえ?まさにテセラはんは、今ミネルバ様その者や。たった数ヶ月やのに——変わりましたなぁ、テセラはん……。」
「ええ~~そうかなぁ~~。えへへ。」
尊敬を抱く魔界の姉の名が出た事で、一瞬前の凛々しさが影を
同乗する
大きく成長した器が発した言葉は、耳にした者達全員へ落ち着きを取り戻させる事となった。
そこへ響くのは金色の王女同様に——否、文字通り魔王の頂きに辿り着いた赤き少女の声……しかしハナからその程度の事態には動じぬ、頼もしき言葉がインカムへ通信として放たれる。
『こちらレゾン……どうやら初めましての方も居るようだが——その件はまた合流地点で、だな。私はこのままベル——いや、ブラックファイアと共に先んじて飛ぶ。』
「ああ……ほんまに懐かしい声おすな~~。それよりも……レゾンはん——その呼び方やと、ようやくお友達が女の子だったと——」
『ふぅ……どうやら皆知ってて私をハメたな?ああ、すでに知り得ているさ——ベルが素敵な女友達であったと言う事実をな。全く……その事にすら気付かず、醜態を晒していた自分には嫌気がさすよ。』
『——と言う事で皆さん、私はもうベルと呼んで下さいね~~☆女の子ですからね~~☆』
「って……ベルさん、テンションが以前とまるで違うし(汗)いろいろあったんでしょうけど、やっと女の子出来ますね。」
『ウチのレゾンがご迷惑おかけしました~~☆』
すでに赤き少女を深く知る友人達は苦笑を漏らし、魔界へ渡る前のささやかな日常で秘匿した事実を……弄るように暴露した。
が……それはかつて
魔王に至った吸血鬼……百も承知である。
ただ――赤き吸血鬼も使い魔から友人へと昇華する経緯を辿った、
『初対面の方も居る所——その弄りは混乱を来す。謹んでくれるとありがたいのだが?ベル。』
赤き吸血鬼の言葉を聞いた赤竜の少女が、通信先でテヘペロアクションをかましたであろうと察した地球と魔界の友人達は……先の不穏に陰る表情が嘘のように笑い合う。
そして——
無闇に事を悪しき方へ考えぬと言う空気は、光側と闇側で戦う少女達皆へと伝播し……まずは合流地点——カガワの都沿岸の港方向へ向け、任務車両を走らせるのであった。
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