3話—3 光と闇を纏いし金色の王女
その時ウチは覚悟しました。
突如として現れた
——そう……していたはずなのです。
そして訪れた絶対絶命の危機……その剣と鏡の力が封殺されると言う緊急事態。
原因も分からず、ウチらはただ深淵の魔手から逃げ惑うしかありませんでした。
そんなウチらを嘲笑うかの様な深淵の増殖は、止まる所を知らず続き——やがて退路を断たれた時……ウチは覚悟を決めたのです。
地球における史上最悪の厄災——
しかし覚悟のまま足を踏み出したウチは、目にする事となります。
待ち望んだ者の再来を——愛しき友人の待ち続けた帰還を。
この時以降に訪れる……永遠の地獄へ足を踏み入れる事となるウチにとっての、たった一つの奇跡と共に——
∽∽∽∽∽∽
「こちら
「
異国令嬢組と別方向へ依頼交渉に向かっていた宗家組であったが、
それは言うに及ばず
「……っ!?
「あかんて、
「ハル様、
「ど……どないしたん!?サクヤちゃん!」
「——これはマズうございますっしゅ……。結界が……勝手に術式崩壊を……——」
「な……なんやて……!?」
舞姫の従姫である、
だが——あの断罪天使が、
「
すぐさまその事態確認のため、従者である天津神の破壊神……
「痛っ!?痛った~~……なんか弾かれたよ!?カグツチ君!」
『これは不測の事態ぞ、主よ……!我の姿顕現は問題無い様だが——どうやら、戦う力のみ封じられた形だ……!』
「それ——本当にマズイじゃない!?いったいこれどうなって——」
舞姫に続き小さな当主の霊力結合さえ
その経緯を視認し……思考に浮かぶあってはならない——しかしたった一つだけ、それを可能とする御業を知る舞姫が——
眉根を歪ませ……悲痛に漏らした。
「この力……いや、この術式は——戦う霊的な力のみを封じる結界の秘術……!これを使えるんは……
そう——確証は無くとも、
今自分達から力を奪ったのは、紛れもなく身内の手口——守護宗家にとって、あるまじき事態以外の何物でもなかった。
直後……大型ショッピングモール駐車場から建物を背に退路を封じられた宗家一行へ、深淵の異形の大群が目標を定め——
「皆さん……来ますよっ!?」
「おっ……お嬢様っっ!?」
「くっ……この様な——万事休すなどっ——」
宗家SP陣でさえ、絶望的な瞬間が走馬灯を走らせる。
しかしその絶望が……一人の少女の覚悟を後押しする様に——静かに因果の歯車を狂わせ始めた。
「あきまへんよ……皆が犠牲になる世界やなんて——」
「……お……嬢……様?」
「そんなん……ウチは望みまへん——望んでなんかいまへんえ!」
黒髪と大きなリボンを揺らし、決意宿す紅玉の様な瞳で……少女が前へと歩み出た。
今まで守られるだけであった少女が……その身から渦巻く様に這い出る、膨大なる魔を撒き散らす様に——
「だめです、
「うん……分かっとりますえ。せやけどそれは、大切な人達が居てこそ意味を成しますよって——皆がおらん世界でいくら力を抑えたかて……何も意味がありまへん。」
そして——
少女が悲しき瞳を……悲劇の英雄と呼ばれた両親が、自分へ向けたのと同じそれを――
永遠の別れを籠める様な一瞥後に、深淵の大軍勢へと向き直ったその時——
眼前を……超重の弾幕が撃ち貫いた。
「では
「アイ、マム!主砲、副砲……
「
それは爆轟……重力の弾雨。
宗家組が絶望を垣間見……厄災宿す少女が、己の忌まわしき業を解き放つか否か——
遥かな天空の彼方より放たれた。
その時天を仰いだ者達は歓喜し——そして涙したであろう。
視界を占拠した姿は、かつて大空襲を受けてなお沈まぬ脅威を人々に叩きつけた——本来であれば平和を招来するために生まれた、日の本の民の願いが生み出した最強の姿。
地球の蒼き天より舞い降りたのは超弩級戦艦——魔導超戦艦【武蔵】が、
「む……武蔵——だと!?では……それではっ!」
天へ現れた存在が宗家を通じ、いかな場所へ譲渡されたかを知りうる優しきSPが——絶望から一転……希望を湛えた双眸で天を仰ぐ。
その仰いだ爆轟の彼方——深淵を穿った事で巻き上がる煙を掻き散らす影が……
十二枚の
「ローディ君!
『ああ!了解だ、素敵な主……ボクもこの世界なら、
天空より——美の化身と称される少女が舞い降りた。
「
『
その体躯を包むは闇の象徴……魔族の纏う闇が覆い——しかし魔導の鎧である白と黒の機械のドレスが、それを眩き光へと変換する。
彼女を支えるは、かつて天軍をまとめし
宗家組を進退窮まる様に追い縋った
そして——
「テ……セラ……はん?」
「うん。……少しだけ——お久しぶりだね、
己が内に眠る厄災の因子を覚醒させる寸前であった、はんなり令嬢の眼前へ——彼女にとって掛け替えのない友人——
金色の王女……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます