帰還、天楼の魔界より
3話—1 砕けた鏡は牙を剥く
定番となったうどん店へ訪れた、ささやかな一悶着も落ち着いた頃——すでに食事を終えたお嬢様一行は、
「って……本当によお考えたら、カガワって——遊べる所があらへんな……(汗)」
「今更おすな(汗)せやから言うたやん……。」
「アセリアが言ってたのも分かる気がする。……ここ——見紛う事無きド田舎だなぁ……。」
「アーエルはん——やったっけ?それはストレート過ぎるわ……。もうちょいオブラートに包んでんか……(涙)」
初対面且つ、慣れぬ
「ではお嬢様方、この様なプランは如何でしょう。こちらは今後の事も踏まえ、輸送機の臨時発着場等確保のため……各所へと連携交渉の依頼に赴く必要があり——」
「いずれは、数カ所へ別行動も取る必要がある事からも……各車に乗り合わせつつ——先々までのドライブを楽しむと言う形で。どうですか?」
遊ぶ行く宛に悩むお嬢様達へ、
が……事の事前交渉であれば、通信回線による交渉で事足りる所——その地まで任務車両での移動と言う点に疑問を抱くはんなり令嬢が問い
「直接行かなあかんの?」
「ええ……。なにぶん我らは、この都の地形に知識不足を感じております。
「特に
「ふ~ん。て言うか
「事実に基づく考察の結果です。そこは邪険にされません様に。」
「うへぇ~~切り返しが鋭い!参りましたっ!」
「ははっ……そこは流石に
「お、お嬢様っ!?そこで私を出さないで下さい~~!」
抜群のやり取りを見せる
「あの~なんか私……置いてきぼり感が、パナいのですけど……。」
「ははっ……そこは精進あるのみですね、ハルさん。」
すでに家族然とする宗家組が醸し出す馴染んだ雰囲気に、まだ新参であり……分家へ組み込まれたばかりの見習いSPハル嬢は、経験の乏しさから完全に成り行きに乗り遅れ——
カスタムマシンチーム協力者である、
画して一行は、各任務車両に乗り合わせ——しかしドンくさいSPが駆る、深淵の名を持つ車両には当然誰も乗車せず……それぞれインカムを所持し車両間のドライブがてらの会話を楽しむ方向で落ち着いた。
優しきSPのRX‐7へ舞姫と、狭い場所が落ち着くと
新参SP見習いのインテグラには、小さな当主とはんなり令嬢。
英国要人車両のBMWには英国令嬢と
そして……カスタムマシンチーム協力者のRX‐8には断罪天使。
一人悲しくマシンを駆るドンくさいSPは、そのまま優しきSPの車両を追う。
しかし——そこへ……音もなく忍び寄る因果の綻びは——着実に、日常を享受する幼き者達を脅かして行く。
その引き金が、あろう事か身内から引き絞られる事になろうとは——
そこにいる誰もが……想像だにしていなかったのだ。
∽∽∽∽∽∽
そこはカガワの都上空——小さな影が遠見の方術を使い、目標とする者を見定めていた。
纏う衣は既存の魔法少女が備える者とは程遠く——無理やり霊力操作で作り上げた強引さが伺えた。
古代日本の民や神族に見られる独特の衣へ霊力を纏う、その影がひとりごちる。
「やはりこれ以上降下する事は叶いませんか。この四都を囲む霊場の結界……想像以上の強固さ——ただ突き破る様な真似をすれば、この主の肉体が悲鳴を上げます。そう——」
「すでに死に体の主の身体は……決してこの霊場の結界を破れない。」
口走る言葉は、そこに関係する者が悲痛に苛まれてもおかしくは無い不穏を
四国を囲む霊的結界の地は、開祖弘法大師が長きに渡り巡った聖地であるが——それは
守護宗家に伝わる歴史書へ、異説として伝わっていた。
そしてその中でも最も強力とされた霊災【
だが十数年前——
世界を襲った
「この身が放てる力も限界があります。あなた方がこちらの思う……然るべき行動へ移った時——」
「私の計画を……開始する事としましょう。」
真昼の空が宵闇に歪み……望まざる不穏が撒き散らされる。
それは静かに——そして確実に……因果に抗う少女達を飲み込もうとしていた。
∽∽∽∽∽∽
確かにあの封絶鏡近隣に遊べる場所が無いのは分かりますが、そこへまんまと今後私達が経験するべきお役目の一端を——社会科見学の勢いで混ぜ込んだあのSPさんの手腕は、脱帽としか言い様がありませんでした。
けれどウチにとっては、大切な友人達との会話も掛け替えのない時間であるため——あえてそこへの苦言などは、必要ないと感じる今日この頃なのです。
「この辺も封絶鏡近隣と同じで、ホンマ遊べる場所がありまへんなぁ~~見事なまでの田園おす~~。」
「そうだね~~。御家のお役目の時に行く様な、山々に囲まれたってほどじゃ無いにしろ……平和だね~~。」
現在数カ所を回ったウチらは、残る別方向に位置する大型ショッピングモールへ向け——
北方向へは英国のBMWに、カスタムマシンチーム出向であるカズーさんのRX—8が向かい——そちらへは、アーエルちゃんを始めとした異国勢力組が乗り込みます。
インカムでアーエルちゃん組と連絡は取り合っていますが、せっかく再会しての離れ離れは少し寂しい訳で——
「ああ~~
「ちょっと
思わず寄り添ったウチへ、反論もそこそこに言葉を止めた
「当主様……
「「はーい。」」
インテグラ後部座席で寄り添ったウチらへ、微妙に嫉妬の炎を燃やすハルさんが……ぷくーと頰を膨らまして怒り顏——ウチらも少し場を弁えようと顔を見合わせ、目的地の方向を見据えます。
そう——
見据えた先の目的地……その時は分からなかったけど——そこで交渉を始めた私達は——
ついに——全ての因果の始まりへと足を踏み入れる事となったのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます