2話—2 綻びを憂う者
うどん次郎店向いの店舗駐車場。
今後のカガワの都滞在のため、別荘近隣における宗家守備隊配置——さらには、有事に必要となる然るべき場所……四国の西にあたる瀬戸の海上へ居を構える
ことカガワの都においては
幸いにも空路の拠点が瀬戸内に構えし
先の防衛大戦の折……宗家と深い縁を持つ防衛省長官にして【
「現状の封絶鏡であれば今すぐ事態が悪化する事も無いだろう——が、
「この地に於いては、普段の足以外での任務車両走行——弊害にしかならない可能性がある。」
「そうですよね~~。この地の幹線道路は、結界によって守られていた関係上昔ながらの街並みのまま——それは言い換えれば、古い時代の……それも
昔ながらの良きを残す風景であるが故……新しい時代のセキュリティには対応しない。
宗家が任務地へ即座に急行するため、任務車両を全速で運用出来る施策――人造魔生命の絡む災害対応である警報発令は、先の防衛対戦以前より国内へ浸透するも……それは大方人工密集地帯である大都市が中心である。
そこには
「では、
「相手が深淵であれば、各
「アロンダイト卿……支援志願、感謝します。」
刈り上げた茶髪を揺らす
その中でも陸路の緊急移動手段となる、任務車両を含むスポーツマシン勢を任務上のキーへと据え計画を絞り出す。
「ウチのチームは、当面お嬢様方の日常サポートを受け持ち……何かあれば、宗家の方に連絡。その上でお嬢様方をお守りする——って事を、リーダージェイへ伝えておけばええかな?」
「はい~~その方向でお願いします~~。……本当は私がそれを担当しなければならないのですけど——ひっ!?」
カスタムマシンチームの
支えの大人達一行が見やる視界の先に、数台の改造バイク達——奇抜な装飾は一行の任務車両からすれば特異であるがインパクトは絶大な様相。
それが今まさに、お昼を堪能せんとするお嬢様方のいるうどん屋へと入って行く。
が、さすがの支える者達——今しがたビクリ!と身体を強張らせたドンくさい美人はともかく、その改造バイクが吐き出す小鳥のさえずり如きで右往左往する者はいなかった。
「またですか~~!?カガワの都は、こう言う面で結構無法地帯で——ここに来る度アレに遭遇するんですよっ……!あうぅ~~早く居なくなってくれませんかね~~――」
大人であっても触れたくはない種の苦手が存在し—— 一般の営みを享受するものであれば、その騒音を撒き散らす輩はまさにピンポイント——
しかしながら、守護宗家が誇るSPとしてはその怯える姿……無様以外の何物でも無かった。
だが——
その直後に訪れるが一悶着が……ドンくさい美人にとっても一つの決断を下さねばならぬ事態となろうとは——まだSP
∽∽∽∽∽∽
「ちょ……
「そうだよ
「いや……アタシ、
「そう……なんですの?お姉様。」
二人の宗家関係者である魔法少女達は、彼女を深く知る者の思考で……事もあろうか輩へケンカを吹っかけた
対して——彼女の力無き姿しか知り得ぬ異国の少女達は、はんなりふんわりと認識していた少女のあるまじき表変に困惑を隠せない。
ただ一人……神族に属する
「お……お客さん!相手はまだ子供や……頼むからそんな大人気ない事は——」
「ああ……店主はんにはご迷惑をかけませんよって。ウチがちょいとこのアホウなお兄様方を懲らしめてきますよって——」
すでに出来上がった、温かいうどんを尻目に立ち上がった少女へ……醜悪な面を寄せる輩は――ついに、まだ中学にも達さぬ少女へ買い言葉を吐き捨てた。
「なんじゃコラ!オレにケンカ売るんか、このクソガキが!上等や表出たるわ……どつきまわしたる!」
「おらっ、来いや!兄貴に恥かかせんなやガキっ!」
戦慄の眼差しを浮かべ、誰一人仲裁に入る事叶わぬ街の常連客——少女を守りたくとも、皆足が竦んで動かない。
それをあざ笑うかの様に……店舗の引き戸ガラスを割れんばかりに開け放った輩どもが、少女を追う様に外へと出て行き——
しかし直後——そこにいる誰もが想定しない事態が巻き起こる。
「——あれ?なんや静かになったね。ウチちょっとみてくるわ!」
「はぁ……世話の焼けるお嬢様だし。店主さん……アタシらにここは任せてくれ。アセリアはここで待ってるし。」
「ええ、お姉様。お任せします。」
「大丈夫かな……無茶してないかな、
少しの間を置き静かになった外が気にかかり……おおよそ戦力となり得る少女達が、やれやれ立ち上がると——ガラス戸を開きはんなりガチギレ令嬢の支援へと向かった——
が……皆がそこで見た物は——
「す、すびばせんでしたっっ!もう二度とこんな真似はせえへんので……どうか、どうか勘弁をっっ……!」
「ああ……分かってくれたらええんおす。お店にご迷惑がかかるし……せっかくの美味しいおうどんや——もっと味わう様に食べて貰いたいんえ?」
「ええおすか?今後お店にご迷惑がかかる行為を働こうもんなら、東都心からお兄様方が……それはもうあんさんらが、束になっても勝てへん大部隊を寄越しますよって。肝に銘じておきなはれや?」
「は、はいっ!申し訳ありませんでしたっ……姐さんっっ!」
一触即発を想定した
今しがたケンカを売られ、巻き舌のまま意気揚々と表へ出向いたDQNの輩達——それがまさかのはんなり少女へ土下座で頭を擦り付ける始末。
極め付けは、初等部少女に向けて輩が放ったのは罵詈雑言ではなく……「
「——つか、初等部児童に
「……これ、
「したかも知れへんなぁ……。大丈夫かいな。」
一人と二人の意見が分かれて溢れる。
断罪天使の言葉は詳細を知り得ぬ者の言葉……
その彼女達の眼前で先程の勢いが抜け切った輩達を、手を腰に据え仁王立つはんなり令嬢が店内へと即す。
「ほらあんさんら、さっきかけうどん注文しとりましたえ?もう店主さんが出来立てを用意してくれる頃やさかい、ちゃんと味わって食しなはれ。……あと、お客様にご迷惑——かけたらあかんえ?」
コクコク激しく首肯した輩達は、先の罵詈雑言が嘘の様な大人しい態度でうどんを受け取り……水を打った様な静かさのまま食事を開始し——その姿に度肝を抜かれた店主と常連客が、唖然と口を開け放つ。
「おい、
あまりの珍事態に、さしもの断罪天使が問い質そうとした時——向かいの店舗より早足で道路を渡る影が、天使を遮る様にはんなり令嬢の前へ立ち塞がった。
しかしその表情は、ドンくさいと呼ばれているのが無かったかの様な面持ちで——
「あっ……
はんなり令嬢が珍しく
軽い炸裂音が……はんなり令嬢の頰を——引っ叩いた。
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