1話ー3 龍神封絶鏡の舞姫
ひとまずは安心を覚えますが、これからしばらくはこの
爺様に付き従い歩みを進めていたウチを見つけた二つの影が、離れた高台方向からパタパタと駆け寄り――
「ああっ……
「うん!久しぶりおす、
「
「こらっ!サクヤちゃん、抜け駆けするとは~~ウチもやっ!」
「むぅ~~!?」
お世話になる方——年恰好は
再会そうそうダブルダイブでウチを揉みくちゃにするのは、
そう……薄桃色の御髪が舞う彼女も、守護宗家が擁する魔法少女——
と言いますか——
「う~~むぐぐぅ~~……って!?苦しいわっ、アホーーーーっ!!」
「うぴゃーーーっっ!?」
「しゅーーーーっっ!?」
揉みくちゃが呼吸さえも妨害し始め、さしものウチも堪忍袋の起爆装置が盛大にオンし——ガバッと両手で二人を引き剥がします。
何が苦しいって……その——正直ウチの友人達の中でも稀なほど、隆々と実った二つの双丘。
羨ましくもケシカラン、その背格好にはあるまじき二房×二の実りが……ダブルダイブの度にウチの呼吸を阻害するのです。
——ええ、どうせウチはツルペタです……(涙)
「会う度に毎度毎度、あんたらはウチを窒息させる気おすか!?少しはその羨ましい実りをウチにお裾分けしておくれやすっ!」
「堪忍、堪忍や——って……サラッと今、願望漏らしたな?
「……漏らしたっしゅ☆」
「サクヤちゃんのそれは、ウチがもよおしたみたいな表現やから堪忍しまへん……——」
「しゅーーっ!?ギブっ、ギブっしゅ!?」
騒がしい事この上ない二人とのやり取りは、もう随分久しぶりで——これがあの、地球と魔界防衛作戦後の日常と考えると……シュールな事この上ない風景。
それでもテセラちゃんを始めとした、世界に名を馳せる魔法少女が招来した一つの未来。
ウチはその掛け替えのない日常を、皆のお陰で生きていると実感してしまいます。
まぁそれはそれとして、今人がもよおしたみたいな発言を放ったサクヤちゃんのコメカミを……一
「……ほんまに二人は相変わらずおすな。久しぶり……そして今までこの地を守護してくれて、おおきにな?
封印の守護と言うお役目上……その地から動く事叶わぬ立場故——先の防衛大戦でもこちらに援軍を申し出る事は叶いませんでした。
万一この地の守りを手薄にしたならば、あの導師ギュアネスが深淵に堕ちた際——封絶鏡の結界が破れ……取り返しのつかぬ事態へ発展していたと思います。
確かに二人の少々騒がしい歓迎には頭を悩ませましたが……それはこの地を離れる事叶わぬ二人とってのささやかな喜びと知っているからこそ——ウチも大きく咎める事なんて出来ないのです。
「なんや
「しゅ……。
暖かで久しい二人の困り顔——その意図をウチは一番よく知っています。
二人とて厳しいお役目の最中——
それでも会う度にウチを心から持て成してくれるのは——ウチには本当の家族が居ない事を知り得ているから……。
その血を分けた、親愛なるお父様とお母様が……遠く宇宙へと追放された事を知り得ているから——
だから二人の想いをしかと心に刻み……ウチはウチ——今
「
「は~い、爺様!さあ……
「あ~~!なんか私、置いてけぼりです~~!」
「しゅ?
「ひ!?酷いよサクヤちゃん!居たから……ずっと居たから!(涙)」
「もう……ええから、早よ行きなはれ
「お……お嬢様~~!?(涙)」
防衛戦から少しだけ離れ離れの私の素敵なお友達。
皆それぞれが為すべき事に挑む中……少しだけ寂しさが浮かんでいたウチは——
再会した素敵な別口な仲間のお陰で、再び前を向く力を得る事が出来たのです。
∽∽∽∽∽∽
二つに分断された列島——その海上を走る
二台が先行し……後方へ複数の隊列を組む一団がひた走る。
その先頭を行くのは——
純白のボディに赤きエンブレムを翳す、宗家の任務専用車両——前輪駆動を後輪駆動仕様へと改造したマシン。
続く一台は流れる流線型が戦闘機を彷彿させる、リトラクタブルライトの日本が生んだ生粋のスポーツカー。
先頭のマシンをインテグラ TYPE R……後続のマシンをRX−7 SPIRIT Rと呼称する。
「当主様、間も無く関西圏に入ります。……って、うわぁ凄いですね~。私この辺りに出張る事も無かったので——」
「凄いでしょ?この、幾重にもハイウェイが重なって海と陸を繋ぐ姿——これは
「……ほぇ~、【
分断された陸地を繋ぐ無数の糸の様に伸びる高架橋——今も残る島々となった地における重要なライフラインが、アートの様に海洋上に
見習いSPの駆る
と、その睦まじい会話をインカム越しに聞かされ……不機嫌をここぞと叩きつける少女が、後続の
『あ~~いいなそっちは……つかアタシ、
『申し訳ありません、アーエルお嬢様。なにぶん貴女の会話領分などを把握しきれておりませんので……。』
『なっ?ずっとこんな感じだし……。アタシもそっちがいい……変わりたいし~~。』
「……アーエルちゃん、何気にそれ酷いから(汗)
後続車両から響く不満タラタラ感を全面に押し出した声の主——ヴァチカンが誇る最強の称号【
この一団は三神守護宗家を代表する
先行する二台のスポーツマシンへ搭乗するのは、この世界における希望であり——先の地球と魔界に訪れた危機を救った、地球側の最大戦力の一角。
討滅の魔法少女
『ごめんなさい、お姉様……私がそちらに搭乗出来ず——』
『いや!?つか、アセリアは悪くないし!?そっちはそっちの都合ってもんが——』
『私からも謝罪を述べさえて貰います、アムリエルお嬢様。大変……申し訳——』
『っておい!?シャルージェさんまで謝らくても……!?——ああ、分かったし!こっちで我慢するし!悪かったよ、
「……ああ……アーエルちゃんてば——アセリアさん達には弱いんだね~~。」
『うっ……うっさいし!』
後方へ繋がる一団に紛れるは、英国機関より協力を申し出た少女——【
宗家専用車両に紛れた英国機関車両にて、現代の日本と世界の状況の推移を観測中である。
観測の対象となる物——
それは今世界中の数多の場所で活動を始めた歴史上最悪の霊災——【
「まあまあアーエルお嬢様、カガワの都に着けば一度は皆合流するんですから。……それにあちらには
「しーっ!ハルさん……そこは内緒だって——」
「あっ!?って、アーエルお嬢様!?今のはナシで——」
『つか——まる聞こえだし……。いいよ、内緒って事で。』
「ううぅ~~すみませ~~ん……。」
ハイウェイをひた走る一団は、一路四国はカガワの都へ——その中でインカム越しにやり取りする親しき者たちは、ささやかな日常を醸し出す会話に終始する。
しかし皆……その心へ同じ意思を秘めてそこに居る。
これ以降に訪れる、大いなる厄災へ向けた万事を
そして……その厄災との戦いの火蓋が切って落とされる場所こそが、向かう先——封印の地……カガワの都である事を——
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