ギャルの魔法効果付与《エンチャント》、本領発揮!
「すごいです、遙香さんは。エンチャントって難しいんですよ。なのに、ぬいぐるみとはいえあんなに安定させて。普通は、付与効果の調整を間違えて暴発するんですよ」
マイが、遙香のエンチャント技術を絶賛した。
そんなに困難な技術だとは思わなかったのだが。
だが、心当たりはあった。
ドーラにバフ魔法をかけてもらったとき、自分の意識を通り越して戦ってしまったのだ。
「遙香さん、ここはひとつ、エンチャント屋さんというのはどうでしょう? 魔力付与を代行するんです。それなら、『デコ』っていうんですか? つまり、皆さんの生まれ故郷に存在する装飾技術に、意味が生まれますよ」
装備品には、魔力付与されていないものが多い。
最初は無強化で買って、後で自分の技能に合わせて能力を付け足すそうな。
「レベルの高い魔法使いだって、他人相手のエンチャントだと大抵失敗するんですよ。ドーラ婆でさえ、調整が利かないくらいですから」
アイデアとしては、面白い。
「いいじゃん。ファンタジーっぽい職業で」
チョ子もノリノリだ。
よって、ネイルアート及び、デコによるエンチャント屋さんに決定した。
さっそく看板を書き直し、エンチャントもできるとアピールする。
だが、問題はもう一つ。
「肝心のデコだけど、グルーの調達先は?」
この世界には、デコに必要なグルー、つまり接着剤がない。
開発されているのかも謎である。
どうやってデコレーションすべきか。
「身につけるものだから、できれば無害な方がいいよね。だけど、そんな都合よく、デザインの邪魔にならず、耐久性も高いグルーなんて、簡単に手に入らないよねぇ」
腕を組んで、チョ子は考え込んだ。
手元のビスケットに手を伸ばす。
「あら?」
遙香は、そのビスケットに目を奪われる。
厳密に言えば、ビスケットに挟まれた透明な液体に。
「このクッキーはあなたの手作り?」
「祖母に作り方を教わったんです。間にメイプルを塗ってサンドするだけですから、簡単ですよ」
遙香の頭上に、デザインの神様が降りてきた。
「見つかったわ。グルーに使えそうな、とっておきの素材が!」
遙香は、一目散に店を飛び出す。
向かったのは、ロゼットの宿屋。
カウンターにあった品物を、一部買い取った。
店に戻り、チョ子に見せる。
「それ、アメ玉じゃん」
「そうよ。メープルは樹脂。グルーも素材は樹脂よ。アメのように溶かせば、グルーになる。もったいないと思うなら、糖分だけ抜き出せばいい」
遙香の手を、チョ子は両手で大事そうに包む。
腕を広げて、遙香を抱き寄せた。
「ありがとうハッカ。もし、ハッカが男の人だったら、ウチ、ベロチューしてたよ」
「や、やめてよチョ子」
これで、グルーの問題もなくなった。
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