ギャル、ゴブリンと対決! 

 妖精王の世界が消え去り、魔の前に広がったのは、平原だ。

 所々、カエデが密集している。


「え、何こいつら?」


 遙香たちは、怪物達に囲まれた。

 

 小鬼、いわゆるゴブリンという種族か。

 

 いきなりチュートリアルからスタートとは。

 妖精王め、味な真似を。


「武器持ってるじゃん!」

「どうやら巣の中に飛び込んでしまったみたいね」


 ゴブリンが棍棒を振り上げて襲いかかってきた。



~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~



 で、冒頭のシーンに戻る。


「そうよ! こっちにだって、武器はあるんだから!」


 遙香は剣を掴む。

 青白く光る刃が、柄の先から伸びる。


「あんたも銃を構えるの!」


「こう?」と、チョ子が銃を取った。「やっつけていいの?」


「構わないわ。交渉なんて通じないでしょ」

 遠慮なく、遙香は剣を横に振る。


 剣の先から、カマイタチのような衝撃波が放たれた。


 一瞬で、ゴブリン達が胴体と下半身に別れる。

 直後、黒い炭となって消滅した。

 

 遙香は、あまりの強さに舌を巻く。

 こんな力が備わっていたとは。


「うわ、すごい」


「感想はいいから、あんたも戦いなさい!」


「そっか」と、チョ子が引き金を引く。

 橙色の銃弾が放出され、ゴブリンの眉間を打ち抜いた。


「いきなりヘッドショットって。どこで銃を習ってたの?」


 ハワイで銃を撃てるというが、チョ子が海外旅行をしたなんて聞いたことがない。


「いや、戦い方を銃が教えてくれた感じ?」


 チョ子もか。


 実は、遙香もだった。

 武器の方が、戦う術を頭に直接指示してくる。

 自分はただ、武器を振るうだけでいい。

 

 ゴブリンの魔法使いが、指から火の矢を射ってきた。

 

 冷静に、遙香はシールドを展開した。

 魔法の矢は、半透明の盾によって弾かれる。


「お返しよ!」

 また剣から衝撃波を放ち、魔法使いゴブリンを両断する。


 チョ子に背中を預け、遙香もチョ子の背中を守る形で、ゴブリンの集団を撃退していく。


「ハッカ、キリがないんですけど?」


 半時間ほどが経ったが、ゴブリンの数は増える一方だ。


「ひょっとして無限湧き?」


 最悪の事態を想像した。ゴブリン相手に死ぬなんて。

 危険は皆無だったのでは?


「あの模様から、ウジャウジャ出てくるみたい!」


 壊れた砦の壁に、巨大な魔方陣が。

 そこからゴブリンの群れが召還されている。


「なんか、武器とかない? 爆発するのがいいんだけど」と、チョ子に催促する。

 

 遙香であれだけのことができたのだ。

 チョ子にだってとっておきのスキルがあるはずだ。

 

 チョ子がダイフグでアイテム欄を開き、手持ちの武器を探す。

「武器武器っと、グレネードってなに?」


「それが爆弾! あの壁に向かって投下して」


「おっけー!」

 チョ子が、銃を片方しまい、手をかざした。

 エネルギーの塊が、チョ子の手に集まる。


「な、なにこれ? ヤバイ! 熱いんだけど?」


「それを向こうに投げればいいの! アッツアツのをぶちかましてやりなさい!」


 チョ子は魔方陣に向かって放り投げた。


 相当危険な力であるらしく、ゴブリンたちは掴むことすら躊躇している。


 魔方陣にボムが着弾し爆発した。

 砦を、回りにいる魔物ごと破壊する。


「一丁上がりってカンジ?」と、チョ子が銃をホルスターにしまう。


 敵の気配が消えたのを確認して、遙香も剣を収めた。

 疲労はない。

 だが、精神的な緊張がまだ残っている。

 どこかで一休みできれば。

 

 いきなり、チョ子が山の方を向いた。

 目を閉じて、何かの匂いを嗅ぐ。


「向こうにいい匂いがする。魚かな?」

「あんたって人は……」


 地獄耳は聞いたことがある。地獄鼻とは。


 ブルブル、とダイフグが震え出す。


「え、なに? ウ○コ?」

 デリカシーの欠如した発言を、チョ子がする。


「ちゃいます。着信ですわ」

 遙香やチョ子の肩にまで登って、ダイフグがひとりでに会話モードへ。


「もしもし?」


『あ、妖精王だけど?』

 妖精王からだ。

『あんたらから通話は無理だけど、こっちから通話は可能なんよ』


「分かったわ。それで、用件は何かしら?」


『スキルの説明をしようと思って。チョ子ちゃんがさ、トリセツ見てないようだからさ』


 ダークハンターは、探知機能がある。

 食事の匂いなどを探るのもその力だ。

 宝の気配、強いモンスターが放つ殺気や息づかい、自分以外の人なども探し当てる。


 妖精王からスキルの説明を受けて、通話を切った。

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