第3話 いまは黄泉の国にいるともだちに
3 いまは黄泉の国にいるともだちに
ことしも葉桜の季節になった
花をみずに葉をみにくるーー
花が咲くころは華やかすぎる
人ごみのなかで花など見上げ
たのしいなんておかしなこと
いつもきみたちと座っていた
千手山公園のてっ辺のベンチ
ここから故郷の街を見下して
青春のゆめをかたりあったね
政治家に なりたかったきみ
お金もちになりたかったきみ
女の子にモテタクテいたきみ
演劇にうちこみたかったきみ
絵かきに なりたかったきみ
小学校で教鞭をとりたかった
成功したもの挫折したものも
いまはみんな泉下のひとだね
さびしいよさびしいよ
桜の葉をみあげながら
いまぼくは言の葉をつむいでいる
いつになっても小説が完成しない
いちばんひ弱なぼくが長生きして
こうして 言の葉を茂らせている
不公平だよな
過ぎ 去った
とおい盛夏のアブラゼミの鳴き声
でも でもいますこし猶予をくれ
ぼくらの生きた
ぼくらの青春を
書きとめるまで
いますこしそこでまっていてくれ
そのうち酒を携え会いにいくから
あいにいくから
あいにいくから
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます