狂人の独り言
綿麻きぬ
紙
最初に断りを入れておきますと私は狂人です。頭の狂った人です。頭のネジが外れてしまった人です。
なので私の言うことを、狂人の言うことを、鵜呑みにしないでください。鵜呑みにしたらあなたはきっと後悔するでしょう。
でも聞いて欲しいのです。私の虚言を、戯言を、精一杯の悲鳴を、叫びを。
今から狂ったことを言います。それは人としてありえないし、あってはならない感情と教えられてきた感情です。(ただ、私は誰もが持っていると考えています)
それは殺したいのです、人を。
これを聞いてあなたは私のことが狂っていると思うでしょう。狂っていると思っていない人は私と同類の狂人でしょう。
私が殺したいのは動物ではないのです。猫ではありません、犬でもありません、鳥でもありません、人なのです。
私が殺したい人間は私を見下してきます。あの冷めた眼差しで、声音で、私を見下してきます。
私が何かを言えばそれに対して一瞥し、反応をしません。肩がぶっかってしまい謝ると無視をします。
これはきっと私の被害妄想なのでしょう。ですが、私は耐えられません。私に対する侮蔑を私は見過ごせないのです。
ですが、そいつらに気に入られようと私は媚びへつらうのです。そして、私は色々な方法で色々な"もの"を殺すのです。何を殺したのかもう殺しすぎて分かりません。
話は変わるのですが、私は狂人なのでお薬を飲んでいます。狂った頭を正常にするためのお薬です。
ですが、飲みたくないのです。この人を殺したいこの気持ちを失いたくないのです。
この気持ちさへ殺してしまったら、最後に私には何が残るのでしょう?
何も残らないと思っているのです。あぁ、哀れなことに!
それを殺せば私は普通の人に、狂人ではない人に戻れるかもというのに!
ですがね、私は狂人であるが故に狂人ではないのです。最後に人を殺すのを踏み留まっていたのだから。
ただ、それを踏み留まっているため私は最初で最後の殺人をこれから犯すのだ。
そんな紙が死体の横に置いてあった。その字は死んだ本人のものと確認された。
ただその紙の存在は、言葉は、誰にも届かない。
狂人の独り言 綿麻きぬ @wataasa_kinu
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