本編 第6話 予定
約束の刻限が訪れた。
夜も更けた頃。エスメラルダは「カクレンボ」勝負の始まる予定の場所へ赴いた。
外出は禁止されていたが、鍵を持っていたので廊下に出る事ができた。
エスメラルダは約束の場所で待ちぼうけを食らっていた。
すると、遠くの方から何かを口口に話しながら、人々のまばらな足音が廊下を打つ音が聞こえた。エスメラルダは近くにあったロッカールームの中へと隠れた。
部屋に明かりがついて、各々が席に着く。
その中にはマークやジェイコブもいた。
話し合いが始まった。
「連続誘拐から連れ戻した子供について」意見交換会。
エスメラルダの前で、「かうんせりんぐ」の相手だった精神科医が悪しざまにエスメラルダの事を報告していた。彼女はロッカーの中で怒りに震える体を押さえつけるように、耐えていた。ジェイコブやマークは反論して、エスメラルダの肩を持ったが、やはり、ある見解では一致していた。
「彼女は普通じゃない」
鉄の扉を隔てた先で、大人たちがエスメラルダの思い出の故郷について話し合っていた。そんなものは漫画の世界の話で、存在しえない。彼女は嘘ばかりついている。
信用に足らない。
ジェイコブは、現世と隔離された場所に生きていたのだから仕方がないと。
どちらの言い分もエスメラルダを傷つけた。
それは、エスメラルダの大事な思い出が否定され、踏みにじられていく過程だった。
思わず、エスメラルダは場に飛び出してしまった。
涙が止まらなかった。
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