本編 第5話 予定

 何度か続いたエスメラルダへの「めんだん」「かうんせりんぐ」という儀式は彼女を苦しめていた。その中で、自分は否定されこそしないが、何かが間違っている、という言葉とは別の圧力が彼女の脳を圧迫するように感じられた。


 地獄から出たエスメラルダは、途中の休憩室で、仲が良くなった男の子と話していた。男の子はエスメラルダを馬鹿にしていたが、エスメラルダは自分が姉のような立場で彼に接していた。

 二人が話し込んでいると、部屋の隅に怖い顔をした茶色のジャケット、ジーンズの男がパンを食べていた。目がエスメラルダを見ている。

 エスメラルダは彼が、カーリンから助けてくれたFBIの男だという事を覚えていた。エスメラルダがお礼を言うと、FBIの男は笑顔を作って「どういたしまして」と答えた。男は強いな、と何気に口にしたが、エスメラルダには何のことかわからない。


 男の子もFBIの男になついていた。

 FBIの男の名前が「マーク」だと知る。

 マークは「このお姉さんも、お前と同じだよ」というと、男の子の目つきが変わった。「最後まで闘っていたんだ。危ない所で俺が現れたわけだ、約束しただろう、FBI(俺たち)がいるから心配はいらないって」

 男の子の顔つきが変わる。神妙な面持ちにエスメラルダも思わず構えるが、何事もなかった。マークはジェイコブを待たせているので休憩室を出た。

 男の子はマークがいなくなるのを見て「悪魔と戦ったのか?」と聞いた。

 エスメラルダが頷くと、男の子は彼女に勝負を申し出た。

「カクレンボ」だった。小さな男の子が考えそうな事だと可愛く思えたが

 男の子の顔つきは真剣そのもの。


 エスメラルダは「カクレンボ」の勝負を受ける事にした。

 何か事情があると思ったからだ。

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