本編 第4話 予定

 エスメラルダは色々と話を聞かれた。

 彼女は正直に答えて、白服の男は笑顔で受けた。

 その笑顔には含みが感じられ、心の底から出た感情が作る表情ではない事がわかる。


 なんとなく苦痛に感じた話合いが終わった。


 部屋に戻ると土色の肌が光る、小太りの男が茶色の箱を抱えて部屋の隅に下ろしているところだった。男はジェイコブと名乗り、FBIの心理捜査官だ、と告げた。

 エスメラルダの顔に笑みが広がる。FBIにネイサン救出のお願いをしようと考えていたからだ。エスメラルダがジェイコブに話をしようとしたが、急な電話が入り、外出する事になった。

 ジェイコブはエスメラルダにセッティングしたDVD機器とモニターの使い方を教えて、「映画」を見て退屈を紛らわせてほしいといった。

 エスメラルダは興味深々で、リモコンのにおいを嗅いだり、モニターをなでたりしていたが、ジェイコブが簡単な説明を加えて操作して見せると、彼女は一瞬で黒い四方形の中に現れた「もう一つの世界」に心を奪われた。


 ジェイコブは部屋を出て、エスメラルダの印象を電話の相手に簡単に伝えた。

 純粋無垢で、危険はないようだが、テレビやDVDへの見方が特殊で、初めて見るようだった、別の世界に生きていたように思える、例えばモンゴルの草原に住んでいたとか(モンゴルでも文明の利器はあるし、その存在も知っているがジェイコブの主観)、どこかの部族にいたとか、アメリカではありえない。

 「新興宗教団体」の世界にいたとか、いくつか、彼女の印象を上げる。


 連れ去られた子供が生還したのかもしれない。と最後に付け加えた。

 ジェイコブは電話を切って、病院を出る。

 廊下で、エスメラルダ担当の主治医と精神科医に出会った。

 精神科医の話を聞くと、エスメラルダは精神を病んだ危険人物の可能性がある、とジェイコブに告げるのだった。彼の見立てとは真逆で、「これは、この先折り合いの面で難儀しそうだ」と心の中でつぶやき、スマイルを作り、別れた。


 ジェイコブは相棒の元へ車を走らせた。


 エスメラルダは映画で、「神の世界」も大変だなぁと映画の世界にのめりこんでいた。それが現実のものであるかのように。

 最後は必ず、勝利するハリウッド映画の数数は、エスメラルダの希望を煽った。

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