メール

2019/09/04 00:33

To :

From: 

 午前00:25分に俺のオフィスに電話が入った。FBIではなく神様宛のメッセージだったが、緊迫した女の声が「助けて」と何度も叫んでいた。マイクに密着して叫んでいたので、耳が痛かった。その後、誰かに取られたらしく、男と揉める声を聞いた。その後電源が切れたが、情報分析課がMACアドレスと各電波塔からの通信経路を調べ、位置を割り出した。

 十分後、現場で一人の少女を発見、保護した。

 他、二人の男がいたが俺達が車を降りる頃には背中を向けていた。

少女の側に落ちていたスマートフォンに男が何人かの女と性交した写真が保存されてあるのを確認した。保護した少女は映っていない。

 事件性があり、逃げた二人を犯人だと断定。FBIの捜査員三名が後を追ったが帰ってきたのは一人だけだった。とにかく、支局まで来てくれないか、マイク。実績ある心理分析官の助けが必要だ。


彼の証言や情報を簡単にまとめた。後で正式な報告書として支局に提出するが先に目を通しておいてほしい。


------報告(仮)-------

FBIは赤い霧事件の捜索リストの対象でない少女を保護した。

現場のスマートフォンを確認、犯罪性有りだと断定し逃げた男性二名を追った。

逃げ込んだ小屋に捜査員三名が銃を構えた。

警告をしたが、従わず抵抗の意志を見せたために(鉈が飛んできた)発砲。沈黙した。

しばらく経過したのち、捜査員二名が小屋の中を注意深く調べに入った。

 辺りに赤い煙が立ちこめ、やがて周囲を覆った。馬のいななきと遠方に去っていく馬の足音を聞いた。

 無線の呼びかけにも応じないので、残った捜査員は急いで小屋に向かったが誰もいなかった。

 FBIの捜査員二名を『赤い霧事件』の行方不明者リストに加えた。

 少女を襲った二名が関係していると断定。顔はスマートフォンの写真に映っている。手配書を作りFBIと警察で情報共有を行う。マスコミや市民への情報はまだ伏せておく。

 現在、FBIとサンエスペランサ警察がスマートフォンを含む銃などの押収物の調査と現場検証を行っている。

 

 保護した少女の名前はエスメラルダ。

 彼女の負傷は酷く、病院に運び込んだが体が異常に冷えていて凍傷の可能性もあるそうだ。車内で話も聞いたが話の内容が理解できなかった。

 長い監禁状態化での洗脳の可能性もある。

 衣服も中世ヨーロッパを舞台にした連続ドラマで見るような皮のコートだ。心のケアをしながら、彼女から詳しい話を聞き出さねばならない。

 エスメラルダの回復までには時間がかかる。回復次第、聞き込みを行う。

-----------------------------------------------------------

 マイク、君を交えてプランを練りたい。

 彼女は二人目の赤い霧事件の生還者だ。まずは彼女の心を大事にしたい。君の力が必要だ。準備ができたら知らせてくれ、チケットの手配はすぐにできる。


2019/09/04 01:51

○名前

○両親・出身・家

○友達・学校

○何をならった?

○街の名前は?

○どんな暮らしを?

○街にはどんな仕事がある?

○お父さんは何の仕事をしている?

○何か悩んでいる事は? 我々にできる事を。


---------------------------------------------------

○何故、追いかけられていた?

○あの二人は何者?

○銃について


---------------------------------------------

「ご両親や出身、家庭生活の事を聞かせてほしい

「父が一人。交易隊の隊長をしていて、余所の街と交易して様々な物資を持ち帰ってきます。家庭は。父はよく外

 出身はウッドロッドの街。   ヘクタールの土地に

「アメリカのウッドロッド・・・・・・そんな地名あったかな」

「アメリカって物語の中の架空の国じゃないんですか?」

 マイクは自然と零れ出たエスメラルダの言葉に絶句した。

「アメリカとは君と私のいるこの場所を含む、大きな国の事だ。

 地図が手元にないのが残念だな。地図は見たことがある?」

「勿論。でも、私の街と交易している街までの経路が書いてある地図だから、この世界のものとは違うかも」

「この世界か・・・・・・」

 少女は自身が異国の人間だと思いこんでいる。

「君はこの世界の人間と同じ言語を話しているね。訛もない」

「そういえば」

 簡単な性格診断や記述のテストを行ったが、綺麗な筆跡のブロック体だっで書いていた。最低限の教育は受けている。

「どんな暮らしを?」

「私は石窯でパンを焼いて、それを街で売っていました

 毎日、日が暮れるまで。お休みの日は友達を遊びに出かけたり、本を読んだり」

「具体的には何時ぐらい?」

「何時・・・・・・とは?」

「では、おすすめの本を教えてくれないか? 今度買って読んでみるよ」

「オズの魔法使い、ゴールデンボーイ、千一夜物語とか」

「ふむ、千一夜物語以外は読んだことがあるな」

「この世界にも本はあるんですね!!」

 マイクは穏やかに微笑み頷いた。事件の内容とは大きくそれている内容でもない。彼女の視線を通して彼女が生きてきた人生を想像してみた。

 根本的に何かが違っているが、共通している物もある。

 神経衰弱や何かの精神病の類にも該当しないと思ったが、後で詳しく分析しないと決断を下すのはまだ早い。マイクは一緒にいた二人の男の話も詳しく聞きたかったが、回収したスマートフォンのデータ分析後の資料を読んでいたので、それを聞くタイミングを掴みかねていた。まだ早いか。

「好きな食べ物の話を・・・・・・」

「マイクさん。そんな話をしたいんじゃないんでしょう?」

「私、話すよ。二人に追われていた事。友達二人と逃げていた事」

「ありがとう。だが、その話を聞く前に君が持っていたベレッタの話を聞きたい。あれは誰からもらった?」

「父から」


「君のお父さんはこんな人だったかな?」

 マイクは写真を一枚取り出し、エスメラルダに差し出した。

「あっ・・・・・・」

「お父さん・・・・・・なんだね?」

「はい」

「彼はこっちの世界で活躍していた人間だよ」




--------(サブテクスト)------------------------------

オーパーツとして本や銃などの近代文化物はエスメラルダも

なじんでいるが、一部、知らないものもある

たとえば電気で動くスマートフォンなどは知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る