第46話マキちゃんとの思い出
ああ、なんだろうな。
もう、ちっぽけだったオレじゃないのに。
ゆらゆら揺れる思い出の中じゃ、オレはいつも独りぼっちで。
家の中では年の離れたきょうだいたちには相手にされず、保育園ではどんな遊びにも仲間には加えてもらえず。
母親が、出張続きのときは最後まで時間を延長してもらって、園内のホールで一人で迎えを待っていた。
結局、絵本ばかり読んで過ごしたっけ。
だけど、不足はなかった。
不満もなかった。
本当だ。
マキちゃんが、一つ年上の幼馴染が、絵本や紙芝居を読んでくれた。
マキちゃんがいたから、オレは自分の孤独に気づかずに過ごした。
オレの世界には、マキちゃんがいる。
それだけで、幸せだった。
外遊びで転んだ時も、マキちゃんがいち早く気づいてくれて、保健室に連れて行ってくれた。
『男の子はそんなに泣いちゃだめなんだぞ?』
そんなふうに、オレの目をのぞきこんだ。
オレは、そのときからマキちゃんのくりくりっとした目が好きだ。
銀色がかって、蒼ざめてて、綺麗で。
そう言ったら、マキちゃんは言ったっけ。
『ケイゴ君の方が、きらきらした目をしてるよ』
って。
今になって思い出すと、それはきっとマキちゃんがいてくれたから。
だから、マキちゃんが紫乃宮の幼等部に編入すると聞いて、オレもそうした。
今まで言ったことのないわがままを、父母に許してもらい、テストもクリアした。
あの頃からだ。
マキちゃんがいると、オレは元気になれる。
姿を見るだけで、心が癒される。
マキちゃんが紫乃宮からいなくなって、初等部で嫌な目に遭っても、くじけなかった。
友達だと思っていたヤツから、誕生日会に招かれなかったと知ったときも、陰口の的になったときも、いつも助けてきてくれていたマキちゃんの思い出がオレを支えた。
だから、マキちゃんは、オレの……大切な人なんだ。
唯一の、人なんだ。
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