第23話どうしてこうなった!?

 翌日、真希奈さんは化粧をせずに出かけていった。

 帰ってきたときは、うっすらそばかすが鼻の上に浮かんでいた。

「どうしたの? 真希奈さん、どこへ行っていたの?」

 いちいちうるさくつきまといながらも、オレは昨夜の彼女の態度に疑念を抱かずにいられなかった。

「どうもしない。つまらないことでグチグチ言わないで!」

「え? 真希奈さん――?」

 乱暴にふり払われるように言われて、オレはしばし呆然とした。

 オレ、なんかヤッちゃったのか――?

 そのいち、夕べの会話が原因の場合――「おとうさま」の「御具合」を聞いたのがまずかった? なぜ? 「おとうさま」の「御具合」が思わしくない。それが考えられる。

 そのに、夕べの会話の時間帯が原因の場合――「真希奈さん」の「都合」が悪かった? なぜ? 「真希奈さん」が疲れていた、もしくは「おとうさま」の「御具合」について考えたくなかったか言いたくなかった、あるいは他のことを考えていたかった。

 そのさん、「真希奈さん」は「オレ」が邪魔? なぜ? 「真希奈さん」の秘密を知っているから?

 そのよん、ただ単に、話したくなる気分じゃなかったか――?

 どれだ!?

 いや、この中のどれかという話じゃないな。

 オレは、彼女にこんなふうに邪険にされるおぼえはない。

 だから、とまどいを隠せないし、原因が知りたい。

 もっと言えば――とある可能性について、考えたくない――つまり、彼女がオレを嫌っているのかどうか、についてだ。

 オレは、真希奈さんについては好意的に受け止めているし、オレに黙っていることがあるのも知っている。

 そのうえで、彼女の力になりたい――その準備を進めている。

 だから、肝心の彼女の気持ちがどこへ向いているのかを――確かめなくちゃいけない。

 オレは、おじける自分の心を鼓舞して、ひたすら彼女の顔色をうかがって、話しかけるタイミングを見計らっていた。

 そのとき、かすかなバイブレーションを感じ、畳んで置いてある敷布の上を見ると、枕といっしょくたになっていた端末機が光を点滅させていた。

 あれ? オレの手がそっちへ勝手にのびていく。

 いいのかな? よくないよくない。

 見ちゃえばいいんだ――そんなはずは……。

 オレは乾いてくる喉に、唾を飲みこみ、小型の画面を見た。

安生あそう柊真しゅうま? だれだ」

 少なくとも、真希奈さんにはこうしてメールを送ってくる相手がいたってことだ。

 オレの出る幕じゃなかったのか……。

 真希奈さんは、オレの手からそれを受け取ると打って変わって、華やいだ表情をした。

「あっ」

 と言って、こちらに背を向けてしまう。

 その後姿が、うれしそうで。

 オレは、一気に力が抜けるのを感じていた。

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