第20話あなたの笑顔が見たい

 オレはスナック「令嬢」にいた。

 年齢相応でないのはおいておいて、ここで近江真希奈さんも働いている。

 彼女は、接客をしない、九時には最低上がるという約束で。

 でも、約束は破られるためにあるようなもの。

 九時半を過ぎて、オレは階下へ降りたが、アイナさんはまだ客の相手をしていた。

 カウンターで「アイナちゃん、若いねえ。肌がぴちぴちしてるよ」なーんて、近所のジー様方に大人気だ。

 つきあってられねえ!

「アイナさん、もう寝ようよー」

 オレが外見年齢に合わせて、甘ったれた口調で言うと、ジー様がたがはしゃぐこと。

「アイナちゃん、もう寝よう。ゴン爺と寝よう!」

「いや、ここはくまっぺと寝よう!」

「あに言ってやがる、熊めが」

「鮫ゴンが、なにをかわい子ぶって!」

 ケンカだ。

 止めよう。

「もう、お二人とも、飲みすぎです!」

 アイナさんが言った。

 いや、飲み屋スナックなんだから、ありがたいお客さんなんだけどな。

「アイナちゃん、ごめんねえ、遅くなっちゃった。上がっていいわよ」

 ママがせかせかやってきた。

「お疲れさまです」

「きゃー、ママったら」

 ゴン爺たちが、またはしゃぐ。

 どうしてこんな時間までいるんだ?

 他に防護服を脱ぐ場所がないのか。

 いい年して……寂しいのかな。

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