第18話真希奈さんのために

 誰かのためになるようなことをしてあげたいとき、あるいは、力になってあげたいとき、本当にそれが相手にとって必要かどうか、誰にわかるのだろう?

 余計なお世話かもしれないし、超迷惑かもしれない。

 オレは冷たい風に吹かれながら、未だ逡巡していた。

 彼女が助けを求めないのに、どうやったら自然に助けられる?

 やはり、本人の口からきかないと、身動きが取れない。

 オレは――彼女の心に切りこんだ。

「ご両親は、お元気ですか?」

 ――入院してリハビリ中です。

 なんて言ってくれるわけないのは承知している。

「大学病院でリハビリ中よ。父がくも膜下出血で、後遺症がね……」

 オレは驚いた。

 まさか話してくれるなんて! 

 オレは眉間が寄るのを止められない。

「それは……大変でしたね」

「軽いしびれが残ったそうなの。母は……」

 情報によれば、家を一日中あけて、病院に詰めているそう。

「母は、介護で私をかまっていられないの」

 オレは、彼女の細い肩を抱いて、慰めたいと思ったが、気心の知れた仲でもないのに、それはおかしいと思った。

「一度、ご挨拶がしたいのですが。いや、変な意味でなく」

 すると、真希奈さんはうれしそうに、目で笑った。

「そうね、見舞いに行くから、一緒にくる?」

 きさくに言うものだから、なんだかピクニックにでも行くみたいだ。

 だけどオレは、彼女が暗い目をして視線をさまよわせたのを見逃さなかった。

「本当に、オレなんかが行ってもいいんですか?」

「もちろん、歓迎よ――変な言い方だけど」

 それでも彼女の瞳は光をうしなったままだった。

 どうしよう、とオレは思った。

 実行にうつすかうつすまいか。

 そもそも、うまくいくのかどうか。

 オレは、都市内のフェスティバルに参加しようとしていた。

 主催は、ロボット研究部で、テーマは「介護に必要な事」。

 最先端の介護ロボットがパレードをする。

 いや、介護する人が身につけるパワードスーツばかりではなく、要介護の人が身に着けて……なんというか、踊る。

 そこはまあ、お祭りだからな。

 もちろん、踊ると言っても、電動車いすが行進したり、右に左に交差したり。

 防寒もきっちりして、介助者も一緒に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る