第14話真希奈さんとの接点

「さてと、やるべきことをやりにいこう」

 スナック「令嬢」のすみれ色の看板が見える。

 この姿だろ? 他の猿がいたら、相当まずいから、裏口から。

「真希奈さーん、いらっしゃいますかー」

 しばらくして、ママが出てきた。

「おや、昨日のぼうや。また迷子?」

 くすくす笑っているが、ゴリラのままだ。

 あ、ここでは真希奈さんはアイナ嬢だった。

「あ、アイナさんいらっしゃいますか?」

 それだけが知りたいんだ。

「まだよ。それより、うちはお酒を出す場所だから、子供は来ちゃダメよ」

 うるさい。

 真希奈さんがいないなら、こんなところ、誰が来るもんか。

「アイナちゃんとは、外では話さない方がいいわよ」

 それどういう意味なのかな。

「てゆーか……アイナさんは、まだ未成年なんだから……いくら接待させないからって、十時以降は働かせちゃだめなんですよ」

「アイナちゃんは補導されちゃうかな」

「ママが摘発されるのが先じゃない?」

「こんな健全なスナックはないと思うわ」

 どうだか。

「とにかく、連絡が届き次第、返信欲しいって、言っておいて。おねがいします」

 まあ、オレは彼女の連絡先を一つだけしか知らないから――学校ね。

 ママ経由で、彼女とつながれるように姑息な手段に出た。

「ママ、ママのメアド教えて」

「私は……ぼうやならいいけれど。どうしたの?」

 時計を振り仰いでオレは訊いた。

「アイナさんは、いつ頃ご出勤ですか?」

「彼女がいいというまで、アイナちゃんの連絡先は教えないことになってる」

「ですから、ママが取り継いでくれればと」

「ちゃっかりや」

 シーリングファン。

 おっきな木製のプロペラが天井付近で所在なげだ。

 あれってなんのために、あんのかな。

 扇風機みたいだから、空気をかきまわしてるんだろう。

 あたりをつけてからスマホでググると、その通りだった。

「ぼうや、これ」

 ママとオレはメアドを交換した。

「ありがとう!」

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