第11話涙のセレナーデ

 数日前。

 髪を短くして学園に現れた真希奈さんは別人だった。

 うなじを隠すくらいのボブヘア―で、金髪。

 オレが、憧れた学園スターの見る影もない。

 長い黒髪がないだけで、周囲の見る目も変わった。

 ただ、人よりよほど恵まれた容姿をしているのは変わらなかった。

 オレは見ていた。

 いや、見ていることしかできなかった。

 変わってしまった真希奈さんを、その面影を。


 案の定、真希奈さんは学園中の噂になっていた。

 不思議なことに、教員は訳知り顔で、

「いいんだ、近江にかまうな」

 と言って、お咎めはなし。

 だが、オレは真希奈さんがサッカー部のエースともめているのを目撃してしまったのだ。

「そんな女とは、思わなかった!」

 真希奈さんは、黙っていた。

 時間帯は、昼休みに近かったと思う。

 水飲み場で、汗をぬぐう真希奈さんと、サッカー部のエースがつかみ合いをしていた。

「なんとか言えよ! クソビッチ!」

 ばしい! とオレがよくくらう張り手をくらって、サッカー部エースは黙った。

「あなたには、関係ない!」

 その一言には、びりびりと心を破かれる思いがした。

 傍から見ていても、そんな勢いというか、悲壮な響きがあった。

「なんだよ、クソビッチ! 心配してやったのに!」

 二度も、真希奈さんをクソビッチ呼ばわりした、サッカー部エースは去った。

 オレは、真希奈さんが密かに涙するのを、見ていたんだ――。

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