第7話ツッコミ不在
桜木圭吾の人生は、穴もあいてないし、ぼろにもなっていないが、今にも腐り落ちようとしているのであった。
怠惰ゆえに、自分を罰しようとして悩み怒(いか)るがゆえに。
だが、それも目の前の現状をはっきりと認識してしまったら、ちっぽけなことで。
果たして、彼は呆然としていた。
道行くもの、すべて猿、さる、サル。
霊長類なんだろうけど、別の生き物に見えた。
彼は植え込みに隠れたり、ごみ収集場のポリバケツをかぶってみたり、少しでも狭くて見つからないようなところを探してコソコソ逃げ回っていた。
猿たちは、別に襲ってきはしない。
あれらは、自分の見ている幻覚なのか。
オレは、確かめてみようと思った。
小石を投げる? ――あたらないかもしれない。
それにもし、あたったらあたったで、くいつかれるかもしれない。
じゃあ、反撃される前に、あの小さな頭をブロックで叩き潰すか。
いや、待て待て。
人間だったら、どうするんだよ。
間違いなく猿に見えるし、猿以外には絶対見えないし。
とにかく猿だ! ヤツらは猿になってしまった。
なぜだ。
進化したのか、退化したのか?
人間は体毛といい、尾といい、体つきやバランスといい、五感も神経系も退化してると聞く。
猿になったというなら、それは進化したということか?
服も着ないで、歩いているが?
毛があるから大丈夫か。
バストがブラブラしているが?
うんうん、猿だからオッケー。
胸の飾りにピアスみたいなもんも見えら。
知らない間に人類は猿に進化したようだ。
そう考えると、なんかめでたい。
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