第6話どーいうフラグだよ!

 まだ陽ざしがあったかかったり、風が冷たかったりするけれど、葉桜も終わったし、ウロコ雲と積乱雲が空で共演してるし、なにもかもが中途半端に自己主張をしている。

「……」

 え? 気のせい?

 今、悲鳴が聞こえたような。

 いや、校内だから落ち着いていられるけれど、なんか刃物もったおじさんが、乗り込んできたんじゃないかってほど。

 こわいから、このまま保健室で寝てよう。

 また悲鳴がする。

 どうしよう。

 ……寝てらんないぞ。

 白衣の先生が、内線にむかっていくのが見えた。

「ハイ、ハイ。そうですか」

「……先生?」

「ごめんなさい、行ってくるわ」

「あ、あの……!」

 え? 事件でもあったの!?

 思ったとたん、カーテンがゆれて、白い光がひらめくのが見えた。

 瞬間、ドラムカンをニ十個くらい、屋上から落っことしたような雷鳴がした。

「ひでえな!」

 オレは、窓際に立ってカーテンの隙間から空を眺めた。

 そうやって、光を透かし見ていると、世界が遠く感じた。

 実感が、一つもわかない奇妙な空虚感。

 先生が、いないせいだ、きっと。

 オレは、ひたすら心で独り言を言い続けるのも飽きたし、なんだかシャレにならない気持ちがして、教室に戻ることにした。


 だだだだだ。

 ふり返ったらダメだ。

 オレはとっさに身をかわして、今入った教室から廊下へ転がり出た。

「ヤベ! 本来の意味でヤベエ!」

 天井を真白な煙がモクモクと広がり、覆っていく。

 少し……吸っちまった。

 まずい。

 これは、まずい。

 何って、教室んなかにいたの、人間じゃなかったもん!

 ケダモノだったもん!

「ケダモノはいてもノケモノはいない~~」

 なんて、そいつら車座になって、ほくそ笑んでた!

 だぁら、オレは家に帰ります。

 他の奴らが、どうなったかなんて知らぬ存ぜぬ。

 だって、ゴリラみたいなけむくじゃらがいたんだよ? え? おっぱいがあった? そこは問題じゃない! ゴリラがいたんだ。

 地上最凶のモンスター!

 なにがあったんだ!?

 オレは、どうなっちまったんだ。

 新学期早々、不安要素しかねぇ――!

 一体どうなってるんだ!?

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