第4話保健室といったら、愚痴って寝るとこ

「苦しゅうない、みなのもの、ケイが合コンセッティングしてくれるぞー……」

「わ! バカ! そんなん、言ってねえ!」

「会費一人千五百円!」

「ちょ! おまえら!」

 言う間にざらざらと札と小銭が降り注ぐ。

 親の金だろ、やめとけって!

 あーあー!

 休み時間に入ったばかりの教室で、クズキがガタイを小さくして五百円玉を拾い集めてザルに入れている。

 ザル? どこから持ってきたんだ?

「クズキ、それどうしたの」

「科学部が、昨日あたり教室で実験やって、そんとき忘れていった」

「返しておけよ、それ」

「オーライ、オーライオーライ」

「まったく、オレをエサにすんなっつーの」

「ちがうね、ケイは最高の釣り針だね。ひっかかるほうが悪いんだよ」

 オレは、はっとして胸をつかれたが、言いたいことは言う。

 まっすぐクズキを見た。

「会費とってんじゃねーよ。オレ、やんねぇよ?」

「まあ、飴やるから」

「何言ってんだ、もぐ。ごまかされないぞ! もごもご!」

「喰うかしゃべるかどっちかにしろ」

 オレは、口の中でプチプチいう食感のソフトキャンディーをぐっと噛みしめ、そのまま飲みこんだ。

 セッティングなんて柄じゃない。数か月前まで中等部だったのに、どうしたっていうんだ、おまえら。

 ふあ!

 金がらみの話になるととても眠くなる。

 脳がとっさに拒否反応を起こすのだ。

 熱がじりじりと前頭葉を麻痺させていく。

 小脳が生命維持を手放そうとする。

 あー、こりゃ保健室行きだな。

「ケイ、どこいくよ」

「保健室のエンジェルに会いにいってくる」

「岸本センセーか。放課後には部室にこいよー?」

「オス……」

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