第2話恋などいらない

 しかし、これは弊害があるよな。

 うちの高等部、元男子校なのに、登校時刻に他校の女子とわかる恰好で校門前をうろつかれちゃ。

 そのうえ、その場で「つきあって」とか、神経を疑うっつーの!

「イ……おい、ケイ!」

 すまん。

 今の女への怒りで頭がいっぱいになっていた。

「オス! オギ(荻窪)、クズキ(葛城)、ハヨ!」

「大丈夫かよ、オマエ。ひっかかれちゃって、マア」

「いてっ。さわんな」

「あーあー。イタそー。バンドエイドもらってきてやろうか?」

「ケイの女性関係は自業自得っつーか、身から出た錆(さび)というか」

「俺は悪くない。言い寄ってくる女が悪い。一方的でさー。一度も関係したことないのに、オレは」

「……」

「ん?」

 クズキが、黙って背後を親指で示したので、ヤツの肩越しに見ると、まだ地中に埋められてない電柱の影に一人、さらにマンションの門柱に一人、二百メートル先の角に三人。

「少なくとも、あいつらはそうは思ってないようだ」

「またあ? ケイ、ケーサツ行ったほうがよくねえ?」

 オギが言った。

 うん、あれはもう、ストーカー予備軍というか、もはやホンモノだな。

「オレ、女子苦手なんだけど? なんでこうなるのかな。なぜだ!」

「ぼうやだからさ」

「欲しけりゃやるよ? どうせHできないっていうとひっぱたかれるんだ。それなりの誠意を見せれば、よろこんでやらせてくれるんじゃねーの?」

「心の友よ」

「何? 改まって」

「合コン、セッティングしてくれや」

「心の友ってそういう意味かよ」

「ほかにないだろ、オレとおまえと」

「黄身とボク」

「いくわよ、白身!」

 クズキはエアラケットで振りかぶった。

「お蝶夫人!」

 オレは身構えるふりをする。

 今朝は「エースをねらえ」ごっこらしい。

「仲がいいな、おまえら」

「オギも来いや! うりゃりゃ!」

 オレとクズキは、オギにヘッドロックをするマネをした。

 そういうことしちゃ、いけないんだけどね。

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