第3話 (堂守サイド)

時計は休み時間があと20分あると示している。私は教室に1人残っている梅小花くんを呼びに行く役を引き受けてしまった。こういう時になんとなく私が行くことになってしまうのだ。


しかも、梅小花くんは何を考えているかよくわからないし、いつでも本を読んでいる気がする。話したことがあるのは一回だけ、私の大好きな小説を梅小花くんが持っていたから。その会話も、ものの二言で終わってしまった。本当に梅小花くんはよくわからない。


そんなことを思い出しているうちに、教室に着いてしまった。前から三番目の席で、運動場側の窓際。読書にはもってこいの席だが、やはり梅小花くんは本を読んでいた。三月の太陽に晒されて、その周りだけ時間の流れが違うような、まったり感があった。


「梅小花くん」

梅小花くんは素早く、でもちょっとだけ、顔を上げた。

「校庭で写真撮ってるからさ、梅小花くんもおいでよ、じゃあね」

梅小花くんはかすかにうなずいたように見えたので、私はそそくさと教室を出た。


早く帰らないと、と思って、足は自然と急ぎ足になる。そして、二つ教室を通り過ぎて、階段にさしかかろうというその瞬間、視界がぐらりと歪んだ。バランスを崩した私の体は階段を勢いよく転がっていった。なにかぬらぬらした感触のものに包まれたところで、私は気を失った。

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