第5話 key & report

「ハカセ、こんにちは」


「おう、Sー2558……じゃなくてユキ、久しぶりだな」



 今日は待ちに待った面談の日。あれから僕は結局乗り越えられる方法を見つけることは出来なかった。



「ハカセ……」


「どうしたんだい?」


「非常に残念なのですが、僕にヒントをください」



 ミナトを笑わせられる方法を、彼を救える方法を、僕は自分の手で見つけ出したかった。でも今の未熟な僕には厳しかった。



「そうか……やはり難しかったか。理由は分かったのかい?」


「ええ、彼が弟のように可愛がっていた高橋 雪斗という人物の死が原因のようです」


「ああ、そうだろうね……。君はそれを知っても、彼を笑顔にしたいと願うか?」



 どういう意図の質問なのか、僕には判断しかねる。それでも答えは決まっていた。



「はい。僕は彼を救いたい」



 ハカセは我が子を愛でるような笑顔で頷く。



「よかろう。では君にこれをあげよう」



 ハカセは画面をタップして僕に何かを送りつけてきた。えっと……鍵と、本?



「これは君の欲しているものだと思うよ。その情報を得て君がどうやって彼を救うかは分からないけれども。それを考えるんだよ」


「ハイ、分かりました……ハカセ、ありがとうございます!」


「じゃあ頑張るんだよ。ユキ……湊斗君を頼んだ」



 僕はハカセとの面談を終えた後、さっき貰った重たそうな灰色の鍵と、濃紺の重厚そうな本に触れた。すると鍵と本は宙に舞い、青白く発光したかと思ったら――膨大な量の情報が僕の中に流れ込んできた。情報の羅列。ミナト、お兄ちゃん、僕……ああ、そういう事だったのか。



「謎は解けた。あとはどうやって彼を救い出すかだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る