第64話 お姉さん達は、やる気なし!? で精神力を消費する

「……うん。どうやら、勘違かんちがいしてたらしい」

『迷いの森とか呼ばれておるらしいが。ジャングルじゃな!』


 貴族の依頼内容。


 未開の森で、アロエらしき植物をゲットしよう! を遂行中すいこうちゅう


 森って言うからさ。くまさんが登場する森をイメージしてた。


密林みつりんじゃん!? 蒸し暑い!?」

「こんなの普通の森だよ? ソージ」

「ソー坊は、森は初めてかい?」


 いやいや!?


 俺の知ってる森は。マイナスイオン? で空気がんでいるから!?


「……立ちろうにも、雑草や木々で侵入をこばんでるよ?」


 だからこそ『未開の森』なのだろう。


 こんな場所、どうやって通行するんだ?


「あはっ! 久しぶりに運動し放題だぞ!」


 アイさんは嬉々ききとして準備体操をしているし。


 褐色かっしょくのセクシボデェーを視認するだけでも、役得ではあるが。


『相変わらずのボディーの発音じゃな! それから、お主? そこにおると死ぬぞ?』

「は? 死亡フラグなんて立ててねーよ?」


『ちょっと、田んぼの様子を……』『帰ったら、メイドさんとむぎゅーするんだ!』等々。口にしていないぞ?


「よーし! そんじゃ、やっちゃうぞ! あはっ! あははは!」


 だから、何でご機嫌なのか――ぬ? 大剣を両手で構えて? 


 ひいいい!? まさか!? 文字通り、道を切り開く為に!?


「ソー坊、せな!」

「ぐえっ!? グラマラスな肉体!?」


 半ば強引に姉御あねごが地面にエスコートしてくれた。


「せーのっ! だりゃああああ!」


 アイさんが周囲の雑草やら木々を標的に。大剣を振り下ろす。


 刹那せつな、もの凄い風圧と衝撃音がとどろく。


 おそおそる、這いつくばっている姿勢から周辺を確認する。


「……台風でも通過したのかな!? 環境破壊!?」


 うっそうとしげっていた雑草は跡形もない。巨木すらもなぎ倒されていた。


 大剣による斬撃と風属性も付加してんの!? 恐ろしいあはっ娘!?


「やっぱり、本気で剣を振り回せるのは最高だぞ! あははは!」

「殺す気か!? それにこの調子でやられたら、目的の植物も跡形あとかたも無いだろ!?」


 何の目的でこのジャングルに来たと思ってんの!?


 ポニーテールをかんでやろうか!


「あー。それ、あたし興味無いからさ。ソージに任せる!」

「ちょっと!? 丸投げ!? メジスト姉さんは!?」

「……ソー坊、むぎゅー」


 先程から、地面に押し倒されたまま。


 背中のメジスト姉さんが、離れようとしない。


「メジストさん!? むぎゅーで誤魔化ごまかされないぞ!?」


 えへへへ! メジスト姉さん、昼間からアプローチがしゅごいいい! 


『お主は、何と戦っておるんじゃ!……褐色娘達は、やる気ゼロらしいな。お疲れちゃんですわ!』


 そうだった。貴族の依頼に乗り気では無かった。


 しかも、この森には野生の勘? を取り戻す目的に彼女達は来たのだ。


「……そうだった。なまった体を鍛え直しに来たんですよね。どうぞ、お二人は存分に修行でもしてください」

「およよ? ソージ、むくれるなよ? お姉さん達を独り占めだぞ?」

「す、すまないねえ。その分、埋め合わせもするからさ」


 完全に、俺が悪者扱いされてる気がする。


 ま、まあ、俺は寛容かんようだからね。


『視線が盗撮犯じゃからな!? おなご達の魅惑のボデェーにご執心だろ!?』


 やれやれ。しょうがない。俺一人でアロエを探しますか。


 

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