第65話 メイドさんがお見通しで精神力を消費する

「どうしたんだい? これじゃ、カナに笑われるよ!」

「メジスト姉こそ、体形がもっちり娘に近づいてるぞ! あはっ!」


 お姉さん達は、互いに武器を振り回してチャンバラを始めた。


 案の定、縦横無尽じゅうおうむじんに戦闘しているので。


 周辺は、重機が作業した有様だ。


『環境破壊反対! 地域住民を結束させて、抗議活動じゃな!』

「探検しやすくて良いじゃん。二人とも生き生きしちゃって」


 この土地は、魔力量? が豊富ほうふらしい。


 その影響で、木々やら雑草もぐに再生してしまうとの事だ。


『で? お主は一人でアロエを探すのであろう?』

「まあね。お姉さん達が羽を伸ばしているのを邪魔したくないし」


 流石に、自分も戦闘訓練に参加する訳にも。


 適材適所ですな。


【スキル発動 マップ表示 現在地、モンスター、アイテム情報等を知る事が可能】


 えーっと、目的の植物が生息している場所は――


「……まじか。ここから、フルマラソンの距離だと!?」

『大体40kmじゃな。しかも、密林の中で。お疲れちゃん!』


 さて。どうしたものか? スキルを使って、瞬間移動するか?


『何を迷っておるんじゃ? さっさと能力を使えば、楽勝じゃろ?』

「それは、そうだけど。地道に冒険もしたいだろ?」


 あっさり、依頼をクリアしても達成感が無い。


 それなりの苦労があっての報酬だと思う。


『お主は妙な所で、クソ真面目じゃ。やれやれ』


 まあまあ。それに、しばらくはこの森に滞在しそうだな。


「まだまだ、これからだぞ! いつまで余裕が続くかな!」

「言うじゃないか! 準備運動は、お終いだねえ!」


 お姉さん達も、これからが本番らしいので。


 うん。自分も付き合わないと。仲間ですから。





「ぶーん、あだじだじは、ぼんぐはない」

「アイさん、食べるかしゃべるかどちらかにして下さい」


 小休止をかねての昼食。


 アイさんの体には所々ところどころ打撲痕だぼくこんが見受けられる。


 少しも痛そうにしない所が、たくましい。


 横目でチラチラ見ているのは、心配だからだよ!?


「アイの言う通り。この森に居続ける事には、文句は無いさ。でも、ソー坊が大変じゃないのかい?」

「ええ、まあ。でも、姉さん達と冒険したいんだもん!」


 いとしのメイドさん達が用意してくれた昼食。


 サンドイッチを食しながら。メジスト姉さんにむぎゅーをしちゃう。


「……ソージは食べながらむぎゅーしてるぞ」

うれしい事を言うじゃないか。ほら、むぎゅー。うふふふ」


 これが、本当の昼食だったのかな?


 ぐへへへ! ボリューム満点だよ!


「どんどん食べちゃうもん! うん? これは?」


 食欲もして、次のサンドイッチに手を伸ばすと。


 バスケットの底に手紙が。


「メイドさんからの手紙だ。どれどれ」

『ご主人さまへ。たまごサンドは、わたしが作りました。美味しいと思います。た、たぶんです。無事に帰って来てください。その後、わたしをでてね! カナより』


 帰りてぇー! 今すぐにでも! カナたん! 丸っこいメイドさん!


「ソージが居なくて、大丈夫なのか? 甘えん坊のカナ」

「カナは思っている以上に、辛抱強いよ。あたしはリナの方が心配さ」

「ふ、不安をあおらないで!? 僕のメイドさん達なら平気さ!?」


 ちょっと留守るすにするだけさ!?


 以前と変わらずに、接してくれるよ!?


『どうじゃろうな? 欲求不満で黒メイドが策略さくりゃくっているかも!』


 外出するたびに、そんな調子!? 


 お帰りなさい、旦那様でむかえてくれないの!?


「リナさんも多少は甘えん坊だよ。だからと言って、取り乱さないさ。さて、今度はリナさんの手紙を――」

『この手紙を読んでいると言う事は、昼食を食べつつメジスト様にむぎゅーをしていますね』


 ひえっ!? 予言書なの!? お見通しで怖いよお!?


『わたくし達の事は、心配なさらずに。これまでも、旦那様が不在の時はありましたし。ただ、旦那様が無茶な事ばかりしそうで』


 すいません。これから無茶な冒険をしそうであります。


『ともあれ、無事の帰宅を心待ちにしております。その後、ちょっとご褒美ほうびを要求しますからね。リナより』


「ふむふむ。たくましくなったメイドさん達だよ」


 どうやら、余計な心配だったらしい。


 むしろ、俺の方が不安の種だな。


「ソー坊? あの容器に入っているのは?」

「確か、プリンのきびん。青いゼリーかな?」


 お菓子大好き姉さんが指摘した。


 食後のデザートまで用意してくれたのか?


「何か見た事のある色合いろあいだな。……そうか。スライム君の色か」


 ついには、ゼリーを見るだけで。


 スライム君を思い出すとは。完全にホームシックです。


「カナのしもべのスライムじゃん!」

「へえ。プリンを盗み食いでもしたのかい!」

「ま、待って!? スライム君じゃない!?」

「ぷるぷる!?」


 きびんが振動する。

 

 えっ!? 


 中身は本当にスライム君なの!?


 


 


 



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