第55話 サーヤちゃんの嫉妬!? に精神力を消費する

「いたたまれず。あの場から退散しちゃったよおー。ご主人ざまどして、仲裁もできだいなんでえ!」

『ほら、あれじゃ!? 下手に仲裁すると、余計こじれちゃうから!? そ、そうじゃ、入浴してスッキリするのじゃ! ダンジョンで疲れたじゃろ!? わらわもお主とゆっくり湯につかかりたい気分じゃ!?』


 ふえーん、エトセトラ。


 うん。分かった。


 お風呂に入って。リフレッシュする。


「クリスティーナさん? 田舎いなか道を泣きながら歩いている、男の子が!?」

「……ええ。そんな感じをかもし出していますわ。め、めんどくさい人ですわね!?」

「うわああ! おさげメガネのおねえちゃんー! パンのおでえじゃあん!」




「カナとリナが、ケンカですの? しょうもない理由で、争ってるのではなくて? もっち、もっち」


 パンのお姉ちゃんが慰めるように。


 もっち、もっち、してくれました。


『だから、もっち、もっちってなんじゃ!? 説明希望!?』

「でも、めずらしいですよ? カナちゃんがリナさんと……クリスティーナさん、以前から気になっていたのですが。この状態のソージ君には、寛容かんようだね!?」

「……忘れていないでしょうね、サーヤ? ソージの力の根源は精神力。今日も、それなりに能力を使ったはずですわ。幼児退行も副作用みたいなものでしょう。この状態で、さらにストレスを与えてしまえば……最悪、人格崩壊する可能性も。で、ですので、今のうちに恩を売りつけちゃんですわー! おーほほほ! 金貨、ざっくざっくちゃーんす! あへえへへ! たまらねえですわ!」


 パン屋の売上金を勘定する時のお姉ちゃんの顔だ。


 初めてパンを作った時の。純粋な気持ちを思い出して! 


 こんなお姉ちゃん。見たくない!


「た、たしかに失念していたかな!? あれ!? まともなクリスティーナさん……ゲスティーナの間違いでしたね」






「貴方の面倒で、お疲れちゃんです!……金貨の寄付なら、いつでも受付ちゃんしてますわー!」

「少しは、師匠の気持ちを理解できたかね? 俺が金貨をもらいたいよ!? 無報酬でクリスティーナの相手をしてやるのは……もっちりに免じて我慢してやるか。やれやれ」

「あの!? 二人とも!? 自然すぎるの脱衣は、何で!? 恥じらいは!? ほ、本当は、仲が良すぎるのでは!?」


 どしたの? サーヤ? 


 なるほど、疲れがピークで混乱しているのか。そっとしておこう。


「おかしな事を言いますのね? むしろ、ソージとは敵対関係ですわ!……あら? ありがとちゃん! 忘れてしまいましたわね。今回も、お疲れちゃん背中流しを実演して差し上げますわー!」

「そうだぞ! クリスティーナとは相性最悪!……おーい、タオル忘れているよー?せっかちちゃんめ。あははは! あの、どっこいしょー背中流しを? 良いね!」

「せ、説得力が皆無だよ!? そもそも、そんな関係でしたら、一緒にお風呂に入らないでしょ!? いちゃついてるのかな!? この人達、絶対、仲いいでしょう!?」


 何を勘ぐっているのかな? サーヤちゃんは? 


 仲が悪いから。このように、あっさりしている関係なのだが?


「そんなことは、あり得ませんわ!」「そんなことは、あり得ないだろ!」

「あり得るからね!? 息ぴったりだよ!? 自覚して!?」





「ぐぬぬぬ。ダンジョンにて、謎の発火現象で髪の毛が……焦げ付き、ちりちゃんに!? ソージ、元通りにできます?」

「別にいいけど。綺麗な金髪だから、普段からお手入れは慎重に。ねじねじだけどな!」


【スキル発動 ヘアトリートメント 傷んだ髪の毛を元通り。さらに、美しく仕上がります】


「わたくしの髪が完全復活ちゃん! 感謝、感激、感動、そして、感電ですわー! ソージ!」

おおげさだな。感電!? なにそれ!? 僕、電撃攻撃されちゃうの!?」


 クリスティーナの謎の語録ごろく!? が出るくらいに、満足したようだ。


「はい、頭からお湯ですよ。お疲れ、ソージ君! そいやっ!」

「いやああ!? 目にお湯が入った!? サーヤ!? 手荒てあらい歓迎だよ!? 地方のお祭りが開催中なの!?」

『シャンプー初めての幼児かwwww。お祭り? 屋台のチョコバナナをセクシーに食べてやるぞ? リクエストか? こう、舌をじゃな、たくみに――』


 それどころじゃない!? 目がああ!? 不意打ち過ぎる!?


「さっぱりしましたか? サービスでもう一回です! それ!」

「いきなり、どうしたのよ!? ぶべええ!? 耳にも入った!?」

「おーほほほ! サーヤに配慮をすべきでしたわね。嫉妬しっとの炎まで習得されるなんて! 愉悦、愉悦、ご満悦!? ぎょええ!? お湯にシャンプーを混ぜてありますの!? 目があ!? ソージより酷い目にい!?」


 クリスティーナにも頭からお湯をぶっかけた!? しかも、シャンプーを付加させてるし!? 


 目に入ると、刺激がね。対処方法としては、素早く洗い流しましょう。


「じ、地味に悪質ですわ!? サーヤ!? ほんとに今日は、ぽんこつちゃんですわね!?……やられたら、ちゃんと、ちゃんちゃんやり返せ! が、家訓かくんですから! いきますわよ!」

「ぽ、ぽんこつ!? わ、私が!? し、失礼かな!? クリスティーナさんに言われるなんて!? きゃああ!? たたきつけるように、かけないでくださいよ!? 痛いじゃないですか!?」


 水圧重視攻撃か。プールの授業の自由時間で友人とバトルしてたな。……小学生か!?


「こらこら、水遊び場じゃないからね!? エキサイトしないでよ!?……でゅへへ! おさげちゃんに。僕の熱いの、ぶっかけちゃう! ぬおっと!? お湯をくみすぎて、ふらついちゃう!?」

意味深長いみしんちょうじゃな。……ひ弱か、お主は!?』


 この風呂桶ふろおけ、予想以上にお湯がくめるんだよ。バランスを――


「だりゃああ! あれ!? すべっちゃう!?」

「きゃっ!?」


 サーヤに向けて、盛大にお湯をぶっかけた。


 ついでに、床ドンしちゃったよ。


 だって、お風呂場、滑るんだもん。


「どうだ、サーヤ! 参ったか、イエーイ!」

「そ、それどころじゃないよ!? わ、わたし、男の子に、押し倒されてる!? は、半裸状態ですし!? わ、わたしの、タ、タオルが!?」

「あらまあ! 事後ちゃん確定ですわー! わたくしに構わず、愛を育んでくださいませー!」


 何を焦ってるの? サーヤはいつだって。


 タオルをばっちり装備をしてええ!? ずり落ちてるのお!?


「……み、み、見ましたよね。私の、む、胸とか」

「ぼ、僕、近視だから、見てないよ!? 小ぶりだけど、ちゃんと女の子している所なんて。し、知らないんだからね!?……す、すごく、健全的な美しさでね!? 邪念など一切感じなかったな!?」

『近視では、見えるではないか!? お巡りさん、こいつです! 差し入れには、美少女フィギュアを持って来いと。意味不明な事を言ってます!』


 そんな物を差し入れには、できねーよ!? 


 じ、事故だもん。故意じゃないもん!


「……ふ、不純なソージ君は、燃えてください!! ば、ばか!」

「そもそも、人類が服を着始めたのは、ごく最近だと言っても過言ではありません。祖先達は、常に裸であった訳ですから。それらを不純とひとくくりにしては!? いやああ !? ダンジョンの時よりも、火力が出てるよお!? 我は不死鳥フェニックス!?」

『復活できそうにないの。どちらかと言うと、焼き鳥じゃな。わらわ、タレ派。たまに、塩。炭火の香りが、食を進めてくれるのう。ちょっと、コンビニ行ってくる!』

「……熱烈な愛の炎に包まれてますわね。……おほほほ」

 

 

 


 

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