番外編 七夕ですか? 旦那様?(2019年7月7日 近況ノート掲載に加筆)

 七夕と言うのは、旦那様が住まわれていた地域の伝承らしいですわ。


 なんでも、お姫様と王子様が年一回会える日だとか。


 妹のカナは『えー! 好きな人と一日しか過ごせないの? ぷんぷん!』との事。

 

 確かに、旦那様と年一回しか、お世話できないとなると。


「リ、リナさん!? いきなりのむぎゅーは、た、たまんねえな!」

「あー! お姉さま、抜け駆けです! わたしも、むぎゅー!」


 あらあら? 身体が勝手に? 


 でも、何よりもこの時間が愛しいですわ。


 願わくば。いつまでも、旦那様のおそばに。


「そ、それから、七夕の日には願い事を紙に書いて吊るすけど!? 二人は、何を願うのかな!?」 


 旦那様が、むぎゅーをしながら。


 もじもじしていますね。


 忌み嫌われた存在である。ハーフエルフのわたくしに。


 旦那様は本当に種族を理由に差別をしないのですね。


 目線も右往左往で。わたくしを女性としても見てくださっている。


 ふふふふ。初心うぶな所も。おしたいいたしてますわ。


「わたくしは……これ以上願ってしまったら、贅沢ですから」


 幸せの時こそ注意せよとは。なかなか深い意味がある言葉ですわね。


 浮かれていると不幸が突然。


「そうなの? じゃあ、俺は、もっとリナさんに楽しい事や。嬉しい事がありますように。リナさんの分を願えばいいよね?」

「えっ? 旦那様が?」

「カナはご主人さまの分を願うもん。むむっ!? そうしたら、カナの願いは、かなわないですか? お菓子を毎日食べたいです! どうしたらいいですか?」


 毎日のようにお菓子を食べているでしょうに。


 それなのに、まだ願うのでしょうか?


「リナさんがカナさんの分を願えば解決だね。三人ともお互いの為に願うなんて、優しいね」


 いいえ。


 お優しいのは、旦那様です。


 やっぱり、わたくしの願いは叶っています。


 この瞬間も。


 わたくしは、貴方に出会えただけでも。

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