ダンジョンの報酬でひと悶着!?

第53話 僕のメイドさんが変態に!? で精神力を消費する

「納得してませんからね! みすみすリナ蜘蛛を逃がした事を! ふぬう!」


 ダンジョンからの帰り道。


 クリスティーナの小言を散々と言われた。


「いいかい? 僕達は運良く人間に生まれてきたのよ? それだけで十分過ぎる程、恩恵な訳。モンスターだって、好きでモンスターやってないの。確かに、生きるために人を襲うかもしれないよ? その時は、お互いの命をかけて戦ったりするさ。でもね、何事にも例外な事はあるの。……僕がリナ蜘蛛さんの立場だったら、ねじれてる奴を確実にやっちゃうね。問答無用に、電撃してくる奴とか! おーほほほ!」

「そろそろ屋敷に着きますよ? お互いの主張は、帰ってからにしてくださいよ? 疲労でイラつくのも分かりますけど」


 サーヤも完全にあきれ顔です。


 普段は仲裁役をしてくれるサーヤも。余裕がないのだろう。


「はーい。僕はサーヤの為に黙る」

「す、素直かな!? わ、私の為ですか!? あわわ!? さんきゅーです!?」

「わ、わたくしだって、サーヤを尊重しますわよ!? むぎゅーですわ!」

「相変わらずのもちもち加減ですね!? 気持ち良いかな!? わ、分かりましたから、もっちりーなさん!?」


 なあ!? 俺を差し置いて。


 サーヤとむぎゅーするんじゃねえ!


 でも、とうとい。


 これはこれで、良いものだ。キマシタワー!




「旦那様!? お帰りが遅くて心配していた所ですわ……らしプレイかと」


 屋敷のお庭で待ち構えていたのは。


 もちろん、リナさん。……ぬ!?


「旦那様? どうしたのでしょうか? わたくし、気に障る事でも? それとも、飽きてしまわれたのでしょうか? メイドをクビでしょうか? せめて、奴隷でも構いませんので、旦那様のお近くに!」


 リナさんの声は聞こえるけど。


 当の本人の姿が見当たらない。


 かくれんぼかな!?


「……手探りで。リナさんの柔らかい部分を確認しちゃうぞ! ぐへへへ!」

「本物のわたくしをしっかり確認してくださいませ。ふふふふ!」

「偽物のリナが存在するのですか!? 恒例こうれいの茶番には付き合いきれませんわ! サーヤ、ソージとリナは放置して屋敷にお帰りちゃんですわ!」

「ソージ君? 程々ほどほどにリナさんを構ってあげてくださいよ?……やりすぎには、厳重注意だよ!」


 ふははは! 邪魔者は、ゆっくり休んでいればいいさ! 


 サーヤちゃん!? なぜ、ジト目で警告するの!? 


 フェアプレーをしてますよ!? チャ、チャレンジシステム導入希望!?


『スポーツでも段々と普及しているようじゃな。しかし、チャレンジ要求の時間で試合の流れが一時中断するのが……減点じゃな!』


 そのために、チャレンジ回数も制限してあるだろ?


 ドヤ顔しないで。エトセトラ。


「ふべええ!? な、なんですの!? 何か硬い物にぶつかりましたわ!? 銅像でも建築したのですか!? リナ、メイドなら後片付けをちゃんとしなさいな!」

「おかしいですね? 特に何もありませんよ? クリスティーナさん?」


 サーヤも首をかしげている。リナさんが見当たらない事にも関係しているのか? 


 透明化の魔法か?


 でも、リナさん魔法使えないよな?


 【スキル発動 サーモグラフィ探知 熱を発生させてる生き物等を探知できる】


「おお、暗闇でも見える! でもこの形は!?」

「だ、旦那様の視線を感じますわ! ふふふふ。凝視ぎょうしされるのも。なかなか……ぺろり」


 暗闇なのに。旦那様の視線を探知できるの!?


 絶対、妖艶ようえんな表情してるでしょ!? 


 ぺろりんリナさんだもん!?


『……お主も、手に取るように黒メイドの表情を把握しておるぞ。流石、旦那様じゃな』

「があああ! わたくしはさっさと屋敷に入って! ごろちゃんしたいですのに! とりあえず、電撃をぶちかまして闇を照らしますわ! 一体、何が邪魔を!【電撃よ! 闇を照らせ! 雷光ですわー!】」


 ちょ!? 何でも電撃で解決しないで!? 


 リナさんに被害が出たらどうするのよ!?


「あらあら? まぶしいですわ。……余計な真似をクリスティーナ。貴女は、もっちりしていれば良いのです! 旦那様とのたわむれを邪魔するとは。ぶち殺しますよ!」


 周囲の闇が照らされて。リナさんのお姿が。はっきりと。


「ソ、ソージ君!? 私、疲れすぎなのかな!? 今でも、リナさんが。リナ蜘蛛さんに見えますけど!?」

「つ、ついにリナが変態に!? けけけけ! 駆除対象ですわー!」

「僕のメイドさんが変態に!? し、失礼だな!? リナさんは凛としてます!?」

『いや、変態の意味合い違いじゃ。詳しくは、辞書を引くのじゃ!』


 目前には、リナ蜘蛛さんが現れた!


 背中には、リナさんを乗せてるよ!


「……旦那様がお望みならば、変態にでもなりますわ。ご命令ですか? ふふふふ!」

「……変な態度をしないでください。普通で結構です!」






「よーしよし。リナ蜘蛛さんを撫でちゃうぞ!」

「だ、旦那様。わたくしは、こちらですのに。次は、わたくしにも!」

「一体全体、ど! う! い! う! こ! と! ですの! 屋敷にリナ蜘蛛を転送するなんて! わたくしをたばかりちゃんですの!」


 おかしいな? ちゃんと条件を指定したのに。


 よもや、自分の拠点にいるとは。


「リナ蜘蛛さんに住みやすい所であること。同じような仲間が存在して、それなりに安全も確保されている場所だったかな? とにかく、リナ蜘蛛さんの意向を全面的に取り入れたつもりでしたけど」

「リナ蜘蛛さんも特異なモンスターだからでしょうか? 屋敷には、あのスライムさんが既に入居してますし。もしくは、潜在的にソージ君が招いた可能性もありますね」


 スライム君も。かなり特異なモンスターだからな。


 類は友を呼ぶみたいな感じか。


「それにしても、リナさんは驚いたりしなかったの? 蜘蛛のモンスターが急に出現してさ」

「……旦那様のお帰りをお待ちしていました時に、ふと気づくと。……この子の背中に乗っていた時には、ちょっと……驚きましたけど。不思議と敵意を感じませんでしたので」

「主人が主人ならば、メイドもメイドですわね! ソージと同じような事を言ってますわ!」


 糾弾きゅうだんしないでよ。


 リナさんと以心伝心いしんでんしんでござる!


 今度は、リナさんを撫でまわしちゃうもん!


「流石、おいらのメイドさん。リクエストにこたえちゃうぞ!」

「はい、旦那様のメイドですわ! 感無量です! えへへへ!」


 頭から、顔、耳。いたるところを撫でちゃう! 


 おっと、カナさんみたいな笑い方は。貴重だ。 


 ご満足、何よりですわ!


「ま、また、わたくし、カナみたいな笑い方を!? だ、旦那様に、幼くみられるのは、いけませんからね!? しっかりしないと!」


 きりっと、態度を改めるリナさん。僕は、別に気にしないけどなあ。


「旦那様? ちょっと……気になる事があります」

「うん? 何だい? リナさん?」


 思わず幼い姿をみられて。気がかりなのかな?


 はははは。そんな所が、可愛い――


「皆さん、この子の事を『リナ蜘蛛』と呼んでいますけど……なぜでしょうか? なぜでしょうか。なぜでしょうか! 旦那様? 旦那様? なぜ目をそらすのでしょうか? ふふふふ!」

「ひえええ!? 気にならないで!? お仕置きされちゃうの!? ちょ!? サーヤ!? クリスティーナ!? 僕を一人にしないで!?」

 

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