第21話 メイドさん達とお風呂の準備で精神力を消費する

「アレクシスさんの浴場よりは小規模だけど。湯舟の広さは10人ぐらいは入れるスペースがあるな」


 屋敷の浴場は、視察してなかったな。


 健康ランドを彷彿とさせるシンプルなデザイン。


「旦那様、魔石を設置してきましたわ。温度は自動的に適温になる設計になっておりますね」

「わくわく! もうしばらくで、お風呂が沸くの? えへへへ!」


 ダジャレを意識した訳ではないだろうけど。


 心のポエムが伝わりますね、カナさん。


「スライム君、用事ばかり押しつけちゃってごめんね。疲労が蓄積ちくせきしてないかい? つらかったら相談しておくれよ?」


 お土産にくれた、魔石で回復できました? 


 役に立てて、なおかつ、喜ばれて、うれしいです?


 周囲の女性たちも優しく接してくれます。感謝の言葉もありません?


 ……君の成分を、クリスティーナに飲ませてあげたい!


「では、入浴の支度したくをいたしましょうか。タオルと、体を洗う液体香料を……ありました。屋敷は以前からもぬけのからでしたが。しっかり保守管理が行き届いてますね」


 ホテルに例えるならば。


 アメニティーグッズと言われる物が常備じょうびされていたのか。


 リナさんが着々と入浴の支度したくを整える。


「あ、ちょっと待ってください。そろそろかな?」

「あ、お湯がくのが?」

「ご、ごめんね、カナちゃん!? 読書してたら、遅くなっちゃった!?」


 修学旅行中だったかな!?


 女子の浴場は、あっちだよ? 


 メガネのおさげ委員長が見回りに来たああ!?





「ソ、ソージ君!? ま、間違えました!? 隣に浴場が他にもありましたっけ!?」


 慌てて確認に戻ったり。


 右往左往している。


「サーヤちゃん? こっちだよ?」

「え!? 場所は、合ってる!? 中で男女が分けられてるの?」

「……サーヤ、あきらめも肝心かんじんだ。一度あることは、二度ある。さとってってください」


 俺だって言い分は、ありますよ。


 ……サーヤも一緒なんて知らなかったし。


「……ソージ君、お年頃の男性であることを考慮してもですね。せ、節度も、大切だと思います!」


 ジト目でサーヤが演説を始める。


 ……はい。重々承知じゅうじゅうしょうちしております。


「サーヤ様。わたくしたちメイドが進言したまでの事ですので。旦那様を叱らないでくださいませ」

「わ、わたしが、わがままな主張しちゃったの。だから、ご主人さまをいじめないでよ、サーヤちゃん?」


 メイドさん達の必死の説得。


 サーヤは、その様子を。


 じっくりと腕組みながら観察している。


 警察官の事情聴取かな? 誤認逮捕しないでよ!?


「……はあ。カナちゃんが嘘をつくなんて思っていませんよ? リナさんは……ソージ君の事になると冷静さが失われる行動してますけど。しぶしぶ、了解します」


 サーヤもメイドさん達を論破ろんぱできない模様だ。


 がっくりと、うなだれてしまう。


「旦那様、入浴の頃合ころあいですかね? ちょっと、お湯の温度を確認してきます!」

「サーヤちゃんとも一緒だね! 友達と入れるなんて、嬉しすぎるよ!」

「……カナちゃん、入浴前から体温が上がっちゃいますよ? そ、そんなに、仲良くされるとは、き、気恥ずかしい」


 満面の笑みをいただきました! 


 カナたん! これぞ、純真無垢じゅんしんむく! 






「無事にお風呂が出来上がりました、旦那様」

「確認作業、ありがとう。リナさん。では、女性陣の方々は、着替えてください。……自分は、席を外しておりますので」


 このまま雲隠れしたい。


 不可能だけど。


 女性の脱ぐ姿を目撃なんてしたら、のぼせちゃうよ! 


 鼻血が出そうになるから!


『グラビア写真集! よつんばい! からの欲望をかきたてるポーズ💓 女豹めひょうじゃ!』


 いきなり、バーチャルエトセが下着姿でぇー!? 


 水着じゃないの!? ガーターベルトの下着!? 


 むらむら、村社会!?


『ほほう、精神力が微量に増加しておるな。浴場で欲情とは。わらわもやりがいを感じるぞ!』

「……リナさん?……あの、通れない。僕が、右から通りますので」

「ふふふふ。旦那様!……どちらへ?」


 リナさんが退路をふさぐように。


 ディフェンス守備をする。


 バスケット!? 得意では無いスポーツなの! 


 ぬ、抜けない! フェイントしても!?


「お洋服、脱ぐ手伝いします! しっかり、ご奉仕したいです!」


 うるんだ瞳で、僕を見ないで! 


 あ、あらがえなくなっちゃう!


「サーヤああ!? 交渉してよ、ねえ!? 俺は、指示なんてしてないよねえ!? アリバイ確認できただろ!?」


 サーヤだって。


 着替えをのぞかれるのは、嫌に決まってるさ! 


 女子更衣室に男がいたら通報だよ!


 警察呼ぶ事案で、全国ニュースで報道されちゃうの!


「……私が誤解していたようですね。全面的に悪いです。すいませんでした、ソージ君……罰として受け入れます」


 罰ゲーム扱い!? 


 眼に力が失われている。頼みの綱が。


「旦那様がお脱ぎになられてから、わたくし達メイドが続くのが礼儀ですもの」

「……そうですか」


 もう、なんも反論できない。


 身を任せるしかなない。


 覚悟を決めなければ。


「カナさん……お願いします。服を脱がせてくれますか?」

「ご命令、うけたまわりました! 丁重ていちょうに、扱わせてもらいます、ご主人さま!」


 上半身の服を、カナさんが手にかける。


 ゆっくり、着実に脱がしてくれた。


「はい! ご主人さま! お洋服、たたみました! 次は下の――」

「わたくしがやりますわ! 非常にデリケートですから。ふふふふ!……ぺろり」

「リナさん、舌をなめないでよお!? 女性の顔しないでください!?」


 完全に捕食者だよ!?


 み、見られたくないです! させません!


「あん!? 旦那様、わたくしに仕事を与えて下さらないのですか? お嫌いですか? 不要ですか? 邪魔者ですか?」

「は、恥ずかしいの! 旦那様の心中も察して下さい!」


 男性の恥部を。


 リナさんに目撃されるのは、耐えられません! 


 自分で脱ぎます!


「……そうですか。またの機会にでも。……やすやすとはさせない旦那様も……ちょっと」


 ちょっと!? 


 だから、意味ありげに言葉を止めないでくれる!? 


 うっとりした顔も、よしてくれぇー!?


「サーヤちゃんも脱いで、準備しよ?」

「あつ、はい。……ソージ君、言わずもがなですから。よろしくちゃんです!」


 気まずいから、ジロジロ見るんじゃねえよ! 


 ファイヤーボールで燃やすぞ、コラ! 


 みたいな感じですね。善処いたします。


「ふう。タオルで下を隠しつつ……パージ完了! 出撃できるぞ!」


 ……ロボットアニメではないのだけど。小学生か!


「先にお風呂行っちゃダメ?」


 この場所にとどまるのは、愚行。


 一足先に入浴、そして脱出。


 作戦プラン決定ですわー!


 ……脳内クリスティーナよ、力を貸してくれ!


「ご主人さま、置いていかないで?」

「ふふふふ。先走りはいけませんわよ、旦那様」


 あっけなく、失敗。


 ……目を閉じて、大人しく、煩悩を振り払ってようかな?


 瞑想めいそうして、集中力でも高めておくか。


「旦那様?」

「うん? 速いね、もう脱いだのお!?」


 メイドさんのスカートが地面に落ちた瞬間!? 


 リ、リナさんの、パ、パンツがあ!?


「不用意に呼びかけないでよ! 見ちゃったじゃん! 純白!」

「あらあら? お疲れで、お眠りになられたかと。ふふふふ……そのままご覧になっても良いのですのに……わたくしでよければ」


 南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。


 しゅ、修行が、た、足りないよおー! 


 108回、鐘を突きに行きたい!


「ご主人さま、脱ぎ終わりました。なでなでしてください!」

「カナさん、そう。えろいい!? ま、前を隠して、すっぽんぽん!」


 カナさん肢体があらわに。


 不純な俺は、消滅しろおお!


「なでなで……なしですか? わたしの体、変ですか?……き、汚い存在でふか?」

「な、なみだぐまないで。お、大人の女性はね、みだりに、裸をさらさないんだよ!?……カナさんの体に問題ないから!」


 カナさんを悲しませるなんて。


 本末転倒じゃないか。


 あんなに楽しみにしていたのに。


「証拠をみせてやる。カナさん、むぎゅーするよ! なでなでも追加してやる!」

「……はい、ご主人さま!」


 裸同士で、抱き合う。カナさんの体温が伝わる。


 ……胸の柔らかさは、感じないようにしよう!


 家族! カナさんは家族!


「えへへへ、ご主人さま、熱いよお。……はやとちりして、ごめんなさい」

「旦那様、旦那様!」

「今度こそ、脱ぎ終わりましたあ!?」


 一糸まとわぬ姿!? 


 み、見せつけないで!? 故意なの!?


「わたくしの体にも異常があるか、旦那様、視認してくださいませ!」

「必要ないぐらいのプロポーションですけどおー!? タオルでまとってねー!?」


 直視できるはずないだろ! 


 性的すぎるよおお! はあはあ!


「せ、せめて、カナと同じ扱いを! 抱いてくださいませ、旦那様!」

「ぐぐぐぐう!? リナさん!? もう、抱きつかれてましゅうう!?」


 リナさんの素っ裸がああ!?


 おっぱいも、むぎゅー状態だよおお!


「リナさん、節操がありませんよー! ソージ君が入浴できなくなるので。離れて下さい!」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 


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